《改行表示》 5.《ネタバレ》 ダフネ・デュ・モーリアの原作を映画化した本作。 ヒッチコックがイギリスにいた時代から原作の映画化を熱望していたヒッチコックだが、本作はヒッチコックにとって大いに不本意な作品となった。 「キングコング」をプロデュースして名乗りをあげていたセルズニックがアメリカに来たばかりのヒッチコックを援助。 ところが単なる援助に留まらず、脚本や演出にまで乗り出してきてしまう。 「そこまで頼んでないよ」と流石のヒッチコックも涙目。 ヒッチコックも負けずに「わたし」役のジョーン・フォンテインをしごきにかかる。 相手役のローレンス・オリヴィエはヴィヴィアン・リーにゾッコン。 フォンテインなんかどうでもいいと言っても良かった。 そこにヒッチコックが目を付けてフォンテインに冷たくあたり、本編でのヒロインの冷遇が迫真を増す事となった。 フォンテインも負けてなるものかと、ドジを重ねつつも次第に一人の女として成長していくヒロインを熱演。 貴族のボンボンながら誰にも打ち明けられない過去を引きずるマキシム役のオリヴィエに引けを取らない演技を魅せつける。 本作のヒッチコック色といえばやはりダンヴァース夫人。 ヒッチコック映画は「怖い」んじゃない。 一瞬背筋が「ゾクッ」とするような寒気がすればそれでいいのだ。 その一瞬の寒気を何層にも重ねて恐怖を作り上げる。 それがヒッチコック映画であろう。 原作でも突然ふっと現れる亡霊のような不気味さがある彼女。 誰の夫人なのか? どうしてそこまで執拗にヒロインを追い詰めるのか? もしかして百合なのか? 好きだけどついつい虐めてしまうタイプなのか? 何て生易しい考えが及ばない、得体の知れない女性だ。 自由に出入りする放し飼いの犬のような可愛気、そこに潜む獰猛な執着。 じわりじわりとヒロインを追い詰めていく姿はおっかないね。 まるでセルズニックがふんぞり返る「レベッカ」を、じわりじわりと自分の色をほうぼうに塗りたくるヒッチコックのような執念だ。 ジョージ・サンダース演じる小悪党ジャック・ファヴェルも面白いキャラだ。 お目当ては「ダンヴァース夫人」か「ヒロイン」か。 ベンじいさんも良い顔してますな。 二重、三重のどんでん返しを楽しめる傑作。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-03-03 00:48:53) (良:1票) |
《改行表示》 4.《ネタバレ》 私が見たