21.「自分たちの仕事は犯人らしき人間を見つけ出すことであって、そいつを起訴するかどうかを決定するのは検事さん」と考える刑事がいて、「自分たちの仕事は警察が上げてきた犯人を有罪にすることであって、被告が無罪である可能性を探索するのは裁判官」と考える検事がいて、「警察と検察が調べ上げた結果として起訴したのだから、恐らくこいつはクロなんだろう」と考える裁判官がいる。冤罪製造マシーンとも言える無責任トライアングルが我が国には存在しているのですが、その結果が99.9%という驚異の有罪率に表れています。これはもはや中世の魔女狩りをも凌駕するレベルであり、運悪くこのトライアングルに捕まったら最後、身の潔白を認めさせることはほぼ不可能という恐ろしい事態が待ち受けています。。。 そんな司法の問題点について、痴漢冤罪という奇抜なネタで切り込んできた監督の戦略には恐れ入りました。一般人にとって縁遠い殺人事件等の重犯罪とは違い、多くの男性にとっては対岸の火事とは言ってられない身近な題材だったわけですから。おまけに、痴漢裁判は司法の問題点の宝庫でもあります。世間的な注目度の高い事件ではないため検察も裁判所も本気ではなく、「めんどくさいからさっさと認めろよ」という姿勢で審議しているからです。実際、被害者女性と容疑者男性の身長差が30cmもあり、容疑者が被害者のお尻を触ることは物理的に不可能という状況にありながら起訴にまで至った事例や、容疑者男性は難病を患っており、痴漢行為をはたらくことは100%無理であるとする医師の証言がありながらも有罪判決が出されて収監に至った事例までが存在しています。本作のモデルになった男性などは、この映画への協力が原因で裁判官の心証を害し、本作公開の2週間後に実刑判決を出されるという報復的な扱いまでを受けています。痴漢裁判は、もはや無法地帯と化しているのです。。。 「映画の魂はディティールに宿る」という言葉を実践した丁寧な演出にはなかなかの見応えがありました。拘置所とはどんな場所であるか、もし逮捕されればどんな扱いを受けるのかといった通常の映画が見落としている点を丁寧に拾いあげ、これを見せ場としているのです。裁判の過程にも映画的な誇張(「異議あり!」の連呼等)がなくて、良心的な作りだと感じていました。それでいて娯楽への一定の配慮もあるわけですから、これは驚異的によく出来た映画だと思います。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(邦画)] 8点(2012-10-27 16:44:58) (良:5票) |
20.この作品は裁判も含めた日本の司法制度という物の不備を描くだけでなく 人が人を裁くという正義や法律の原点原理が いかに不完全で嘘っぱちな物かを明らかしにた作品でしょう。
また、日本の場合、江戸時代からの大岡裁きとも言うべき 「まず、お上に対して恐れ入れ、罪を素直に認め、恐れ入るなら許してやる」 こういう封建的俗習に元付いた起訴便宜主義が、未だに当局側で罷り通っている。
逆に考えればこれは犯罪者側にとってはオイシイ話です。 軽微な犯罪なら、被害者に相応の示談金を払い 後は素直に「ハイハイ」と従っていれば、自動的に検パイ(検事裁量の起訴猶予)に成り、釈放だからです。
逆に、今回の主人公の様な冤罪被害者にとっては非常に不利です。 やってもいない犯罪を「やったと言え、やったと言えば許してやる」 と、言われて否認すれば、お上に楯突いた事となり、当局は何が何でも有罪に持ち込もうとする。
警察側の意図でワザとズサンな証拠集めと捜査が成され 有罪を前提とした誘導尋問や、証拠の歪曲が行われた後、検察が強引に起訴に足る証拠固めをする。
裁判所は裁判所で有罪に都合の良い証拠だけを、裁判官の独断で取り上げ それを合理的根拠として強引にコジ付け、有罪判決を下す 全てが可及的速やかに効率重視で、一方的に進められて行く。
これでは有罪率99.9%もうなずけます。話に成らないのです。
何故、欧州などの先進国には死刑制度が無い国が多いのか? つまり、人が人を裁くという行為がいかに不完全で理不尽な行為であるかを 裁判員や裁判官自身が認識し、だから死刑判決の様な重い責任は負えない。こういう事ではないでしょうか?
