8.《ネタバレ》 映画は大好きだったけど、この当時邦画って殆ど観てなかったんです。何でしょう、青臭い子供向けのアイドル映画か、カビ臭い年配の人が楽しむものって感じで、アニメ以外に私に合う邦画作品って無いと思ってました。 そんな中登場したのがこのマルサの女。子供向けでも年配向けでもない、とてもスタイリッシュな作風。そのまま当時のバブル期日本を舞台としたリアリティ。脱税という扱っているテーマの重厚さと、それを面白可笑しく、決して悪ノリしない絶妙なコメディタッチな味付け。こんな邦画もあるんだ!!って、本当に目からウロコでした。以降、邦画は殆ど観ないのはそのまんまだったけど、伊丹映画だけは別格として観てましたね。
税務署(&マルサ)と脱税の戦いって、とっても地味なテーマだと思うけど、ヤクザは出てくるけど銃撃戦とか度を越したアクションを入れること無く、しっかりと地味なまま、あくまでリアル路線で押し通した手腕が見事。序盤しっかり港町税務署の日常業務を入れて、身近な脱税のあるあるネタをたっぷり入れて、いわゆるハウツーものとして、観る人の興味を惹きつけるのに半分の時間を割いている。だって亮子がマルサ入るの、映画始まって1時間後だよ?タイトル『マルサの女』なのに。この思い切ったバランスの取り方がもう、伊丹監督すごい。
そして板倉亮子のキャラクター。おかっぱ頭にそばかす。レイバンのサングラスから除く眼光の鋭さ。頭の回転が速い切れ者税務署員。一方寝癖で出勤するシングルマザーで、残業しながら5歳の大ちゃんに電子レンジの使い方を教える、完璧じゃない一面も覗かせる。普通の税務署のベテランおばさんを、総じてとても魅力的な女性に魅せる手腕が素晴らしい。 彼女だけでない、権藤の足が悪い理由は描かれないけど、杖突いて歩く印象的な姿。憎めない悪党のお手本のような人物像が素敵。「俺たち、会う度におめでとう言い合ってるな」バーで亮子とサシ飲みするところの人間味と強敵感、ほんのり生まれる男女の感情。この時のハンカチの、結末での使い方がもう、カッコいいこと。あの印象的なテーマソングと昭和末期の風景と夕焼けの美しさが、何年経っても忘れられない。
花村もマルサの管理課長も、マルサのジャック・ニコルソンも、働いてる大人の男って感じがとっても素敵。それとちょい役でもクセ強めな登場人物が揃ってる。私は特に宝くじの男の高い声のギャップと、ブルブルって首を振る銀行の課長が好き。 私は邦画の、いわゆる“濡れ場”が嫌いだったんだけど、この映画のはどれも笑える。看護婦の乳首を必死に吸うジジイ。「女はここに隠すんだー!」オバサンのM字開脚。スリップ姿で屋根を這うオバサン。「ダメよぉ~、ダぁ~んメ!!」。極め付きはケツに挟まったティッシュ。 『邦画の濡れ場なんて、笑えば良いんだよ』って、伊丹作品が教えてくれた。ありがとう伊丹監督! 【K&K】さん [地上波(邦画)] 10点(2024-01-13 14:28:28) (良:1票) |
7.《ネタバレ》 随分前から言われていることだが、新書のタイトルというのは、実にうまく作られているもので、そういうタイトルにつられて、時々興味のない分野の本を読むことがある。全く知らなかった世界の話や、気にも止めていない普通の出来事の意味を知る事となり、たいそう勉強になる。いや、勉強というより知的好奇心が満たされるという感じか。
この映画の(というか、この人の映画の)魅力というのはつまり、そういう部分にある。有職者の8割が被雇用者だという日本では、この分野に詳しい人はそうそういない。客数を少なく見せる手口、印を付けた札(これ、違法な気もするが)を使った不正の追求、当たりくじを売りに来る奴など、税の攻防にまつわる話がどれも面白い。漠然と「敵」だと思っていた税務署・国税関係者などと、脱税者を巡る闘いは、もちろんスパイ物のような派手さはないが、地に足の着いた頭脳戦でワクワクさせられる。 「戦」とはいっても当然、命の遣り取りをするわけでもないうえ、「査察が入って潰れた会社はない」そうなので、結構ゲーム的な感覚で安心して見ていられるのも良い。
