《改行表示》 7.《ネタバレ》 友人と鑑賞。 「妖怪は嘘をつかねぇ。」私の心にグサリときた台詞だ。 昨今のNHK教育でも見られない地味で素朴なキャラ。かわいいというより不気味さが先にたつクゥ。見始めるとそんなことはまったく気にならなくなる。丁寧な表現とほのぼのとした笑いに素直に顔が綻ぶ。そのぶん、中盤から後半の流れが辛くなってくる。思わず観ていて目をそむけたくなった。それは表現が過激なためではなく『人間はこういう生き物だ』と別の生き物達の目から淡々と見せ付けられるから。この映画に説教はない、批判もない。人間批判をしているわけでも妖怪賛歌でもない。ある少年とクゥという河童がかけがえのない一夏を過ごした思い出の映画だ。 クゥを守りきれなかった上原一家に憤る人もいたのではなかろうか。けれど上原一家はあくまでどこにでもある平凡な一般家庭。仮に別の子供の手によってクゥが復活したとしても、結末は変わらないものになったと思う。クゥのような、人間ではない小さな生き物が日本のどこかで静かに暮らしている事を願ってやまない。 余談だが、新天地で川の神様に挨拶をしてはいるクゥにはっとさせられた。この映画を観て以来、私は見知らぬ土地に出向く時は心の中で「お邪魔します」と一礼するようになった。 【どぶん子】さん [映画館(邦画)] 7点(2009-12-05 23:49:32) (良:2票) |
6.《ネタバレ》 原恵一作品という事でどうしても期待してしまいますが、良くも悪くもマトモな佳作アニメ止まりでした。前半の、上原家内や康一の生活範囲内だけで描かれる世界は楽しく弾んでいてちょっとした描写にまで凝っていて感心するものの、マスコミが絡み始めてからの展開になると、どんどんと作画は崩れるし、演出の間が悪くなってゆくし、展開が間延びするしで、雑な印象になってしまうのが残念です。物語の構造が80年代に濫造された『E.T.』フォーマットものの枠内に納まってしまっているのも意外性に欠けてしまいますし。それに多分、今回も宮崎アニメや『クレしん』映画と同様、脚本なしでコンテから直接作業に入っているのではないかと思われますが、進行がいびつになってしまっている気がして、見る前に2時間18分って大丈夫な尺なのかなぁ?と思ったのですが、結局のところやはり大丈夫じゃなかったなぁ、と。あと20分削れたでしょう。後半の演出の間の悪さと、デザインも描き方も違う作品なのに『クレしん』的作画になってしまう状態に、ああ、途中で力尽きたんだなぁ、みたいな。疎外されてゆくものの気持ちを大切に描いていた筈なのに、最後の方でキャラに唐突にテーマとして喋らせてしまったり、自然を大切にしてない人間がいかん!と説教臭くなってしまうのもどうかと(そもそもエコロジー映画は資源を大量消費して成立するアニメーション映画という形式との矛盾を抱えてるのですよね・・・)。でもクゥは可愛かったし、ワクワクできたし面白かったしで、期待したほどではないけれど・・・という感じかな。 【あにやん🌈】さん [映画館(邦画)] 7点(2007-08-05 17:29:09) (良:2票) |
5.《ネタバレ》 細かい理屈をガタガタ言う気がなくなるような、いい映画だった。映画の中でセルフツッコミしてるけど、「なんで分かるの?DNA検査でもしたの?」「エイリアンと同じで病原菌とか持ってるじゃないの?」なんて言うのがいかに無粋か・・・。普段映画を観て、そういうツッコミを自分もよく入れてしまうので、ちょっと反省。アニメだからただの画ではあるんだけど、頻繁に相撲をとったりして、文字通り「ふれあい」が描かれていて良かった。実写映画以上に身体性や「ふれあい」にこだわっているように感じられた。専門的なことは分からないけど、キャラ同士が触れ合うアニメーションって高度なテクなんじゃなかろうか。そういう意味ではこの絵が雑だとはとても思えない。そして、こういう感想自体も野暮な気がしてくる(笑)。