そもそも、海外の裁判員制度は素人の国民でも裁判に参加させる事で 民意を判決に反映させる事が出来るという、公平原理の大儀名分からですが しかし内実は当局側の責任分担(責任逃れ)として作られた制度とも言えます。
翻って考えれば日本の様に死刑制度が有る国が 今までよくも無神経に、こんな司法制度を続けて来たものだと 再認識させられる作品でも有ります。
話は変わりますが電車内の痴漢被害は 「満員電車という、馬鹿馬鹿しい電車の乗り方を無くすだけで0に成る」とは思いませんか??
まあ、これも司法制度と同じく、効率重視の社会倫理の中では馬鹿げた方法だと 一笑に付されてしまうのでしょうけれど。 【一般人】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-06-15 03:56:31) (良:3票) |
19.映画館からの帰りの電車に両手を上げて乗りたくなる一本です。裁判制度が一定のシナリオに従って、人を個人として扱わず進行していく様に憤りを覚えます。痴漢事件では被害者は犯罪が行われたことを証明する必要は無く、加害者とされる側が犯罪を行っていないことを証明(反証)しない限り有罪となります。加害者とされる側は時間とお金を浪費し、社会的信用を失墜させた挙句、やっと無罪を勝ち取っても、そのいずれも手元に戻っては来ないのです。訴えた者勝ちの現在の裁判制度に一石を投じた奇態の名作です。 【郭嘉】さん [映画館(字幕)] 10点(2007-01-25 15:33:08) (良:3票) |
18.なるほど、秀作だと思う。数多ある冤罪の中で、あえて「痴漢冤罪」を選んだ意図も理解できる。そして、日本の刑事裁判の問題点を浮き彫りにした点も良いと思う。が、しかし、この全体を通してのあまりにもワンサイドな恣意的な作りはいただけない。「冤罪」の不条理性を訴えたいのであれば、なおのこと、監督は細心の注意を払って中立の視点で描かねばならないはず。主人公が本当に「やってない」のかどうか、それは見ている者には分からない。「やってない」と猛烈に主張する主人公の視点で全てが描かれているので、見ている者は「やってないに違いない」と思い込まされているだけである。警察の怒鳴り散らしながらの取り調べの見せ方、被害女子中学生の法廷への登場のさせ方、裁判官の交代による後任裁判官の登場のさせ方、これら全て、見る者に先入観を与える描写であり、ならば、同じバランスで「もしかして主人公はやっているかも」と思わせる描写も必要ではないのか。決定的に欠落しているのは「裁く側の視点」。主人公がどの程度「疑わしく」あるいは「潔白」に見え、有罪あるいは無罪に値する点が主人公の言動のどこに見られるのかをもっと明確に描くべきである、と思う。ものごとを「やっていない」ことの証明は、アリバイが存在しない限り「やった」ことの証明よりはるかに難しいだけでなく、そもそも裁判とは人が人を裁くものである以上、そこにはほぼ間違いなく主観が入る余地があり、完璧なる公正さはありえない。である以上、「冤罪」は未来永劫なくならないだろう。せめて「痴漢冤罪」をなくすためなら、たった1~2両の「女性専用車両」でなく、ラッシュ時は全ての車両を「男性用」と「女性用」に完全分離すればよいことだと思う。映画公開前に、「痴漢冤罪をなくすにはどうすればよいと考えるか」という問いに、この監督は「通勤ラッシュをなくすしかない」という、あまりにも非現実的かつ陳腐な答えをしており、それだけでも、私は十分失望した。最後に、痴漢は「微罪」とされるが、強姦などの性犯罪と比較して、被害者の受ける精神的ダメージは軽いと客観的に断言できるものではない以上、もっと「痴漢被害」を深刻に受け止めるべきであり、その意味で、この映画中で、被害女子中学生をあたかも「加害者」のような描き方をしたことには、強く抗議したい。「痴漢被害」に遭った人々に対し、その点は、この監督は猛省すべきと考える。 【すねこすり】さん [地上波(邦画)] 4点(2008-03-05 14:31:33) (良:2票) |
17.キムタクだったら何とかなったんじゃ・・・ 【マー君】さん [DVD(邦画)] 6点(2007-11-24 15:26:00) (笑:2票) |
