4.《ネタバレ》 ウィリアム・フリードキンの映画で唯一面白いと思えたのが、皮肉にも世間での評価が低いクルーゾー版「恐怖の報酬」だったとは。 いや、この作品こそ俺が求めていたウィリアム・フリードキンの映画だったのだろう。
それに、俺はクルーゾー版の「恐怖の報酬」におけるラストに大きな不満があった。 最初から最後まで退屈する暇も無いくらい最高の映画だったのに、あの幕引きだけは納得いかなかった。
あとどうでもいいんだけどさ、クルーゾー版のピチピチタンクトップにマフラーだけの格好が好きじゃない。熱いのは解るが、上半身まっぱの方が涼しいよな?中途半端に肌にくっついてて気持ち悪くないの?何て事を思ってしまった。 モチロン「悪魔のような女」は文句なしの大傑作です。
登場人物の掘り下げはクルーゾー版は人間ドラマしての面白さがあったし、フリードキン版はドキュメンタリー風の味わい。 他のフリードキン作品は、そのリアルタッチが真面目すぎてちょっと退屈に感じてしまった。けど、今回はダルむ事無く終始退屈する事が出来なかったんだ。
淡々とポンコツのトラックをチェーンナップする描写。爆弾を運ぶトラックは、下手をすれば運び屋の棺桶となる。その棺桶になるかも知れないトラックを黙々と整備していく様子に痺れる。 命にかえてもやり遂げなきゃならない事がある。金のため、夢のために。 そこにはジャン=ピエール・メルヴィル作品のようなプロフェッショナル集団しかいない。
嵐の中の渡橋シーンのスリル。橋が崩れ落ちるか落ちないか、渡り切れるのか渡りきれないのか。嵐のように吹きすさぶ風と猛烈な雨が、彼らの集中力や体力も奪っていく。、
クルーゾーは徹底的に渇いた砂、風、重油のねっとりした緊張。 フリードキンは湿り気というか、肥沃なジャングルや雨風、流れる血、濡れた刃が心臓を刺すような怖さ。正にクルーゾー版とは水と油。
例えば、中盤の渇いたニトログリセリンから流れる湿った部分。濡れた部分が「パンッ」と爆発する瞬間。クルーゾー版では固形とか液体といった部分にまで立ち入らなかった。 徹底的に渇ききった環境で液状なのは容器に入れられたニトログリセリンであり、重油であり、それに恐怖して流される汗だけ。それがクルーゾーの映画。 一方、クルーゾー版は散々濡れまくった後に渇いた大地を駆け抜ける。
最後の最後、クルーゾー版とは違う結末に俺は惹かれる。 未だに追われる不安と行く宛も定まらない者。受け取った“手紙”がその者の行き先を決める。そして現れる“追う者”たち。 主人公の運命は・・・暗示される未来は生か死か。そんな感じのラストが気に入っている。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-06-07 22:36:22) (良:3票)(笑:1票) |
3.《ネタバレ》 この度2018年11月にデジタルリマスター化した【オリジナル完全版:121分】がスクリーンで上映されたので早速行ってきましたよ。私は監督フリードキンの、くどさというのか余計なショット・演出の羅列が好みでないので「フレンチ・コネクション」も「エクソシスト」も正直苦手。但この作品についてはそのくどさがまさにジャストフィットで、彼の最高傑作という世評もわからなくはない。特に物語佳境の有名な「ブランブランな吊り橋をニトロ積んだトラックでわたる」あのシーンはもう笑うしかない。オリジナルであるクルーゾーの「恐怖の報酬(53年)」の方が好みなのでそれとの差別化、という事でこのレビュー点数にしたが、意外と楽しめたという意味ではもう+1点でもいいくらい。印象的だったのは3つ。1. 53年版オリジナルにおけるラストの「あちゃぁ~」的流れよりもこのリメイク版のラストの方がより良い、という意見には100%同意。2. 原題が53年オリジナルは「THE WAGES OF FEAR(LE SALAIRE DE LA PEUR)」=文字通り直訳/恐怖の報酬なのだがこのリメイクは「SORCERER(ソーサラー)」=魔術師/呪術師なんですよね。ジャングルの熱/呪術に演者・観客も呑みこまれてゆくのか。3. 音楽。これこそまさに「ダサかっこいい」。53年オリジナルを先に見てからの方がいいかも。 【Nbu2】さん [映画館(字幕)] 7点(2018-11-24 19:56:12) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 オリジナルに比べるとリメイクは評価が落ちるのが通り相場ですね。本作も大方の評価はそのようですが、私は大変おもしろいと思いました。多分トラックの吹っ飛び方が、こちらの方が哀れに思われたからと思います。フリードキンの乾いた描き方も好みです。ですから、オリジナルより、本作の方に高い点をつけます。いつか「その時が来る」とわかっていながらも、ハラハラと緊張感が持続する演出はさすがです。 【ジャッカルの目】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2007-04-22 08:27:01) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 とても思い出深い作品。”タワーリング”で映画大好きになったわたしが 次に観にいった劇場作品がこれ。お母さんと一緒。 子供心にまあまあだと思う。しかし”タワーリング”と比べてだから超がっかりした記憶が。もちろん後年ビデオ買う。これがイイ!実はこども心に忘れられなかったのが、 映画が終わってからのエンドロール(っていうのか?) シャイダーを正面からズームアップしていき、最後に”アイリメンバーエイプリル”流れるなか、ヘリコプターが緑のジャングルをスロウに飛んで行くのだ。確かにそうだったはずだ。子供心にもせつなくてロマンティックだった。しかし、ビデオではその一番観たかった最高のラストシーンがないのだ! はるか南米の奥地の、場末も場末で落ちぶれ、疲れ果て果てた主人公は(シャイダー!)ラスト、場末のバーでボロ雑巾のような掃除婦おばあちゃんに、古いジャズをバックにいっしょにダンスを踊ってくれと言う。渋い!さびしい!往年の名作の存在を抜きに、この映画は最高。関係なし。とにかくキャスト、シチュエイション最高!渋すぎる。観ればわかる。アミドゥ!アルレティエリ!(アルレティエリは関係ないが)名前からして良い。舞台が、誰からも忘れ去られた南米奥地の僻地ということも、この映画自体の知名度というか存在の薄さもあいまって、非常にせつない感じで良い。熱帯奥地に、人知れず降る雨。”マナグア!””そんな処に行けるはずもない”うーん!せつない。 マックイーン、クインに並ぶ私の御贔屓俳優シャイダーの代表作。 【男ザンパノ】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-08-10 19:08:12) (良:1票) |