11.初めて鑑賞したのはほんの小さな頃のことで、これが大きな間違いだった。いやおうなく"ダニー"として劇中に放り込まれ、半ばトラウマになってしまった。 怖そうな父親と、神経質で気弱な母親。まずこの配置がすごく嫌だ。男性なら想像がつくと思うが、あの年頃の少年は母親にべったりのマザコンで、父親にはエディプス・コンプレックス的な反感を抱いている。父親は家族を守ってくれる頼りになる存在でもあると同時に、非常に強くて恐ろしい存在でもある。男性にとって父親がもっとも大きな意味を持つ時期に、発狂した父親が襲ってくる。これ以上に恐ろしい怪物はいない。 キングが母子家庭に育ったことを思い出した。世界でいちばん安らげる場所であるはずの家庭が、この世界でいちばん恐ろしい場所になる。それは子供にとっては、文字通り世界がひっくり返る恐怖だ。そしてキング版とは違って、まがりなりにも親子の絆が回復することはない。父親は怪物となり、平和な家庭は崩壊したまま二度と元には戻らない。安心して眠れる場所は、もうどこにもない。 また、あの海となって流れてくる血の色が忘れ難い。おぞましく、それでいて不思議に美しい。上品さと下品さのどちらにでも転びかねない色。あんなにたくさんの血が流れるのは、人が死ぬときか生まれるときのどっちかだ。腐乱した女性の誘惑もまた性と死というありえない組み合わせであり、生理的に不愉快極まりない。 この映画は人間のもっとも根源にある、本能的な恐怖を刺激する。『シャイニング』は、幼い頃の筆者のむき出しの感受性に深々と突き刺さり、消えない痕を残した。今でもあの雪中の迷路の場面を思い出すと胃がぎゅっと縮こまるような恐怖を覚える。あの限りなく絶望に近い恐怖と、途方もない心細さ。個人的には今なお特別な意味を持つ作品であり、恐怖の原点ともいえる作品だ。 【no one】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2006-01-04 09:31:05) (良:2票) |
10.《ネタバレ》 美しい...余りに美しすぎ、あまりにも整いすぎているから、かえって怖い、という逆説が見事。整然とした光景に、初めから病的なジャックとシェリーという異物を投入するからこそ、「ホテル」という美しい主役が際立つのだ。原作のキングはキューブリック版を観て憤慨したようだが,ごちゃごちゃしたものが好きなキングと,異常なまでの潔癖症なキューブリックでは水と油のようなものだから,対立するのも仕方なかろうと思う。考えてみれば,キューブリック的には徹頭徹尾「ホテルが主役」なのであって,「正常な男が段々と狂って~」というストーリーは,先に述べたようにホテルを際立たせるための「飾り」に過ぎない(初めからニコルソンが「おかしく」みえるのは,だから当たり前なのだ)。にもかかわらず,キングはそこに執拗にこだわってリメイクまでしてしまう。映画とは直接関係ない話だが,そのあたりも両偏執体質者のセンスというかスタンスの違いを見るようで面白い。 |
9.《ネタバレ》 人間の狂気を圧倒的な映像美で描き続けたキューブリック作品のなかでも、とりわけ大好きな作品。世間とは孤立した雪深い山頂のホテルで一冬を越すことになった家族に、しだいに忍び寄る人智を超えた者たち。そしてそれに捕らわれた父親は……。彼が妄想とも幻覚ともしれない社会を漂い始め、そこで見る圧倒的なイメージの奔流。誰も居ないはずのパーティー会場には居るはずのないバーテンダーが居て、そしてあるはずのない禁じていたはずの酒があり、踏み込んではいけない客室には謎の全裸の美女が居たかと思いきや……。他にも、エレベータから迸る大量の血液や殺された双子の少女など、一度見たら忘れられないイマジネーションの極地のような映像美と音楽。何度観てもおしっこ漏らしそうになるくらい、ぞくぞくさせてくれる大傑作! 【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 10点(2013-04-10 13:24:20) (良:1票) |
8.《ネタバレ》 スティーヴン・キングの原作を離れ、キューブリック独自のスタイルで描かれた恐怖映画の最高峰。子供が三輪車を走らせているだけで、こんなに怖い映画もないだろう。画作りが巧いと言ってしまえばそれまでだが、これほど効果的に、一秒の無駄もなく緊張感を持続させることは至難の業だろう。無論、ジャック・ニコルソンの狂気を湛えた演技も素晴らしく、この映画を観て以来、他の作品でニコルソンが出てきたら、いつ暴れ出すかとビクビクしてしまう。有名な血の海エレベーターや双子のシーンになると「うわ、出たよ!」と、何かイヤ~なものを見た気分にさせてくれる。いつの間にか自分も、オーバールックホテルの出口のない迷路に迷い込んでしまうのだ。 【フライボーイ】さん [DVD(字幕)] 10点(2007-09-11 16:20:44) (良:1票) |
7.カッコーの巣の上でを見て、ジャックニコルソンに惚れ、コレを見ました。だんだん人間狂っていく段階をちゃんと演技するニコルソンはやっぱり最高でした。ていうか、普通に怖かったです。一緒に見てた友達は途中で逃げ出し、最後のほうは一人で見ることになりました。(笑) 同じホラーでも、洋画にとっては珍しいジャンルではないでしょうか。 【SAKURA】さん [DVD(字幕)] 10点(2007-02-20 00:45:21) (良:1票) |
|