座敷童やキジムナーの、どーんと余裕のある生き方も、なんだか救われる(そして笑える)。もしまた人間社会に迷い込んで困っている妖怪があらわれても、座敷童やキジムナーのように、クゥはしっかりそいつを助けてやれる河童になっているだろうな。「こんな時は相撲でもとるか!」とか言ったりして。 犬のオッサンが死んでしまう場面があるが、その後の家庭のシーンでも常にオッサンの存在が感じられるようになっている。犬小屋は片付けずにそのままにしているし、記念写真を撮る場面でも、しっかりオッサンの写真を添えている。決してご都合主義やお涙頂戴で殺したわけじゃないし、ないがしろにしてるわけじゃないと思う。クゥが別れを経験した後に、父親に「オレにも人間の友達ができたよ」と報告する姿にもカッパ泣き!映画のすべてが繋がる最高のラストシーン。たとえ離れていても、死んでしまっていても、仲間や家族の絆は繋がっている。 【ゆうろう】さん [DVD(邦画)] 8点(2013-06-26 02:37:45) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 「構想○○年」とうたい文句にしている映画はあまり面白くない印象があり、この映画も原恵一監督が20年ほど前からあたためていた企画を実現させた作品と聞いていたので、見たい反面、不安もあり、なかなか手が出ずにいたが、ようやく見た。ほのぼのした前半からマスコミがクゥのことを嗅ぎつける中盤あたりからシリアスになり、やがてそれが広まって報道陣が上原家の前に陣取る様子はものすごくリアルで、テレビの取材に興奮する康一の描写なども実際こういうことに遭遇すると仕方がないよねという感じでものすごくリアリティがある。ストーリーはこの後半からつらい方向にいき、自分がいることで上原家に迷惑をかけていると自責の念に駆られるクゥに感情移入し、虐待を受けていたオッサンの過去もついついウルっときてしまった。テレビに出演したクゥが父親の腕を見せられるところや、クゥを守ろうとしたオッサンが跳ねられて死んでしまうシーン、それに東京タワーのシーンはそのときのクゥの気持ちが痛いほど分かり、見ていて本当に泣けてくる。とくにオッサンが死ぬシーンはそれまでのクゥとの関係や、これまでのオッサンの生き様を考えると切なくてたまらない。全体的にはややいろいろ詰め込みすぎてしまった感はあるが、この映画の主軸はひとりぼっちになってしまった河童と現代の家族の交流を描いたひと夏の物語であり、登場するのはごく普通の平凡な家庭。中盤以降にある動物の目線から見ると人間社会はこうだというやや批判めいた描写が強烈で、マスコミや野次馬の描き方なども露骨ではあるが、でも決してそれが後半の主題になることはなく、クゥと上原家、クゥと父親、それに康一と菊池の関係がずっと主題として描かれている。おそらく「クレヨンしんちゃん」映画シリーズと同じく家族や親子、友情を描くことに原監督のこの映画に対するテーマというか、そういうものがあるような気がする。アニメの絵柄が最新のデジタルでなく、地味なアナログのような絵柄なのは原監督の意向かもしれないが、絵柄が素朴な分、映像もなんとなく優しさが感じられるものになっているのもいい。どこかで原監督は松竹大船調を受け継ぐ監督だと聞いたことがあるけど、それもよく分かる。それにしても最近殺伐とした映画ばかり見ていたような気がするのでこういうあたたかい映画を久しぶりに見ると、やっぱりこういう映画っていいなあと思える。見る前の不安はすっかり消え去り、見終わったあと、素直にこの映画を見てよかったと思えたし、原監督らしい佳作だったと思う。これからも原監督の作品はできる限りずっと見ていこう。 【イニシャルK】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2011-05-29 16:12:15) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 クゥを無力な小動物ではなく、怪物(妖怪)として描いたところが、本作のポイントと考えます。