16.ひと言で言って非常に恐ろしい、下手なサスペンス、ホラー映画も消し飛ぶほどの恐怖を感じる映画でした。 本作の恐ろしさの理由は、これが荒唐無稽なフィクションではなく、実際に日本で起きている現実であること。さらに痴漢というだけでなく、広く冤罪と言うことで言えば、全ての人にとって無縁ではないという現実感があるからだと思います。 本来悪が裁かれるべき場所、正義の砦とも言うべき司法や警察が不条理にも地獄の一丁目になってしまうというのですから。 皮肉にも、この映画における本当の「悪人」は痴漢の真犯人だけです。その他の人物は皆自分の職務を忠実に、かといってそれ程情熱を持つわけでもなく実行しているだけであり、だれもことさら悪意をもって加瀬亮演じる青年を貶めようなどと画策しているわけではないのです。ただ巨大なシステムのなかでそれぞれの役割を果たしているだけ・・・。 平和な生活を送る善良な市民が、神のいたずらか、全くの偶然から悪夢のような修羅場に巻き込まれていくというサスペンス映画は沢山ありますが、本作は「痴漢の濡れ衣を着せられる」という一見地味な(?)設定でありながら、凡百のサスペンス映画を遙かにしのぐ恐怖、不条理感の中に観るものを叩き込みます。 これみよがしで過剰な音楽も演出もなく、ただただ淡々とした日常がそのトーンを保ったままある時点を境に舞台が「どんでん」するようにがらっと様相を一変させます。 それは現実に起こりえない荒唐無稽な設定や陰謀に巻き込まれる等と言うことではなく、日々日本で行われている普段通りの法の執行であり、我々善良な市民には見ることができなかっただけのもう一つの日常です。 裁判のシーンは(自分は裁判を傍聴したことはありませんが)、よくあるサスペンス劇場の裁判シーンが明らかに嘘であったと感じさせるだけのリアリティを持っています。 それは裁判官の口ぶりから、細かい手続き、ちょっとした仕草まで丁寧に拾って表現し、その積み重ねから生み出されるものだと思います。 その結果、これは現実との比較でそう思うのではなく「現実はおそらくこうなのであろう」と思わせるほどのリアリティ(現実感)を持つに至るということです。 11年ものブランクから起死回生の特大ホームランを放った周防監督。本作に傾けた情熱とたぐいまれな才能に感服いたしました。 【ロイ・ニアリー】さん [DVD(邦画)] 10点(2007-09-09 18:58:32) (良:2票) |
15.この映画は痴漢そのものよりも日本の裁判制度、法律、警察のおかしさ、自分の身は自分で守るべきであるというものを徹底的に見せ付けられることになる。見ていて腹が立って仕方ないが、だからといって人ごとには思えないのだ。もしも自分がこの主人公と同じ立場に立たされたら人はどういう行動を取るだろう?女性から見れば男は女の敵だが、男からしたらやってないのにやったとされ有罪になるという事への怒り、つまり被害者は女だけでなく男も被害者なのだ!そして、何よりもこの映画を見ると本物の痴漢がのほほんとしているのに、無罪な人間が痴漢で捕まり有罪になるという矛盾。無実の人間を有罪にすることへの怒りに満ちた作品として、見応え十分!どれだけ頑張っても結局は認められず有罪になるのが真実なら、そんな真実など真実であって真実じゃない。全てが矛盾の塊、それが現実だと思わせるだけの力作です。こんな許せない裁判制度、法律を見ると、それなら女性専用車両だけでなく男性専用車両も今すぐにでも作るべきだと思わずにはいられない。 【青観】さん [映画館(邦画)] 8点(2007-01-21 19:00:02) (良:2票) |
14.怖い。 男の自分としてはとっても怖い映画。 おそらくこの映画が公開されても絶対この流れは変わらないところも怖い。 【aimihcimuim】さん [DVD(邦画)] 8点(2014-08-13 22:58:57) (良:1票) |
13.裁判の途中で裁判官が交代した。最初の大森裁判官のままだったら、おそらく有罪にはならなかっただろうと思う。最初の裁判官は、「検察側の証明を吟味して、有罪の確信が持てなかったら無罪なのです」と言った。すなわちこの映画の主題ともいうべき「十人の真犯人を取り逃がしても、無実の罪を一人でも作ってはならない」が守られていたのだ。だが・・・。この映画は警察の取り調べや日本の裁判に警鐘を与えているのだが、通勤の満員電車解消も考えていかなければ、この問題はなくならないのかもしれない。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 8点(2013-02-10 22:20:28) (良:1票) |
