5.ネタバレ タイムトラベル映画は数々あれど、本作ほど頭を使う作品は滅多に無いと思います。難解過ぎるのはエンターテイメントとしてどうかという気はしますが、本作の場合は許せます。理解するためのポイントは丁寧に(フェアに)説明していますし、それでいて観客を惑わす仕掛けも抜かりない。質の高いサスペンスの趣です。とにかく2回は観ないと始まらない。自分は全容を把握していませんが、もう一度観たいと思わせる魅力のある作品でした。(以下ネタバレを含みます。現時点での考えをまとめます。) 2人が創り出した箱は何でしょう。タイムマシン?いや「人生やり直し機」と言った方が的を射ている。セーブポイントまで戻って、人生をやり直す。株の値動きを見てきたから大金が手に入るという寸法です。夢のような話。でも都合の良い事ばかりじゃありません。箱に入る度、肉体は深刻なダメージを負います。1分が22時間に相当するなら、6時間なら約1年。寿命を削って時間を買っているようなもの。体がオカシクなって当然。字が満足に書けないのは純粋に加齢のため。ダブル(分身)の問題もある。同次元を共有している新しい自分と古い自分。“今の人生は上書きされるための人生か?”その疑念を抱いた瞬間から、遣り切れなくなる。人生の価値が失われる。エイブに至ってはリセットするために分身を手にかけます。もう何が何だか分からない。“幸せになるため”のやり直しで、今まで積重ねてきた全てを失ってしまう2人。残ったのはボロボロの体と日陰の生き方。悲しすぎます。でも時間の重みを、不可逆だからこそ価値のある時の流れを、心底思い知りました。余談)実は本作鑑賞後は、人生をリセットできる感覚がなかなか取れず困りました。大雑把に生活してしまうような。やり直せると思うと生き方が雑になる。イヤイヤほんとに怖い映画です。 【目隠シスト】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-03-25 18:47:15) (良:3票) |
4.シンプルでコンパクト、それでいて繰り返しの鑑賞に耐える面白さ。監督は数学畑の人らしいが、この映画はそれ自体が一つの数式のようだ。秀逸な公式のような鋭いひらめきと、無駄のない機能美がある。
冒頭の数分で『π(パイ)』という映画を思い出して嫌な予感がしたのだが、杞憂だった。明らかに低予算ではあるけれども、一切の贅肉を削ぐスタイルを取ることで巧みに弱点を補っている。それに一定の美意識に沿って作られているのも確かで、作品を包み込む雰囲気も悪くない。個人的には美しいと感じる下りすらあった。また短い尺の中にも人生の苦味が込められ、単なる味気ないパズルには終わっていない。良質の作品だ。
しかし無駄がない分、観客への親切心もない(!)ので、間口が狭い作品であるのも確かだろう。ミステリ、SFなどのジャンルが好きな方であればおすすめできるけれども、万人受けする類の映画では決してない。観終えたあとにああでもないこうでもないと考えるのが好きな人であれば、きっと楽しめるんじゃないだろうか。 【no one】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-05-07 11:20:43) (良:1票) |
3.「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の陰に隠れているのが「タイム・アフター・タイム 」なら、「マルホランド・ドライブ」の陰に隠れているのがこれってことにならないかな? 【8823】さん [DVD(字幕)] 4点(2008-10-18 02:11:37) (良:1票) |
2.すげえ。 『バタフライ・エフェクト』は、どこが伏線なのかわかりやすいように最初から案内図があるという親切設計テーマパークだったが、『プライマー』は予想しなかった場所に仕掛けや落とし穴がありまくりの忍者屋敷。しかも、当然気づいておくべき些細な仕掛けで、主人公たちがガンジガラメになっているのがわかって来るあたりで観客の推理力が徹底的に試される。覚悟して臨むべし。 個人的にはさりげない科学ネタ満載(しかもかな~りハード。時間の進行方向に正逆の区別がないファインマン時空ベースで、量子電磁力学なアイデアっす)の前半が10点満点なんだが、余詰めのない名作詰め将棋のような後半の展開も評価できる。「時間旅行SFの主人公は一人のみ」という法則を破った人物設定が、大いなる複線となって後半、作品全体を飲み込んでしまうのに目を見張るばかりだった。 …どーでもいいけど、ぽこたさんと意見が合う作品が多いなあ…ダブル?
●ややバレ追記:…と書いてから半週間。あれこれ考えてるんだけど一部気になるところが…この世界で言う「ダブル」って、コペンハーゲン解釈ってる? もしかしてタイムスリップするたびに人間増えてる? いかん、買ってきてもう一度観ないとダメだぁ…。
●2回目追記:借り直してしまったっす。初回鑑賞では一見ファインマン時空の中で起こっている事件のように思えたが、過去の自分と未来の自分がパラドックスで「分断」していた。この時点までは時空を超えてもひとつの存在だった主人公達はプライマーで増幅されるがごとくに増え、経路積分が不可能になる。エイブが「ファインマン・ダイアグラムで説明できない」と言った時、オイラは「なぜ?」と聞くべきだっただろう…。 【エスねこ】さん [DVD(吹替)] 9点(2006-07-17 01:44:35) (良:1票) |
1.面白い!タイムマシンもので意外と無視されがちな、タイムトラベルに伴うパラドックスについて、真正面から描こうとしているところに好感が持てます。ドキュメントであるかのごとく編集されている映像、無名の役者ばかりのキャスティング、理屈と理論を並べ立てた台詞回し。地味ではあるものの、観れば観るほどに惹き込まれる出来栄えです。ただ、冒頭の数分を見て興味が持てない人、退屈してしまった人には、最後まで観るのは苦痛かもしれません。でもね、面白いのは後半なんですよ。興味を持った方は、是非是非最後まで観てくださいね。何回か見直したくなりますよ。 【タコ太(ぺいぺい)】さん [DVD(字幕)] 8点(2006-04-17 01:30:59) (良:1票) |