17.花が咲いてたら「花が咲いてる」と言い、蛙が鳴けば「蛙が鳴いてる」と言う。暑いからと襖を開けた途端に、セミを鳴かせてみたり。壇れいが口づけするにも理由が要りやがる。しまいには盲目になった木村拓哉の目の前の庭で光るホタルに対し、壇れいに「ホタルはまだ出てない」と言わせてしまう。あるいは、市井の人々を描くという事を、慎ましさであったりささやかな生活へと安易に変換させる態度。それらが、何の視点も持たない画面が、まるで巨匠・山田洋次の得意技であるかのごとく、歯切れの悪いカット割りで次々と展開される。仮にそれらに目をつぶったとしても木村拓哉のクローズアップで行われる心理描写のウザさは如何ともしがたく、月9か何かで「ちょ、待てよ!」と言ってるキムタクの方がまだテレビだけに安心して見ることができる。時代劇映画が、山田洋次という別に一流でも何でもない監督によって、こういう形でずるずると延命させられているのを目の当たりにするのは何とも耐え難い。 【Qfwfq】さん [映画館(邦画)] 3点(2007-01-07 02:37:43) (良:3票) |
16.《ネタバレ》 姉妹作とも言うべき「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」については、何年も前に観賞済み。 何となく観そびれていた本作にも、ようやく手を出してみたのですが、上記二作と変わらず楽しむ事が出来ましたね。
とにもかくにも主演に「現代のアイドル俳優」というイメージが強過ぎる為、最初の内は「武士という割には軽過ぎる」という違和感もあったのですが、それが中盤以降の悲劇的な展開との落差を生む事に繋がっており、結果的には良かったと思います。 妻の加世、中間の徳平に軽口を叩く姿も、ちょっぴり嫌味なのに愛嬌がある辺りなんかは、正に木村拓哉という存在だからこそ、という感じ。
また、真っ当な殺陣の魅力に関しては一作目の「たそがれ清兵衛」で存分に描いている為、二作目と三作目においては「隠し剣」「盲目の武士の戦い」という変化球で攻めた辺りも正解だったのではないでしょうか。 歴代の中でも、間違いなく本作が一番不利な状況下での戦いであった為、前二作と同じ流れで最後は主人公が勝つだろうと安心しつつも「本当に勝てるの?」という緊張感を、適度に抱く事が出来たと思います。 あえて言うなら「決闘の場所の下調べくらいはしておくべきじゃないか」とも思えましたが、それをやるのは卑怯という価値観なのかなと、何とか納得出来る範疇でした。
それよりも個人的に残念であったのは、タイトルにもなっている「武士の一分」の使い方について。 復讐の動機は、妻が辱められた事にあると言い出せず「武士の一分としか申し上げられません」と絞り出すような声で訴える場面は凄く良かったと思うのですが、その後も「武士の一分」という言葉を繰り返し用いるものだから、ちょっと重みが薄れたように感じられてしまったのですよね。 全ては「あの御仁にも、武士の一分というものはあったのか」という台詞に繋げる為だったのかも知れませんが、それならせめて使用は二回までに留めて欲しかったなぁ、と。
脇役に関しては魅力的な顔触れが揃っており、本人に悪気は無くとも傍迷惑な叔母さんは妙に憎めなかったし、意外な名君であった殿様の存在感も良かったですね。 特に後者に関しては、主人公の失明後も「大儀」と一声掛けるだけであり、所詮は家臣の事など軽く考えている天上人なのだと示す場面があっただけに、その後に真相が明かされる場面には、完全に参ってしまいました。 家老の結論を覆し、藩主自ら主人公を庇ってみせたのだと判明する、あそこの件が、この映画のクライマックスだったのではないでしょうか。
結局、決闘については周りに知られぬまま、主人公の仇討ちが咎められる事も無く、離縁した妻とも再び結ばれるハッピーエンドを迎えた本作。 ですが、あの殿様であれば、たとえ事情を知ったとしても、きっと公明正大な処置を下されたのではないかな、と思えました。 【ゆき】さん [DVD(邦画)] 6点(2016-11-17 12:10:58) (良:2票) |