それだからこそ、権堂と板倉の友情に似た、たぶん「好敵手」というのが一番似合うのだろう、その関係にグッとくる。 【Tolbie】さん [DVD(邦画)] 9点(2013-08-21 00:43:13) (良:1票) |
6.伊丹監督の一番の業績は「情報映画」って新しいジャンルを作ったこと。一斉査察がドキドキさせたけど、調査の部分が興味深い。シーツの洗濯数から調べていったりする。それらの情報が大きいうねりを作ってくれないところがちょっと不満だけど、こういう題材を見つけてくる才能は抜きん出ていた、もっと大手会社の製作部に見習ってもらいたかった。ただせっかくドライに行ってんのに、山崎と宮本を人情で繋げようとしたりするのが分からない。この人はひどく自分の意見が映画に出ちゃうのを怖れているみたいなところがあって、ドライにいくか、さもなければ紋切り型でいくかってことになる。でもこういう「社会」を扱った作品だと、やはり自分の立場ってのがどうしても反映してしまう方が本当じゃないだろか。どっちかの側につけっていうんじゃなくて、両者の執念がキリキリと詰め寄ってるところをヒョイとかわすような視点があってもいいんじゃないか、などと思ったものでした。山崎努の役名が、『天国と地獄』でさかんに電話を掛けていた相手の「ゴンドウさん」というジョーク。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 7点(2010-08-28 09:59:58) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 この作品、公開当時、学生だった私は学校サボってガラガラの映画館で観たのを覚えてます。しょっぱな看護婦さんのおっぱいを吸っているおじいちゃんが映し出されるのを見て、良いなあ!羨ましいなあ!なんてアホなことを思いつつ観てました。そんな中で脱税する者、それを捕まえる者、脱税の手口を徹底的に見せてくれていて楽しむことも出来た。この映画が公開された年、1987年ていうと確か世の中はバブル最盛期であったはず。正しくこの時代に撮られたことが作品全体に物凄いリアリティを感じる。その一方で映画的な興奮というと果たして如何なものかと?いう不満も残る。そうは言うものの、面白いことは面白いので低い点数は付けられない。伊丹十三というと俳優としてもなかなかのもので大変癖があってその癖が苦手な人はとことん苦手かもしれないが、私は結構好きである。監督としての伊丹十三よりも俳優としての伊丹十三の方が私個人としては好きであるが、監督としての才能、眼の付け所もその時代にきんと対応していてなかなかのものである。そんな伊丹十三というこの監督としても才能のある一人の死は大変な不幸であり、惜しまれる。今も生きていたら間違いなく今の時代にあった作品を次から次へと発表してくれることであろう! 【青観】さん [映画館(邦画)] 7点(2008-08-25 22:38:51) (良:1票) |
4.伊丹監督作品の中でこの作品が私にとって最高です。知恵と度胸の板倉亮子への憧れと、査察部の面々の一丸となっての仕事振りを観た時の羨ましさは、当時も今も変わりありません。受けて立つ権藤との攻防は手に汗握りました。この作品を作り上げた方々の一丸となっての仕事振りにも敬意を表します。 |
3.普通に面白い娯楽映画。好きなので点数は甘いが、見た後に何か残るかというとそうでもない。一般に余り知られていない組織の内部暴露的な手法というのは、この作品が始まりだろうか???伊丹十三が生きてたら、最近の官僚腐敗に鉄槌を下すような作品を撮ってくれそうだけど、江角マキコを主演に社会保険庁を描いた作品なんてどうでしょう。 【もとや】さん 8点(2004-03-29 00:15:36) (笑:1票) |
2.「女はココに隠すんじゃー。ココを見ろ~!」この映画で一番思い出すのはこのシーンです。 【あずき】さん 8点(2004-01-01 10:19:00) (笑:1票) |
1.悪くはないけど、やっぱり好きになれない。良いセリフやシーンがないではないけど、映画的でない。情景がなく、余韻がない。 【poppo】さん 5点(2003-05-31 18:38:34) (良:1票) |