12.いらん世話ではありましょうが、冤罪無くす為必死こいて対策考えてみました。天井から吊り革たくさん垂らしてもらえばよいのです。なんだったら100本でも200本でもよいのです。とにかく私ら疑われたくないんだから。とにかく私ら万一に備えて常時バンザイしておきたいんだから。とにもかくにも捕まるところをプリーズミー。 まずは吊り革たくさん垂らしてみてもらえませんか まずは身近なところで西鉄さんから着手お願い致します。 【3737】さん [DVD(邦画)] 9点(2011-10-26 21:23:35) (笑:1票) |
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11.こんなこともあるよって言う教育映画でしょうか?教育された私は以後極力電車に立って乗っているときは、両手で吊り革につかまるようにしています。教育映画ならお金を払ってみる商業放映ではなくて、学校の映画教室で見せてください。商業映画でしたか? 【ダルコダヒルコ】さん [DVD(邦画)] 3点(2010-05-07 01:40:10) (良:1票) |
10.ガリレオ・ガリレイの宗教裁判での有名な言葉「それでも地球は回っている」からタイトルが引用されていると思われるが、昔からある「裁判」という制度も、ひとつの問題に対して「区切りをつける」という人智のひとつであって、必ずしも真実を担保してきたわけではなかった。本作は、痴漢冤罪事件という、多くの人が我が身にあてて考えやすいテーマを取り上げ、冤罪と裁判というテーマを考える機会を提供した点は評価できる。我が国では普段は縁遠いと思われる「刑事裁判」の実態を多くの人に知らしめたいとの製作者の意気込みが伝わってくる。今年4月にも電車内で痴漢をしたとして1審、2審では有罪とされた大学教授を、一転無罪とした最高裁判決があったばかりだ。痴漢行為そのもののは決して許すことのできない、憎むべき卑劣な犯罪行為であることは論を待たないが、最初の裁判官が劇中で言っていた、刑事裁判の最大の目的「罪のない人を罰しないこと」、そして冒頭のテロップ「十人の真犯人を逃したとしても、一人の無実の人を罰してはいけない」との主張の妥当性は、鑑賞者自身が本作の主人公の状況に遭遇したと想像すれば容易に首肯できるはずだ。映画自体はまさにドキュメンタリーのように進行していくが、映画という手法を上手に使って、事件の本質を表現することに成功している。特に度重なる公判でのやりとりは息詰まる見せ場であり、「沈黙」という間もきちんと表現しているのは秀逸。主役の演技も自然であり、平凡な日常から一転被疑者として扱われることになった普通の人間のとまどいが見事に表現されている。ラストの結論も、安易に後味の良さを求めることなく「これが今の現実」とのメッセージが込められており、良かったと思う。この作品はこうしたメッセージ性と共に、最後まで観客を引っ張る娯楽性をもバランスさせており、現代社会を生きる全ての人が見て損はないと言い切ることができる。
【田吾作】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-10-22 11:02:26) (良:1票) |
9.日本の司法の問題点を、ひたすらリアルに正攻法で描いた本作は、周防監督の真摯な問いかけがストレートに伝わってくる。 実はこの映画が公開されるよりずっと前に、知人の弁護士から「痴漢冤罪」について聞かされていた。 微罪だから、という理由でなかなか表面化しなかったこの問題を通して、この国の司法制度は根本から見直さなければならない、という極めて重大な社会問題を、誠実な取材と堅実な演出で見事なエンターテイメントに仕上げた監督の聡明さと手腕を、諸手を挙げて褒め称えたい。 ことに、最後の最後まで、観客であるわたしたちに真実を明かさずに、客観的な事実のみを積み重ね見せていく手法は、実に示唆に富んでいる。 公開当時、深夜2時からのレイトショーで観たのだが、観終わって拍手したくなった作品は久しぶりだった。 お見事というほかない。 【poppo】さん [映画館(邦画)] 10点(2009-04-18 15:09:59) (良:1票) |