15.山田洋次監督の藤沢周平三部作完結篇。主演がキムタクということでかなり心配だった本作だが、いつもはテレビドラマやバラエティー番組などでかっこつけた印象のあるキムタクが全く違った一面を見せていて、アイドルではなくちゃんとした一俳優として素晴らしい演技をしているのが新鮮に思える。山田監督もこれまでの二本で相当こなれたようでキムタクに媚びることなく自分の作風を前面に押し出して夫婦愛を描いた傑作に仕上げているのはさすがと思う。キムタク以外の出演者で良かったのはなんといっても妻役の檀れい。初めて見る女優だったのだが、この3本の中のヒロイン役女優ではいちばん良かったと思う。キムタクの相手役女優といえば山口智子や常盤貴子、松たか子など既にテレビでお馴染みの人気女優がやることが多い中で、映画初出演の元宝塚女優というテレビではあまり知られてない女優を起用したのは正解だろう。笹野高史も大きな役はおそらく見たのは初めてと思うが、味のある抑えた演技でとても良かった。3本とも同じ点になったが、個人的には世間的評価の高い「たそがれ清兵衛」より「隠し剣 鬼の爪」や本作のほうが山田監督らしくて好きだな。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 8点(2007-10-11 07:01:48) (良:2票) |
14.《ネタバレ》 いろいろと細かな不満はあるんですけど、なにが一番気に入らないかって、敵役の島田藤弥のキャラクター設定が、私が時代劇のヒーローとして愛してやまない柳生十兵衛のその祖父、石舟斎を祖とする「柳生新陰流」の「免許皆伝」ってとこなんですよね。これって原作がどういう設定なのかはちょっと解らないんですけど(近々読もうとは思ってるのですが・・・)、はっきり言って「新陰流」とは、失明した人の奥さんを騙して手篭めにしてしまうような、鬼畜にも劣る人間に皆伝されるほど生半可な流派じゃないのでは??って思うんですよね(あくまでイメージ的な物ではありますが、そのイメージが時代劇には重要なんじゃないかと・・・)。それにあんな非道なことをする人間が、たった一人で決闘の場に挑んでみたり(自分だったら金に物言わせて、浪人雇って斬らせる)、あるいは屋根の上から奇襲するような姑息な手段を使ってみたり(仮にも免許皆伝なんですよね??)、かと思えば腕を切られたぐらいであっさりと切腹してみたりと(そもそも潔く切腹するようなキャラとしてなんか描かれていないだろ)、なんだか人物像がメチャクチャなんですよね。そう考えると、これってただ単にキャラクターに「箔」を付けるためだけに「新陰流」の名を安易に用いたのでは??なんて邪推してしまって、時代劇ファンとしてはいささか憤りを感じてしまいます(そもそも坂東三津五郎さんにこの役を演じさせたのも、キャスティングの失敗だったんじゃないかと・・・)。いずれにせよ「たそがれ清兵衛」で時代劇に目覚め、その後何十本もの時代劇をむさぼるように観まくった自分にとっては、山田監督の藤沢周平三部作のラストを飾る作品としては、いささか残念な出来だったように思います。 ※追記:原作を読みましたが、やはり新陰流の表記は無いようです。例え主人公が盲目の剣士であったとしても、製作側の人間にまで盲目にはなって欲しくない物です。 【ぶらき】さん [映画館(邦画)] 5点(2007-01-04 00:39:34) (良:2票) |
13.ゴローちゃんが自身のランキング(月イチゴロー)でこの映画を1位にしてベタボメしていたので観てみた。 彼が過去「日本沈没(2006)」を1位にしてベタボメしていた事に気付くべきだった。 前半の切腹シーンが個人的にショック&トラウマすぎて、後の展開はぜんぜん頭に入ってこなかった… 【えむぁっ。】さん [映画館(邦画)] 6点(2006-12-30 00:56:41) (笑:2票) |
12.《ネタバレ》 キムタクが演じる侍は、やっぱり馴染めない。徳平へ軽口を叩くシーンなんかはバラエティーのコントとダブって見えました。悪役に歌舞伎役者を配役するのも自分としてはう~ん…って感じ。顔やしゃべりがスマートすぎるんです。どうみても医者の玄斎先生が悪人に見えました。山田洋次監督の時代劇の特徴といえば殺陣シーンですが、ここには期待通りの迫力があって、楽しめました。 【黒めがね】さん [映画館(邦画)] 7点(2006-12-26 20:32:13) (良:1票)(笑:1票) |
11.脇役にしっかり守られていましたでがんす。30石でお家を継いでいがねばな。。。 【HRM36】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2013-02-04 10:12:40) (良:1票) |