6.わたしにとって、この映画はせつない、なつかしい、豪華で非常に遠い夢(悪夢でも) の世界なんです。なつかしいロマンティックな音楽にのって、冷たい誰もいない高い天井の絢爛豪華ボールルームに入っていくと壁に、高貴な古き良き時代のパーティの写真が映される。最高のラスト。それはあたかも、現代人を絶対によせつけない、高貴な階級の大人だけにゆるされた、古き良き時代の冬山の奥地にとざされた甘く切ない夢なのです。音楽、映像、クレジット、タイトル、美術、ホテル、なんでこんなにも高貴なんだろう!すばらしい!第一級の芸術品です。ああー怖い。 それから、冬のシーズンオフが近づき、すこしずつ、ひとりひとり、ホテルから従業員がはなれてゆく様を観てゆくところは、何度観てもイヤだ! 名作。 【男ザンパノ】さん [映画館(字幕)] 10点(2006-05-07 22:24:43) (良:1票) |
5. 僕のなかでは永遠のトラウマ映画なんです。とにかくね、もうただひたすらに怖いんです。ちゃんと最後まで観れたのは一回きりなんです。しかも中学生のとき。しかもなぜか授業中。しかもなぜか技術の時間。なんで?変わった先生だったんですねえ。のどかな学校だったんですねえ。今でも、長い廊下が怖いです。タイプライターが怖いです。双子の女の子が怖いです。鏡が怖いです。あの奥さんの引きつった顔がたまに夢に出ます。ニコルソンが嫌いです。キューブリックは好きです。僕の恐怖心を引き起こすトリガーのきっと大部分があの映画から来てると思います。大人になってから、一度だけ観直しましたが、最後までたどり着けませんでした。大人なのに・・・。というか、本当をいうと最後の方はよく覚えてません。ホラー好きに言わせると全然怖くないらしいですけど、僕はもうだめです。ゆっくりゆっくりニコルソンが狂っていく、というか、ホテルに取り込まれていくその一つ一つの細かい描写がいちいち僕のちっちゃな肝っ玉をがしがし責め立ててもうたまらないのです。三輪車!あのバーの居心地の良さそうな様子!廊下の血!やめて!お願いですから!ゆっくりズームインしないで!同ポジも切らないで!キューブリックの映画を見てていつも感じる、”あぁ、この人、人間がすごく嫌いなんだなぁ”という感じが最大限の不快な皮膚感覚で伝わってしまった映画です。まったくおんなじ感じが例えば『2001年』とか『フルメタルジャケット』とか『時計じかけ~』なんかではすごく入ってきたんですけどね。好きなんです。基本的に。キューブリック。人間嫌いなところが。でもこれはもう、ただただ嫌。怖いんです。でも、すごいと思う。これをもう一度ちゃんと観れるようになったら、僕は本当に成熟した大人になれるのかな、なんて思っちゃうんです。今はまだ、ただただ怖い。目をそむけていたい。 【am】さん 10点(2004-11-18 03:01:34) (良:1票) |
4.もう10回以上観ています。これは単純にホラーに分類されるものではないですね。次第に狂気に追い詰められていく心理ドラマでもあり、美しい芸術映画でもあります。キングは好きですが、彼がこの映画が気に入らなくて自分で作り直した作品は、原作に忠実なだけの平坦な映画でした。映画は小説の作り方とは違うとつくづく思います。 キューブリックはやはり凄い! 【霧のターンパイク】さん 10点(2004-11-17 23:47:00) (良:1票) |
3.怖いねこれ。お化け屋敷に入った気分で中盤からはキャラの一挙手一投足にハートビート、「出るなよ」って思いながらも期待してる自分がいた。最初に奥さんの幸薄顔がアップになった時点でホラー確定。ホラーですごいと思う脚本は無かったけどコレは別格。キューブリックの美意識にこだわった画には非の打ち所がない。額の広いニコルソンも迫力十分の演技。あの少年、当時7歳を気にさせないナイスキャスティング。 【スルフィスタ】さん 10点(2003-11-01 02:43:10) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 今日、5回目のシャイニングを見ました。何回見ても新たな発見があって、毎回鳥肌が立ちます。これはジャックの閉所恐怖症による発狂と、息子ダニーのシャイニング(超能力)がもたらす悲劇的なサイコホラーだと思ってましたが、それだけではないみたいです。気が狂い始めたジャックがゴールデンホールのカウンターに座り、「魂を売ってでも一杯のビールが欲しい」と呟き、表れたバーテンが差し出すバーボンを飲んだ。という事はジャックはその時点で魂を売ったんですね。そこからあのラストに向かって走り出すんです。ラストカットに出てくる1921年の写真の中の人たちは今でもあのホテルに住みついてるんでしょうか。あのホテルが大好きで、何回死んでもまた戻ってくるんでしょうか。前の管理人グレディは首尾よく妻と二人の娘を殺す事に成功したけど、妻と息子を生還させてしまったジャックは1921年の仲間たちの中でどういう立場にたつのでしょう。あと10回ぐらい見ないとすべての謎は解明できない。いや100回見てもわからないかも。キューブリックも死んじゃったし。 【パキサン】さん 10点(2003-08-07 03:57:18) (良:1票) |
1.この映画はビデオのパッケージが怖くて怖くて(笑)見られそうもなかったんですが、無理やり見させられました。いやいや見てみると、オープニングの映像がすばらしく綺麗で、心を忘れるほどうっとりしてしまいました。最後まで見てみると、なんだかホラーといってもとても美しくセンスのいいホラー映画だった気がします。血がドバーッと出てきますが、不思議と不潔感が無く、すんなり見られました。。それから、役者さんのほうも良かったです。ニコルソンさんは顔が面白くてちょっと笑っちゃいましたが(失礼)いい演技していました。それから奥さん役のシェリーさんも雰囲気が楽しくて、かわいかったです。息子役の子は、「レッドラム」が印象的でした。この子の声を真似できるのは、私の妹だけです(笑) 【喫樗無】さん 10点(2003-03-14 14:13:17) (良:1票) |