8.構造的には同監督作品の「殺人の追憶」とあまり変わらない。黒幕は連続殺人犯でも異形の怪物でもなく、韓国という社会。両作とも印象的なのはソン・ガンホのクローズアップ(「グエムル」ならば、小屋から暗闇の向こうに銃口を向けるシーン)で、彼の視線は映画を飛び越えて、実社会へのまなざしとして観客に投げかけ、映画が終わった後も居心地の悪さを残し続ける。大きく異なるのは、「殺人の追憶」においては犯人=怪物を見せないという事を徹底したのに対し、「グエムル」では群集を襲う怪物としてとにかく見せるという事だろう。前者がサスペンスならば後者はスペクタクル。しかし「殺人の追憶」のサスペンスの支柱となった、韓国の軍事政権下の社会をダイナミックに描いた様は、スペクタクルそのものだったように思う。「グエムル」では、スペクタクルの支柱となる見られる対象としての怪物に、スピード感ある視覚効果やキモいイデタチを与えるが、おそらく10年とか時間が経ったとして、そのフォルムを覚えている者はいないだろう。ゴジラとかエイリアンとか、そして最近だと「宇宙戦争」のトライポッド(怪物ではないが一応)、これらのフォルムや動作が忘れられないのはそれなりの理由があるからだが、「グエムル」の怪物にはそれなりの理由が無い。テキトーな感覚で言うならば、こいつは「企画から生まれた」感が非常に強い。あるいは、「~的」であろうとし過ぎている気がする。地味であるほどに存在感を引き立てるぺ・ドゥナの方がよっぽど怪物なんじゃないのか。映画が高速化する中で、アーチェリーの矢を、しかもジャージ姿で放つ彼女と矢の軌道からは、高速化するサッカーの中で一発のスルーパスに賭ける前時代的なトップ下のそれを感じ取れるだろう。優雅な運動はスポーツ界のみならず、映画からも消えつつある。 【Qfwfq】さん [映画館(字幕)] 7点(2006-10-09 01:56:37) (良:2票) |
7.ポン.ジュノ監督アカデミー受賞記念として鑑賞。 やはりメッセージ性ある作品なんだね。警察も医者も【聞く耳持たず】。頼れるのは己の力のみ。 「パラサイト」同様アメリカを皮肉ってる部分も見えるし、只の娯楽作品ではなく、何を感じるか、何を伝えたいのか、ポン監督の作品は考えさせられます。 【tonao】さん [インターネット(字幕)] 7点(2020-02-10 16:30:53) (良:1票) |
6.《ネタバレ》 なかなか面白かった。ただ、ウィルス関係のためか中盤ダレ気味でした。しかしストーリー的にはあった方がいいと思うし、難しいところですな。とにかく、もう少し短くまとまった方がよかったと思います。あと、前半笑いをとる場面も多く、コメディかと勘違いしかかりました。それがシリアスな怪物(この映画ではクリーチャー?)の場面とうまく切り替えられなかった。それ以外は、かなりよかったんではないでしょうか。一家のキャストがそれぞれはまっていたし、一旦離れた兄妹が、連絡を取りつつそれぞれ行動して、最後に集結する展開もうまい。単なるモンスター映画ではなく、いろいろな要素を取り込んだ欲張りな作りで、それをけっこううまくまとめていたのも賞賛できます。 肝心のヒョンソが結局死んでしまうわけですが、それは男の子を守るためだった、つまり犬死にではなかったというところが、ポイントではないかと思います。誰かを守るために行動するというのは、パク一家全員に共通していることですね。 【アングロファイル】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-11-07 20:10:17) (良:1票) |