10.人物描写も美術関係も撮り方も、ガラスかプラスチックのように安っぽい。すべてにおいて、ひたすら無難に無難にと作ってしまったら、このようになります。 【Olias】さん [CS・衛星(邦画)] 3点(2012-12-28 02:12:32) (良:1票) |
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9.山田監督の作品を初めて観た。いったいこの映画が描きたかったものは何なのだろう。私には監督のコマーシャリズムに迎合する姿勢しか伝わってこなかった。主役のアイドルには意味無く大仰な演技をさせてヒロイックに撮っておきながら、下男を(重要な狂言廻しであるにもかかわらず)魅力的に撮る気がぜんぜん無いことが全てを物語っているのでは。一度も推敲しなかったのではと思える脚本(例:罵倒には「糞○○」ばかり3度繰り返される)も気に入らない。大好きな作曲家である冨田勲氏の衰えを感じたのも寂しかった。 【皮マン】さん [DVD(邦画)] 1点(2010-10-11 19:07:20) (良:1票) |
8.《ネタバレ》 「一分」とは何かを考えさせられました。意地? 見栄? 道徳? そんなものがないまぜになって都合よく使える言葉って気もするが、日本人には通じる観念なんだろう。キムタクの武士役ってどーなの、と思いながら観始めましたがすぐ慣れました。というか、頑張ってたと思います。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2008-09-18 17:27:01) (良:1票) |
7.《ネタバレ》 個人的に危惧していた木村拓哉の演技は悪くなかった。殺陣もいい。壇れいの清楚な雰囲気も素晴らしい。総じて悪い部分は見当たりません。結末もハッピーエンドだし良かった良かった。ただ、前2作に比べると圧倒的に厚みが足りない気がする。それは心情が1色で表現されているから。例えば木村。根底にあるのは妻、坂東、そして己に対する憤り。渦巻く感情のせめぎあい、葛藤が感じられません。壇れいにしても、感じられるのは後悔の念ばかり。その結果、本作の見所は木村と坂東の果し合いに絞られています。むしろ決闘に行くまでの心情の描写がメインであった、前2作との大きな違いです。木村は最初から死を覚悟している。いや正確には、視力を失った時点で“武士として”既に死んでいる。一分は、彼に残された矜持。勝ち負け(生死)はもはや関係ない。立ち会うこと自体に意味がある。当時の倫理観をもってすれば、それは当然のことでしょう。彼の選択がオカシイとは思いません。ただし、山田監督が描いてきた時代劇は、そういうものではなかったはず。主人公に義務付けられていたのは、生きること。生きなくてはならないから、切ない。そこに観客は自身を重ねて、共感してきたのだと思います。本作にある共感は、いわば可哀想レベル。そこから更に踏み込んだ部分に価値がある。作品の出来は標準以上だとは思いますが、自分にはキレイすぎました。 【目隠シスト】さん [DVD(邦画)] 6点(2007-07-14 18:13:27) (良:1票) |
6.《ネタバレ》 例えばこのシーンは土砂降りの雨が降っている、このシーンは強い風が吹いている、このシーンは落ち葉、このシーンは突風、という風に、そのシーンそのシーンで周りの環境を使ってうまく表現してるのがいいですよね。それに、まったく無駄に動く事無く、常にシンプルなカメラの動き、構図がとても清々しくていいですね。もう迷いはないんだぞ、みたいな貫禄があります。個人的には山田洋次時代劇3部作の中では、この作品が一番よかったです。新之丞に割と共感出来たのと、キムタクの芝居も決して悪くなかったことと。 【あろえりーな】さん [DVD(邦画)] 7点(2007-07-02 00:24:27) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 新陰流免許皆伝の島田のおっさん、弱いわ&盲目の剣士相手に姑息な手段使うわで冷める。これはやりすぎでねぇか山田監督。 【はりねずみ】さん [映画館(邦画)] 4点(2007-03-22 11:49:13) (良:1票) |
