4.キーワードは「星」。星=人間の美しい心、良心といったようなもの。 これはスキャンダルそのものがテーマではなく【水島寒月】さんが言われたように人間はこうあってほしいという理想像を描いたもので、青臭いほどの直球です。でも私は単純なのでストレート大好き。 ゴシップ記事を書いた雑誌の編集長はその対極にあるような人物として描かれる。 餌食にされた画家の青江はまっすぐで爽やかな好青年で、これを若い三船が肩の力を抜いたように自然に演じている。 特に根はいい人なのに心の弱い貧乏弁護士の志村喬が素晴らしく、この作品が好きというのもイコールこの作品の志村さんが味わい深くて好きだから。 クリスマスの夜山口淑子が歌う「きよしこの夜」、その後年越しのバーで蛭田弁護士が酔っ払いながら「今年はウジ虫だったが来年は娘に恥かしくない人間になるぞ」とクダを巻きつつ泣くのに感動し、皆で歌う「蛍の光」に胸が一杯になり思わず涙が出た。意外だったけどクリスマスにふさわしいような美しい作品だった。 登場人物もそれぞれが懐かしいやら珍しいやらだが、北林谷栄が老けてないのを始めて見たのでびっくり(蛭田の妻ね)。
【キリコ】さん 8点(2004-09-12 00:06:30) (良:2票) |
3.それまでの「三船/志村」コンビの映画に比べると、どうも煮え切らない映画です。今回の三船敏郎は画家役なので、『醉いどれ天使』や『野良犬』のようにギラギラした暑苦しい演技(これこそ若い頃の彼の魅力だと思うが)も発揮できず、どことなく窮屈な印象。そのうえ、いつもは頼りになる志村喬御大も本作では最後の最後の最後まで役立たず。イタい、実にイタい! 話としても、前半は言論の自由を悪戯に振りかざすマスコミへの痛烈批判、後半はダメ人間・蛭田の改心物語といった具合にピントがあっておらず、裁判結果そっちのけで「お星様」の話をされたって「はぁ?」って思っちゃいます。 【とかげ12号】さん [DVD(邦画)] 5点(2008-04-05 12:27:16) (良:1票) |
2.しごく普通な映画だが、これほど感動的な「蛍の光」は聴いたことがない。 【かんたーた】さん 7点(2004-05-18 21:53:14) (良:1票) |
1.黒澤ヒューマニズム全開の快作である。時に黒澤のヒューマニズムは善と悪との対置の仕方が紋切り型で揚げ足を取られやすい。しかし黒澤映画は、つまらん言い訳はせずに「あれは悪だ!!」とキッパリ断定して「許せん!!」と腹の底から絶叫してゴッツイ拳骨でぶん殴るところから物語が本格的に動き出すのです。主人公の青江一郎、そしてこの「醜聞」という映画は黒澤映画その物である。現実社会の複雑さに就いて相対的であることに終始する、したがって答えの出ない不毛な議論に必ずしも映画は付き合う必要は無い。確かに我々の居るこの現実は年末の安酒場で「来年こそは」と誓いを立てヤケクソに「蛍の光」を毎年歌わねばならぬ程厄介で情けなく惨めなものかもしれない。だが我々は無数に輝く星の間に絶対的なものがちらつくのを見上げずには居られない。夜空を見上げて「美しく輝くあのお星様になりたい」という祈りにも似た願い無くば全ての表現は瓦解するだろう。そのことを黒澤は弱点を思いっきり曝しながら敢えてストレートの剛速球で我々に投げ付けたのである。しっかりと受け止めたい。あっ!!そうだ!!高堂国典について書くのを忘れていた。この映画を見て改めて凄い役者と思いました。 【水島寒月】さん 8点(2004-05-03 15:57:09) (良:1票) |