5.旦那に代わって妻投稿。この映画はモンスターパニック映画につきものの、大勢の犠牲者と怪獣の屍の上で感傷に浸る主人公とヒロイン連中に対するアンチテーゼではないかと思う。ガメラ、仮面ライダー何でもいい。夜道を家に帰る端役女性が突然その命を通り魔的に奪われる。次の瞬間には主人公の図々しい日常が描かれ、被害女性の今までの人生や、彼女の帰りを待っていた彼氏が変わり果てた恋人を前に嘆き悲しんだり、家族が蒸発した娘を必死で探すであろう事実はなかったことにされるような展開に、きっと制作者は違和感を感じていたのではないか。それが、この映画における葬式のシーンやラストの唖然とする結末など、頑張って努力した主人公の家族が悲惨な運命を背負う描写へとつながったんだと思う。あの女の子の遺形はモンスターを際立たせるために殺された映画やテレビの中の無名の人々の墓標ではないかと思う。 【はち-ご=】さん [DVD(字幕)] 7点(2009-01-02 03:12:21) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 ゴジラは戦争の不安が凝り固まって生まれたものだったが、これは何かというと、都会の通り魔だね。人々が襲われているのを、バス(?)の車内からおばさんが見下ろしてるカットが変にリアル。これって安全地帯から通り魔を目撃してる目でしょ。最初のほうで、橋からの飛び込み男が怪物を目にするエピソードがあったけど、アメリカ軍のクロロホルムより、ああいう自殺者の世間に対する怨念を食って怪物は成長したんじゃないか。だから休日の河原で屈託なく楽しんでる人々を見ると、ついムシャクシャして。だもんでこれ、ゴジラのような国民共有の災厄にはならないで、被害者の家族の物語になってしまうんだ。 【なんのかんの】さん [DVD(字幕)] 7点(2007-07-23 12:28:26) (良:1票) |
3. これはどうやらいろんな映画のパロディーでしょうな。そもそもしょっぱなの設定が『悪魔の毒々モンスター』とちがうのか? ジャンルとしてのB級映画のパロディーだ。だから、封切り当時のある新聞の論評のように、駐留アメリカ軍や汚職体質への批判だとか、そんな生真面目一本に観てはつまらない。しかし、ねらいがよく伝わってこないところは作品自体の責任で、そこが欠点だ。ところで、父親役のおっさんは味のあるいい俳優ですな。 【goro】さん [DVD(吹替)] 7点(2007-04-19 01:22:08) (笑:1票) |
2.まー無茶な話だ、無茶すぎて「無茶だ」とか考えている事が、バカバカしくなって途中から無茶だ無茶だヤムチャだ、とは考えないようになった。ここまで突き抜ければ、映画って何でもアリなんだなぁって思った。 【六爺】さん [DVD(字幕)] 7点(2007-01-28 22:03:03) (笑:1票) |
1.《ネタバレ》 印象に残ったのはふたつ。ひとつは、今までに無いパニックのオープニング。毒薬をタレ流したり、釣り人が怪物(の赤ちゃん時代?)を目撃したりとワザとらしい複線はあるが、ある日突然始まる怪物騒動のショッキングなところだ。何気ない日常の風景、見慣れないものを見て集まる呑気な市民達、そして(ジョーズの様にBGMなどで「恐怖の下準備」をさせる間もなく、)全く唐突に始まる怪物の襲来。こっちが心の準備をはじめる間もない勢いで続く襲来パニックには本当にドキドキした。……もうひとつは、物語の随所に見られるどこかコミカルなシーンの数々。エンドロールのテーマも、まるで蒲田行進曲のようだったし、怪物の犠牲者となった人々の合同葬の場でも、号泣している家族の姿に思わず噴出してしまう。朝鮮半島には昔の葬式の「泣き女」のように悲しみや怒りなどの感情を表に表現する文化があるけれど、このコミカルなシーンはきっと監督の意図するところなのだろう。……恐怖を演出するのに、「血」な映像を極力控えてあるところにも監督の手腕が見える。スプラッターに頼るのではなく、怪物の巣からの脱出を試みるシーンの様に心理戦を重要視しているので、安っぽい残虐CGよりもよっぽど心臓に悪い。モンスターパニック映画のお手本のような、きれいに仕上がった良い作品だったと思う。 【six-coin】さん [映画館(字幕)] 7点(2007-01-01 16:35:31) (良:1票) |