8.日本の刑事司法制度には代用監獄(最近では代用刑事施設って言うそうですが)というのがあり、自白の強要などが行われ易く、取調べの可視化が必要だと外国からも注文つけられています。それから判検交流といって、裁判所と検察には人事交流があり、そのことに多くの批判があります。また、裁判官の数が少なすぎて裁判官一人が抱える負担が大きすぎるということが問題とされています(映画の中で判事が居眠りしてましたが、私も実際に傍聴で何度もあんな光景見たことあります。)。そして、起訴された場合無罪になるのは奇跡的であり、ほとんど検察が被疑者を裁いているに等しいという現状があります。かように日本は司法制度全般に他の先進国と比べ特異な歪みがあります。そうした状況が何十年も変わらず続いているわけです。・・・・以上のようなことを大学で法学を勉強すると教わります。たぶん世の中の学生は皆こうしたことを知り、腹を立てると思うのです。しかし、俺がこんなことに腹立てても仕方ないし、俺なんかには何もできるわけないし・・・と思ってそこで終わりです。みんなおかしいと思ってるのになぜか何も変わりません。本作はその挫折して行き場のない青臭い憤りをそのまま映画にしたような作品です。その憤りをみんなに共有してもらおうとした作品です。そうすることにより本気でクソ真面目に諦めの先に突き抜けようとした努力と熱意の表れです。昔のサヨの学生運動の気取った勘違いの「正義」ではなく、漱石の唱える素朴な「道理」の実現を目指しているような愚直な映画です。映像や技術にいちゃもんつけるのは野暮に思えるような真っ直ぐな映画です(それがイヤな人も多いんでしょうけど・・・)。これには偽善者の私は心から拍手とエールを送らざるを得ません。この直球はど真ん中ストライクです。まあ、私の場合は自己満足の正義感に酔っているのかもしれませんけど・・・・。 【しったか偽善者】さん [映画館(邦画)] 9点(2009-04-07 00:45:08) (良:1票) |
7.この国に住んでる男性は全員観ておかないとコレ。 【エムラ兄妹】さん [DVD(邦画)] 10点(2008-03-21 16:32:53) (良:1票) |
6.裁かれたのは痴漢行為ではなく、やっていないのだから「やっていない」とあくまでも主張してやまない西洋的近代個人主義精神なのである。そしてさらに左遷という形で裁かれたのは自分自身の判断で裁判を行う裁判官の西洋的近代個人主義による精神なのである。つまり個人の本心にもとづいて行動するアイデンティティはこの国では排斥され、場の空気を読め、と常にみんなが期待する役割を演じることが強制されるのである。だから交通事故をおこしたら被害のない方が、悪くなくてもまず謝り、不祥事を引き起こした省庁は、関係のない新任の大臣がまず国民に謝るのである。そもそもこの国の裁判制度は、もし無罪が乱発されたら、みんなが裁判で決着をつけるようになり、そうなると制度的に機能しなくなる貧弱なつくりになっているのである。そもそも西洋の正義なるものは未だに通用していないのに、形式的に西洋の正義が機能しているふりをし、学校でもそのように教えながら、実は個人を徹底的に圧殺する場の空気が支配する人権後進国なのである。年金さえ自国民の政府では管理できず、役人たちが食い散らかしてしまう公認汚職は裁けない社会制度後進国なのであり、ごまかしだらけのGDPによる偽装先進国だったのである。だから個人が個人の良心にもとずいて声を上げる精神は、制度の根幹に関わるとして統治機構により圧殺されるのである。よくできた脚本なので社会的示唆に富む映画になっていると思う。 【マンフロント】さん [映画館(邦画)] 8点(2008-03-07 22:28:25) (良:1票) |
5.丁寧に作ってあって、完成度が高い作品だと思います。内容のことを言えば、裁判官や検察官をちょっと悪者っぽく描きすぎでしょうか。彼らの立場を想像すれば、この映画の中で語られていること(証拠や証言)から、あの結論は仕方なかったように思います。観客は事実を知らされているから、奇妙な結論のように見えてしまうのも理解できますけど。映画の中で「無罪にしておいて後で引っくり返ると左遷」みたいな背景が説明されているけど、逆もまたしかりで、「有罪」にしておいて後で引っくり返って「無罪」になったって、今度は第3者やメディアに叩かれるのだから、裁判官が「無罪」にしたがらないという説明も、ちょっと一方的だったと思います。結局、犯罪を公平に裁くためにはそれなりの証拠が必要だという、ギリギリの方法が「裁判」なのだということでしょうか。 【かねたたき】さん [地上波(邦画)] 8点(2008-03-02 02:49:10) (良:1票) |