しかしクゥの“危さ”を、主人公家族は認識していません。観客も同様。拾ってきた犬と似たような感覚です。この無防備さ、無自覚ぶりが、実に人間らしいと感じました。相撲で妹を放り投げたり、カメラを念力で壊したり、その恐るべき能力はきちんと示されています。でもその事実を誰も本気で受け止めていない。だからリスク管理もせずに、クゥをテレビカメラの前へ立たせてしまう。一歩間違えば、どんな惨事が起きてもおかしくなかった。河童を家族の一員に受け入れた家族の善意にウソはありません。それが人間の素晴らしさだと思います。でも正しい判断だったワケでもない。クゥはいわば「自然」の象徴。生命を育む母であると同時に、無慈悲に命を奪う残酷さも併せ持っている。とても人間がコントロールできる代物ではありません。適正な距離を保ち、敬意を払い、お付き合いさせていただくのが筋。かつて人と河童が共存していた時代は、そういう関係が成り立っていたのでしょう。人間は遣りたい放題でここまで来た。繁栄もした。でもそれがいつまで続くのか。「力任せでは勝てない」。主人公がクゥから教わった相撲の秘訣は、いろんな事に当てはまりそうです。クセの無い絵柄は、飾りが無い分テーマと純粋に向き合えます。これは長所。でも反面、魅力に欠けるとも言えます。原監督は、絵力で勝負するタイプでない事は承知していますが、それにしても華がない。キャラクターデザインも然り。ここを改善できれば、更なる飛躍が期待できる監督だと思います。 【目隠シスト】さん [DVD(邦画)] 7点(2009-01-23 22:29:17) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 前半は『小鹿物語』『E.T.』の路線で、まあそうだろな、という方向に進んでいく。クゥの語り口が、なんとなく渡世人を思わせるので(「おめえさまたちにゃ世話になった」)任侠路線的に進んでも面白いのじゃないか、と思っていると、一家がマスコミに振り回され出し、おっ、一宿一飯の恩義で暴れ出すぞ、と期待高まり、怒りによって烏を爆殺し、さあいよいよ大魔神に変身か、空は曇りだし竜神は舞い、…しかしそれまでであった。かわいいクゥはかわいいままで保護され続けるのであった。自然はあくまで危険のないものなのであった。物足りない。どうもドラマとしても展開に雑なところが散見され、すぐに家族共有の秘密になってしまったり、手紙一枚で箱詰めにして送っちゃったり、ギクシャク。それでいてコンビニの店員との視線のドラマはていねいに描き込んでいる。なんか惜しい。まあ“オッサン”のシーンでは嗚咽してしまったけどね。 【なんのかんの】さん [DVD(邦画)] 6点(2008-10-13 12:18:45) (良:1票) |
《改行表示》 1.《ネタバレ》 クゥちゃんが妙にカワイイので、珍しくアニメを劇場鑑賞。「アメリカのCGアニメと違って顔が雑だわ~」ぐらいの気持ちで観始めたのですが・・。笑ったり泣いたりでしたが、後半はクゥが何か言うと泣き、クゥが泣くと泣き・・とボロボロでしたわ・私。何で自分がこんなにボロボロと泣いてしまうのか、映画を観ながらも不思議だったのですが、帰りにクルマを運転していて気づいた・・。クゥがおびえるクルマもTVや雑誌もネットも「私のモノ」なんですよ。「私」がクゥの生きる場所を奪っている「何か」の一部なんです。醜い行動を繰り返すマスコミもネットも支えている愚民がいてこそ、凶暴化する・・。そうやって生きる場所を失った人や存在がいることをどこかで意識しているんだけど、それをこの映画で突きつけられて涙が止まらなかった・・。 ごめんね、くう。 【グレース】さん [映画館(邦画)] 10点(2007-08-09 20:09:12) (良:1票) |