《改行表示》 12.《ネタバレ》 物語性のない実話をベースにしているので、派手なアクションも、刺激的なバイオレンスシーンもありませんが、監督は観客を退屈させないように、スピードだけは絶対に落とさないように気を使っていたことがうかがえます。1つの連続殺人事件がはじまってから迷宮入りするまでの長い年月のあいだに、さえないバツイチの漫画家は再婚し、アットホームな家庭を築く。かと思えばかつての敏腕新聞記者はアル中の酔いどれになっていたりする。他愛のないエピソードだけど、なぜか退屈しない、その理由は時の流れのはやさが、ごうごうと音をたてて流れていることを、意図的に作り手が観客に実感させているからです。日時の表示も効果的でした。「時間」というものは不思議なもので、私たちは「限りある時間」を、どうしても日常生活において意識することができません。一寸の光陰軽んずべからず、まだ時間はあるさ、と思っていても私たちはあっという間に棺桶に片足を突っ込む時期が差し迫っている。この映画の主題の連続殺人事件などはメタファーに過ぎません。人は何かを解決できる、何かを成し遂げられると思って生きている、誰もが何かに対し、「いつかは~」という思いを抱いて生きているが、時間は信じられないはやさで過ぎていく、そしてあっというまにフィナーレはやってくる。そのときになってはじめて「いつかは」は永遠にやってこないことに気がつく。その瞬間、人は何を思うのか?漫画家は焦燥感で我を忘れ、刑事は悟りを開いたように諦めていた。大抵の人間の行動パターンは、焦る、諦めるという2つのパターンに分かれる。私たちが普段は気にとめない「時間」を意識するのは、いつのときも終わりが近づいてきてからのようです。殺人事件だけではなく、すべての人の人生そのものが未解決のまま終わるのです。隠喩に満ちた作品でした。 【花守湖】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-10-01 20:12:43) (良:3票) |
11.《ネタバレ》 主人公の漫画家ギレンホールの言う「とにかく犯人の目を見てこいつだと確信したい」っていう気持ちに、こちらも同化する。最初の事件のなんともいやらしい車の動きぶり、あれだって覆面しているようなもので、それ以来ずっと、こういうことする奴はどういう顔してるんだろう、いう興味がつのっていく。容疑者リー・アレンに警察が会うシーンが、この映画で一番ドキドキした。やってることはどうってことないんだけど、こいつかもしれない、こいつでないかもしれない、そういう宙ぶらりんの気持ちのまま、こいつかもしれない容疑者の顔を見つめることの緊迫。こういうシーンで映画としての充実を覚えたのは珍しい。この映画、犯人の分析や事件の社会へ与えた影響などにはあまり関心を示さず、犯人に関心を示した人たちへの関心を持ち続ける。ラストに主人公が犯人(というか濃厚な容疑者)の目を見つめるシーンが置かれるのも、その流れだろう。首尾一貫してはいるが、これだけの長尺を持ちこたえるには、ちょっと物足りなくもあった。 【なんのかんの】さん [DVD(字幕)] 6点(2008-02-05 12:23:35) (良:2票) |
10.この監督さんは、観客を映画の世界に取り込むのがうまいと勝手に思ってます。セブンの時は絶望的な気持ちにさせてくれたし、ゲームの時は映画のリアルさそっちのけに観客を疑心暗鬼のゲームの世界へとひきづりこみ、ファイトクラブでもパニックルームでも映画の主人公へと観客の心情を近づけてくれる。この映画にもそれを感じた。それはつまりゾディアックとゆう謎にみちた実に魅力的な犯罪にとりこまれ、それにより途方もない徒労感を味わう事と、それでもなお必死に追ってしまうマニアックな心情の二つ。観客の多くは味わうんじゃないやろか。もうゾディアックなんてどーでもえーやん。しんどいわって。ゾディアックを追った多くの人が味わう気持ちと同じ心情になれる。そして何かにはまって食べることも忘れるほど集中した事がある人なら、漫画家がそれでもなお謎に迫ろーとマニアックにはまる気持ちを理解して、最後の謎ときに結構ワクワクついていけるんじゃないやろか。俺はこれ大しておもしろいとは思わなかったとゆうのが正直な感想ですが、つまりもうゾディアックなんてどーでもえーわって感じでしたが、それすら監督のコントロールかもしれませんね。何年もの間、人々が味わった感覚を 2時間半ほどの映画に凝縮したのかも。 【なにわ君】さん [DVD(字幕)] 5点(2007-11-03 04:18:18) (良:2票) |