4.被告側の視点に立った話だと理解はしているが、体の中が震えるてくるほど腹の立つ作品でした。駅員に押し込まれるほどの満員電車に乗ったことのある人(大勢いるでしょうが)なら判ると思いますが、故意にしろ過失にしろ何が起きても不思議ではないあの空間は、本当に異常です。もう随分前ですが、ある日の車内で僕の後ろにいたOL風の女性が突然、「いつまでさわっとんじゃ!ボケ!!」と大声でまくし立てたことがありました。当の女性はそれだけ言うと素知らぬ振りをしていたのですが、その女性を取囲む男性陣(6~7人)は僕も含め穏やかではありません。離れている乗客たちは、(どいつやどいつや)という風にこちらを興味深げに覗っています。そして次の瞬間、僕ら男性陣の下ろしていた手がもぞもぞとゆっくり上げらてゆく光景は、緊張感の中の変な可笑しさと(あ~みんな考えるのは同じなんだな)という妙な連帯感を感じた忘れられない体験でした。そんなこともあり、ちょうどTVなどで騒がれていた痴漢犯罪の問題は予備知識としてもっていたので、一方的とはいえこの作品の進め方に異論はありませんし、警察の体質や裁判の在り方に問題があるとは思いますが、裁かれるべきは何が起きてもおかしくないあの通勤ラッシュの殺人的混雑に元凶があるような気がしました。そんな特殊な空間での難しい犯罪だけど、改めてこういうことが起こっていると今一度“傑作”として仕上げ、世に送り出した本作の功績と静かで熱い演技をした役者たちには素直に拍手を送りたいものです。最後に一言いわせて下さい。日本アカデミー賞のバカヤロ~! 【カリプソ】さん [地上波(邦画)] 8点(2008-03-02 01:42:19) (良:1票) |
3.この映画を観て僕は、「今後の人生、絶対に痴漢と間違われないように気をつけて生きていこう…!」と猛烈に心に誓ったので、そういう意味でこれは、僕の人生に確実に影響を及ぼした作品です。 【コダマ】さん [映画館(字幕)] 5点(2007-04-09 02:49:19) (笑:1票) |
2.周防正行監督の新作は社会のある一断面を描いた問題作である。ブランクというものをまったく感じさせない彼の手腕は、やはり本物である事をいみじくも証明した、実に力のこもった作品であり、待たされただけの甲斐はあったと言うものだ。描かれる内容は、日常生活に於いて普段我々が関知しないと思っている、裁判制度の現実と冤罪の怖さを否応無く思い知らされるものである。一般の民間人がある日突然、犯罪者として扱われ、罪に問われるべく裁判に持込まれた挙句、限りなく100%に近い確率で有罪とされてしまう司法の在り方とその不条理さ。映画は裁判が言い渡されるまでのプロセスを、実に肌理細やかに解り易く描き、訴訟制度に於ける組織が個を潰していくという構図を、由々しき現実的な問題として、我々ひとりひとりに訴えかけてくる。余りにも映画的に面白く創られている為か、深刻さを然程感じさせないのは、殺人といった重い犯罪ではなく、あくまでも微罪である事が考えられるが、だからこそ、いつ自分の身に降りかかるか分らない、より身近なものとしての怖さと理不尽さを感じさせる。この映画でとくに興味を引いたのは、対照的な二人の裁判官の存在である。片や人情肌で、一方は冷静沈着といった、良くも悪くも人間性というものが真実味をもって巧みに演じ分けられ、そのイメージだけでは判断しかねる程、現実の裁判官とはこういう人たちで成り立っているのだと実感でき、実に説得力がある。途中から何故か交代してしまう事や、彼等自身の評価基準の裏話、或いはどこまでも事務的に物事を進めていく姿勢などを随所に散りばめる事によって、彼等も所詮公務員である事を再認識させられる。このキモである裁判官を演じる小日向文世と正名僕蔵の、冷静な熱演が作品を引締めている。多くの民間人が訴訟中であることの現状や、当事者にならないと解らない心情などの様々なエピソードも、長きに渡る綿密な取材に裏打ちされたものだからこそ、真実味が生み出せているのである。本作の印象はやはり周防監督らしく、社会派と言うよりも硬派なエンターテインメント と言うべきかも知れない。 【ドラえもん】さん [映画館(邦画)] 10点(2007-02-25 18:22:02) (良:1票) |