《改行表示》 6.《ネタバレ》 主人公エリスは架空の人物でも、映画の中には結構史実が取り入れられているらしい。だから単なるスパイもの、レジスタンス映画ではなく、中身が相当濃いし強烈。 たとえばその一つ、身分を隠すのに髪を金髪に染めることは往々にあっても、敵将校に取り入るためアンダーヘアまで染める、しかもそれを映画で堂々と見せるのには驚きである。その他、残酷な拷問や頭が砕ける、糞尿を浴びせるなど見るに堪えないシーンも数多くあり、強烈というか容赦ない。これらはナチスが悪でレジスタンスが正義という構造ではなく、戦争自体が醜く汚いものであることを訴えているようにも思う。 ナチスドイツに潜入したエリスの使命は体当たりそのものであるが、映画のカリス・ファン・ハウテンもまた主演女優賞ものの演技と言わざるを得ない。 【ESPERANZA】さん [DVD(字幕)] 8点(2012-03-24 07:07:58) (良:1票) |
5.シリアスな作品と思いきや、終盤、あえて支離滅裂路線を進み始める、意外さと面白さ。物語の先がどうなるかわからないサスペンス作品が、やがて、映画自体がどうなってしまうかわからない、という緊張感へ。まるで主人公は、現代(映画冒頭の時代)へと「逃げ」帰ったかのよう。不思議な作品でした。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-05-09 17:38:17) (良:1票) |
《改行表示》 4. ハリウッドの制約を受けずに作ったバーホーベン監督、「ショーガール」や「インビジブル」は、よほど制約を受けていたのだろう…。 世界で成功した外国人(日本人は特に…)は、自国に帰ってくると必ずといっていいほど自分だけの世界に浸っていく傾向にあるが、本作を見る限り、バーホーベンはしっかりと観客のことを考えているのがわかる。 話しは淡々と進んでいくが、2分に1度は必ず何かが起こる。長々と続く俳優のセリフなんか全くない。どこから観たとしてもスリルとサスペンスが描かれている。 日本の映画は、この映画を教科書にして本物の映画を作ってほしい。 しかし、この辺の国で作られる映画って、半分以上がナチス物に思えてしまうのは、私の偏見だろうか…? (笑) 【クロエ】さん [DVD(吹替)] 8点(2009-02-03 03:38:23) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 ナチだろうが、反ナチだろうが、立場が変われば人間のやることなんて同じなんだろうな。悲しみは消えても、怒りは消えないだろうし、復讐の連鎖は永遠に続くんだろうし。そういう憤怒や憎しみの感情に保身や欲が折り重なって時を過ごしていくのが人間であって、双方のベクトルが同じなら自己完結するんだろうけど、ベクトルが逆だとこれまた厄介。それでもやり過ごすのが人間なんだろうな。何をされようが、憤怒や憎しみもなく、保身も欲も無く、そんな聖人はいるわけないんだが(そういう現世が嫌で?最後に兵士が牧師になっちゃうのはオモシロイオチだと思う)、「やっぱり人間ってこうなのかな?」と人間の性を見せ付けられて、益々人間が恐ろしくなり、人間嫌いになりそうで、かなり憂鬱になるんだが、作品としてはよく出来てるし、見応えがあると思う。 【東京50km圏道路地図】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2008-02-09 16:55:20) (良:1票) |
2.レジスタンスものは、近年の戦争映画の中では少数派とも言えるが、本作ではむしろ一人のユダヤ人女性の戦争体験による、波乱に満ちた数奇な運命を中心に、戦争というものがいかに残酷で、人間の運命を狂わしていくかを描いたものである。しかも監督がP・ヴァーホーヴェンという事もあり、展開は必ずしもセオリー通りとはならず、かなりアクの強い作品に仕上がっている。ナチスとレジスタンスという明確な対立の構図の中を、女スパイとして綱渡りをするのも、肉親を虐殺された事による私憤の為であり、映画としては常識的に、彼女の復讐劇が描かれていく筈のものが、そうはならないのは、従来から既成概念に捉われず、自由闊達な視点で創作するヴァーホーヴェンの一つの特徴と言えるだろう。そういう意味においては、中盤の見せ場である仲間の救出劇や、ムンツェとのラブ・ロマンスにしても、敗北感や虚無感ばかりが覆い尽くしている。つまりは本当の意味で、溜飲を下げる要素は何一つ無いと言ってもよく、波乱万丈の大娯楽作品としての味わいとは程遠いのである。しかしながら、ただひたすら荒っぽい筋立てで、まったく先の読めないまま、目まぐるしく展開していく事と、彼の作品の特徴でもある、残虐性や露骨さ、或いは猥雑さ(中でも美女を裸にして汚物まみれにするという悪趣味の極み!)等が渾然一体となって、本作を魅力的なものにしている事も事実である。全編、既成の善悪の判断の無意味さと、欲望に駆られた人間の愚かしさが痛烈に炙り出されていくが、やがて平和を迎えた時に、かつて、仇の男と毎夜の如く情痴を繰り返していた、もう一人の女性と再会した事から物語が回想されていくのも、何やら皮肉な運命を感じさせる。女たちの生きる事への貪欲さとしたたかさに、改めて人生を教えられた思いだ。注文を付けるとすれば、何の前触れも無く唐突に出現した感のある、肝心の“ブラックブック”の(まるで葵の印籠のように)有無を言わせぬその信憑性と齎す意味に 、あまり説得力を感じない点だ。 【ドラえもん】さん [映画館(字幕)] 8点(2007-07-29 15:53:51) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 「バベル」でも陰部露出だの排泄行為が生々しい形で出てくるのだけど、「ブラックブック」でのそれは、陰毛染め(その後の「しみる~」がヤバい)にせよあの○○ぶっかけにせよことごとくが(本当らしさという部分もあるだろうが)フィクション発動装置であり、また同時に女の一代記として用意された厳粛な儀式と言っていい。カリス・ファン・ハウテンの表情は、最後に1回泣き崩れる以外は殆ど変わらず(彼女を泣き崩させた相手はなんと、スパイとして潜入した先のナチスのお偉いさん)、悲劇が蓄積する度にむしろ官能的な姿を形成していく。歴史に忠実な映画ではなく、映画に忠実な歴史に生きる彼女の受動性(要するにバーホーベンやりたい放題)がこの映画に見事な亀裂を与えていると思う。映画映画の最初とラストでイスラエルが舞台のシーンがあるが、こんな不安定な場所で、当時の苦しい生活を回顧しただけで終わるはずがないと思ったら、やはり鳥肌モノのラストが・・・「悲しみに終わりはないの?」。 【Qfwfq】さん [映画館(字幕)] 8点(2007-07-10 18:20:44) (良:1票) |