《改行表示》 9.《ネタバレ》 ジョン・キャロル・リンチは雰囲気いいですねー、相変わらず。 出てきた瞬間に画が不安になるというか、存在感が半端ないですね。 ゾディアックを追う物語(実話)、たしかこれ映画館で観たんだよなー。すげー辛かったのを思い出しました。 ながーく感じた鑑賞ですが、事件解決が遅々として進まない登場人物のイライラに比べればなんてことないか!? あらためて見返す機会を得たが、これはこれで面白い。 映画って観るときによって感じ方が変わるから、困ったものです(笑) なので意外とこーゆー自己レビューが映画日記みたいで役に立ってます。 【ろにまさ】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2019-10-25 05:02:02) (良:1票) |
《改行表示》 8.《ネタバレ》 デヴィッド・フィンチャーで何が一番好きかといえば、この「ゾディアック」。 60年代・70年代テイストのこの映画は、車上のカップルがいきなり射殺されてしまうファースト・シーンにはじまり、ゾディアックは次々に人を殺していく。 目撃はされても大きな証拠を得られない、何故連続殺人を続けるのか、総てが謎のまま終わってしまうのか。 劇場型犯罪によって警察、マスコミといったあらゆる人間が巻き込まれ、疑われる。 プロセスとしては「セブン」に何処か似ている。 説教めいた事を言うのも共通している。 ただ、決定的に違うのは犯人が解らないまま終わってしまうということであり、むしろゾディアックが自首する話が「セブン」なのである。 「殺人鬼は誰か?」ではなく「殺人鬼を付き止めるようとする人々」を焦点にしている点も注目だ。 得たいの知れない恐怖に挑み続け、事件を風化させないために戦い続けた人々の物語。何故彼等は同僚や家族を失ってまで事件を追い続けたのか。 まるで歴史の真相を暴こうとする歴史学者やマスコミのように諦めようとせず、どんどん狂っていく。 それは「何故俺はこんな事をしているんだ」という己の存在意義を見出すための孤独な闘いでもある。 時が流れ人々が忘れ去ろうとも、彼等は忘れる事を止めなかった。 彼らを突き動かすのは、ゾディアックの残した膨大な手がかりと情報だ。 「もしかしたら事件を解決できるかも知れない」という淡い希望。 ただ、「セブン」の「安心して子供を産める社会」のためにとか、他人のための意思とは少し違う。 謎を追うのはマスコミや漫画家といった人間がゲーム感覚で参加しているようにも思える。 マスコミは特ダネを掴んで出世するためだったし、漫画家は本を執筆するために。 警察が協力してくれたのも、真相を解明する手掛かりになるのではと利害が一致したに過ぎない。 それにしたって、あのハンバーガーの美味そうな食い方は何なのだろうか。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-12-20 20:15:52) (良:1票) |
7.未解決の連続殺人事件を描いた韓国映画『殺人の追憶』が時代の闇を描いていたように『ゾディアック』もまた60年代後半から始まる(ベトナム戦争真っ只中からキング牧師とJFK暗殺から始まる)アメリカ史の闇が描かれていたのかもしれない。フィンチャーが『ベンジャミン・バトン』を撮ったことでそれは確信めいたものに変わる。物語のメインはゾディアック事件に翻弄される男たち。彼らは犯人というより「暗号」に翻弄されていたのかもしれない。そして皆が皆、人生を狂わせてゆく。法と規則から離れた存在の挿絵漫画家が最後まで異常な執着をみせてゆく。「暗号」の謎に。誰かが解かなきゃいけない。そう思い込む心理は、真実が露見しない社会の中で生きる人たちの心理なのかもしれない。しかししかし、フィンチャーは社会派ではなかった。殺しのシーンの怖さは尋常じゃない。ものすごく怖い。これがあるから長尺に耐えれた。これがあるから重さを感じた。フィンチャーがどう考えているのか知らないけれど、これがあるからアメリカの闇という壮大さは消し飛んで小さな犯罪に収束する。つまりフィルム・ノワールなのだ。 【R&A】さん [DVD(字幕)] 7点(2009-04-21 15:04:58) (良:1票) |
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6.《ネタバレ》 実話に基づく作品、そしてあの「セブン」のデヴィッドフィンチャー監督とあってものすごく期待して鑑賞。ここでの評価はあまりよくないけど、私は退屈せずひきこまれて見ました。湖畔の殺人シーンがリアルすぎて、女の人の悲鳴とあの映像が忘れられない・・・ 【みゅうみゅう】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-10-11 18:56:57) (良:1票) |