4.「隠し剣鬼の爪」は「たそがれ清兵衛」の二番煎じでしかなかったので、キムタクを迎え、これまでと多少路線を変えた本作こそが真価を問う作品になると思いますが、今回は山田洋次の目指してる(らしい)「リアリティ」を感じられない仕上がりになってます。美術や下級武士の生活・所作等はこれまでの水準にありますが、キムタクは三村新之丞ではなく完全にキムタクのまま。そして、盲目の剣士が果し合いに臨むという設定以上にリアルさを感じられないのが、脚本から「めくら」という言葉がスッポリと抜け落ちている点。これは「リアリズム」よりも「地上波放送」を優先した為に他ならない。山田監督レベルの「巨匠」でも、こんな大人の事情に抗えない邦画界が情けない。やはり「たそがれ~」は奇跡的な作品でした、5点献上。 【sayzin】さん [映画館(邦画)] 5点(2007-01-04 00:05:15) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 ハッピーエンドも悪くないが、人生のわびしさやはかなさを リアルに描写するためには、加世が無事もとの鞘に収まるというラストでは生ぬるい。 “加世に戻って来てもらおうと探したが、既に死んでいた。”→“新之丞は愕然とし 自分が加世にした仕打ちへの後悔と罪悪感にさいなまれながら生きていく”→エンド。 というぐらい絶望と哀しみを描かないと、単なる娯楽作品になってしまう。 【しまうまん】さん [映画館(字幕)] 7点(2006-12-24 02:55:35) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 原作は短編も短編なので映画化に当って相当変更されていると予想していたが、割りと忠実にシンプルに仕上げている。鑑賞前は現代風の代表のような木村拓哉さんに時代劇なんて似合うはずがないと危惧していたがハウルに続いて健闘を見せている。そして作品そのものがキムタクナイズされている。重苦しくなってしまうところも時に喜劇調を織り交ぜ彼の特性を生かしながらも作風を損なわず融合させたのは見事だ。脇を固める登場人物たちも僅かな登場ながら強烈な印象を残す。剣術道場師範や医者などは物足りないと思うほどだが、主題はあくまで新之丞と加世と徳平の三人が成す家にあるからであろう。気に食わぬ仕事、切腹が待つ厳しい武家社会、冷たい親戚に囲まれながらもささやかで穏やかな幸せに価値を見出している。殊に印象深いのは加世が〝蛍はまだ出ていない〟と嘘をつくところで、しびれるものがある。しかし、思い込みかもしれないが若干気になるのは台詞が説明のように感じられるところ。活字ではない情報量の多い映像なれば必要以上の言葉は要らなかったと思う。ましておしゃべりは嫌いだとあれほど言っていたのだから。無言の中にというのが日本人の愛する奥ゆかしさだと認識しているのだが、もはや時代錯誤なのであろうか。日本人の一分はもうそんなところにはないのかもしれない。・・・・・・ところでシネコンで観たのだがチケット売り場で数人の子どもたちが〝たけしのいっぷん〟と笑いながら連呼していた。そんな映画があったら・・・ぜひ観たいゾ;。 【ミスター・グレイ】さん [映画館(邦画)] 7点(2006-12-02 23:53:18) (良:1票) |
1.改めて書き直します。やはりと言いますか、予想していた通り、酷評が多いが、私からしたらこの作品が山田洋次監督の時代劇三本の中では一番の傑作であると言いたい。この際、キムタクのことはどうでもいいのだ!この映画では私には時代劇としての完成度など求めてはいない。山田洋次ファンである以上に寅さんファンである者にとって、この映画で描かれているのは人間味溢れる優しさ、家族の物語、そこにこそ山田洋次監督の持ち味がある。少なくとも私はそう思う。俳優にしても脇を固める俳優、桃井かおりは駄目(生理的に受け付けない)として、キムタクの相手役の檀れいの素晴らしさ、夫を愛するということはこういうことなんだと素直に見たいし、また笹野高史のあの人間味溢れる演技がなんと言っても素晴らしく、山田洋次監督らしい温かさを感じる。少なくとも冷たい雰囲気しか感じることの出来ない「たそがれ清兵衛」なんかよりはずっと良い。 【青観】さん [映画館(邦画)] 9点(2006-12-01 22:20:49) (良:1票) |