《改行表示》 7.《ネタバレ》 密告が制度化された社会は、不自然な統制の証し。国家保安局の食堂の簡素な昼食は、経済状況のバロメーター。壁が崩れる前の東ドイツ事情は知らなかったので勉強になりました。 主人公の変心とその動機がテーマです。上司が、ほとんどシロと言っていた劇作家を見張れと言う。大臣の欲望を担ぐためである。上司と言っても、元は同級生。階級の差は世渡り能力の差。主人公は生き残っている方だが、勝ち組でもない。社会主義の理想を信じ、淡々と仕事をこなす。その生真面目な性格が、体制に利用されているようにも見える。たぶん、本人も分かってやっている。彼に出来ることは、それしかないのだから。誰もいない家へ帰り、党が流すつまらないニュースを見る毎日。たまに商売女を抱く。 転機は劇作家の盗聴任務。劇作家は主人公がファンになった女優と同棲している。奇しくも、二人の人物を盗聴することになった。大臣から肉体関係を強要される女優の苦悩を知る。女優の実情を察知しても口に出せない劇作家の不憫に共感する。二人分の表面と内面の相克が、当人たち以上に主人公を刺激する。さらに、権力の濫用と腐敗に加担している自分を自覚する。 彼は転向して体制に反抗した訳ではない。社会主義の理想を失ってはいなかった。ただ、秤にかけると優先すべきものが見えたのだと思う。人間性という秤である。 善き人(劇作家とそのパートナー)のためのソナタ(主人公の孤軍奮闘)、と解釈すれば本作の内容を表していますが、もう少し分かりやすい邦題でも良かったんじゃないかと思います。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-01-09 02:41:23) (良:2票) |
6.あの時代、あの社会情勢を舞台としているのに、非常に静かな映画でした。職務に忠実なヴィースラーという男が変わっていくその過程が淡々と描かれています。「より善く生きる」その術を見失っていたのは彼もそうですし、体制崩壊数年前という設定から、社会全体がゆらゆらと揺れていたのでしょうね。わりとありがちな物語だし、彼の気持ちが変わる要因にもうひとつ力が欲しいところでしたが、静かに目覚める男のラストの瞳はなかなか爽やかな色をしていました。ウルリッヒ・ミューエの名演につきると思います。 【のはら】さん [DVD(字幕)] 7点(2007-11-04 18:29:45) (良:2票) |
《改行表示》 5.《ネタバレ》 ある小説家がエッセイで絶賛(ついでにネタバレもw)してたので、感動する気満々、泣く気満々で観たのですが、少し期待ハズレでした。 まず女優の運命が哀し過ぎて。ファンだなんだというのが伏線になると思って期待して観てたのが裏切られたような気持ちでがっかりしました。 あと東ドイツひいては社会主義政権の問題が、単なる個人レベルでの腐敗、権力乱用に矮小化されてるのももの足りませんでした。問題の詩もすごく情緒的でしたし。もっと全体主義国家の本質的な非人間性を描いて欲しかった。 ( むしろ証拠が無ければ逮捕しないなんて、スターリン統治下のソ連や現中国政権に比べたら随分紳士的、良心てきだなと) 悪い映画ではないんですが少し期待が大きすぎました。 【rhforever】さん [DVD(字幕)] 7点(2016-07-29 19:48:02) (良:1票) |
《改行表示》 4.《ネタバレ》 いい映画ではあるが、他のレビューにある通り主人公の心変わりした理由がはっきり分からなかった。 ソナタを聴いたから?女優を好きになったから?国家の大臣が汚れていることもある? 複合要素ではあると思うがそこははっきりとストーリーに組み込むべきところだと思う。 その部分はおいておき、心変わりした主人公が善き人になり、自分の良心に従う場面は好き。そして最後のシーンは、いい終わり方でちょいと感動する。 【MS】さん [DVD(吹替)] 7点(2011-03-22 16:59:43) (良:1票) |
3.真摯にきっちりと作られているものの、表現としては十分でないところがあってドイツ映画らしく生硬かもしれませんが、何を描きたかったかは伝わってきます。 最後もドライマンが自分のために大きな犠牲を払ったヴィースラーにもっと報いてあげてほしい気はしましたけれども、相手の誇りを傷つけずに自分にできる最上の方法を選んだのでしょうし、相手もまたその気持ちを受け取った。 一度も言葉を交わしたことのない人間同士の友情の表現として簡潔で清しいものに感じられます。 クリスタの魅力が薄いのは「男の映画」だからでしょうか。 彼女の女優業への情熱は恋人ドライマンよりヴィースラーの方が理解していたのでしょうね。 他人のために得にもならないことをする人は、このような特殊な状況下でなくとも世の中にいてほしい気がします。 (ドライマン役のコッホは「飛ぶ教室」の禁煙さんでしたが、ゲデックは「マーサ」とはわからないくらいイメージが違いました) 【レイン】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-02-17 00:30:05) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 なかなかレベルの高い、演出でした..物語の方は、最後の彼女の裏切り..辺りが、しっくりこなかったので、今ひとつ..もう少し脚本を何とかしてほしかったですね..残念... 【コナンが一番】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-02-12 16:48:59) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 善い映画を観た。他の方も指摘されている通り、主人公の心の移り変わりがうまく掴めなかったのが難点か。拷問同然の尋問方法を誇らしげに語るバリバリの社会主義者が、なぜ自らの危険も顧みずに劇作家を助けようとしたのか。そこらへんをもう少し丁寧に描写してくれたら良かったのだが。舞台女優が恋人をあっさり密告するところも「アレ?」と思った(その後に衝撃的なシーンが待っているのだが)。ラストは静かな余韻を残し、秀逸。 【フライボーイ】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-02-08 18:43:50) (良:1票) |