《改行表示》 5.《ネタバレ》 他の方も仰るように、本当に長い。 途中、トイレ休憩を挟みながら鑑賞しました。 「事実は小説よりも奇なり」と言いますが、この作品は実話を元にしてあります。 事実を忠実に再現したと言うデビット監督ですが、あまりにもそこにこだわり過ぎたのかな? 物語としては、のめり込みにくかったです。 漫画家だったグレイスミスが、ここまでゾディアックにこだわったのかがお座なりになっているので、観ていて「?」になってしまいます。 その辺を掘り下げてくれたら、移入しやすかったと思うのですが・・・。 ドキドキしたのは、情報提供者の自宅を訪問するシーン。 容疑者が書いた文字だと思っていたのが、目の前の人物の書いた文字だった。 そして地下室。 誰もいないはずなのに、聞こえてくる床のきしみ音。 もしかして、この人物が犯人? 思わせぶりなシーンで、見ていて本当にドキドキしました。 ただ、くどいようですが、本当に長すぎる。 原作物の定めなんでしょうか・・・。 【ななのじ】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-02-17 20:41:58) (良:1票) |
4.実話を元にしているから仕方がないのかもしれないけど、ちょっと長い。フィンチャー作品だから期待して見過ぎちゃった。容疑者が二転三転して、中盤からおいていかれる感がある。。 もう一度言うけど長い。 【honeydew】さん [DVD(字幕)] 5点(2008-02-05 20:55:04) (良:1票) |
《改行表示》 3.原作もゾディアック事件の詳細も知らないまま観ました。158分の長丁場、正直集中力が途切れそうになりそうになりました。やはり・・・。これがもし小説ならわからなくなればページを読み返したり前の章に戻ったり出来るわけですが、DVDとはいえ途中巻き戻したりするのも野暮だしね・・・ということでそのまま最後まで鑑賞。ある程度の予備知識を得てから鑑賞すれば非常に面白い映画だと思います。秋の夜長にじっくりと越し落ち着けてね。 この映画のもう一つの見所は1968年から1991年まで変遷するサンフランシスコの風景や人々の風俗の丁寧な再現でしょうか。完全主義者のフィンチャーはさりげなくハイクオリティなVFXと贅沢な大道具小道具によってその時代を再現しています。映画美術に関心のある人にはそう言う面では158分は退屈しないと思います。 【ロイ・ニアリー】さん [DVD(吹替)] 7点(2007-11-12 09:40:48) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 なんだかんだ言っても3時間近くじっと見てしまいました。夜中の2時から5時まで。この時間に見ると面白く感じるんじゃないんでしょうか。ギレンホールの「ウッディ」のようなくりくりの目と表情に釘付けでした。暗号を解くとか犯人は誰だとかそれぞれの人生はどうだとか、そんなのは別にどうでもよくて、ギレンホール演ずるグレイスミスが満足する瞬間を見たくて、見続ける事が出来る映画です。だから、最後の方でお店に顔を見に行ったときのグレイスミスがこの映画の全てだと思った。 ・・・・・クレア・デュパルちょっとだったけど、やっぱりいい!。 【蝉丸】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-11-11 05:22:44) (良:1票) |
《改行表示》 1.《ネタバレ》 全米を揺るがした劇場型殺人を、仰々しい抑揚は排除してドキュメンタリータッチで質素に確実に描き出す。 映画ファンとしては、本当にこれがあの「セブン」のデヴィッド・フィンチャーの映画なのかという印象をまず受けるだろう。これまでの監督作品でことごとく見せつけてきた刺激的な映像センスは影を潜め、代わりにリアルな緊張感に満ちた説得力のある映像美が全編に繰り広げられる。 「ゾディアック」という今尚「謎」に包まれたままの殺人犯の「本性」を暴き出そうと、、主人公の新聞イラストレーターは、事件の深みへどんどん踏み込んでいく。 この映画のストーリーがユニークなのは、実在の「謎」に対する真相の“導き”を主題とはせず、「ゾディアック」という殺人犯を追うあまり、その悪魔的な魅力に支配され、混沌と混乱に陥っていく主人公たちの「運命」を主題としているところだ。 「謎」を追求するあまり、本末転倒していく人間たちの愚かさこそ、この映画の核心と言えるだろう。 と、おおむね“ベタボメ”と言いたいところなのだが、実はそうではない。 「未解決の殺人事件」を描いた映画といえば、韓国映画の傑作「殺人の追憶」が記憶に新しいところだ。 故にどうしても比較してしまうが、「殺人の追憶」が素晴らしいのは、事件を追う刑事たちの“熱い人間味”に尽きる。それに対し、今作は主人公をはじめとするキャラクターに観客を引き付けるキャラクター性が無さ過ぎる。 最終的に「真犯人」を生半可に結論付けてしまっているラストも、「謎」に対する余韻と絶妙な哀愁を残してみせた「殺人の追憶」とは雲泥の差を感じる。 比較対照となる映画が無ければ、完成度の高い良い映画だという印象を持ったかもしれないが、もう少しのところで“のめり込められない”のは残念。 【鉄腕麗人】さん [映画館(字幕)] 6点(2007-06-20 00:16:43) (良:1票) |