1.ダルトン・トランボについては既に多くの方が語っておられるので私ごときに付け足せるものは何もない。この映画について言えることは、とにかく他のどんな「傑作」と比べても、一度は必ず観ておくべき作品であること。私は25年前にこれを観た。そして、それから25年間、この映画に出会えたことを感謝しない日はないし、もう1度この映画を観たいと思ったこともない。2度3度、繰り返してこの映画を観られる人は、人なみ外れた強靭な精神力の持ち主だろう。少なくとも私自身に関しては、もう2度とこの映画を直視できる勇気がない。それほどこの映画の放つメッセージは痛烈であり、はっきりとした胸の「痛み」として突き刺さって来る。これまで何度も、イヤというほど「衝撃の」という宣伝文句を聞かされて来たが、どの衝撃もこの映画に比べれば蚊に刺された程度のものでしかない。阪神淡路大震災の死者が6千人。911テロの犠牲者が3千人。その1人1人に家族があり思い出や将来の夢があり、顔を見たかったわが子や孫があり、あらゆる人生にかけがえのない重さがあることを、この映画は必死で私たちに訴えかけて来る。数多くの作品を残す機会に恵まれなかったトランボは、残り少ない人生の中でそれほど沢山の映画が作れるわけではないことを承知の上でこの作品を撮った。彼がその人生の中で語りたかったことを全て、余すことなく描き切りたかったその情熱が、この映画には凝縮された怨念のようにきっちりと封じ込まれている。ジョニーは銃を取った。それが別の時代、別の国なら、あなたも私もみんな、顔もない、名前もない、黙って死んで行くしかない「死者ン千人」の1人だったかも知れない。【追記】かくして25年間1度もリピートしていないので記憶が定かでないのですが、最後のモールス信号は「SOS HELP ME」ではなかったですか?字幕ではそう出ていたように思うのですが。実際には「KILL ME」だったとか? 【anemone】さん 10点(2003-12-14 18:49:13) (良:1票) |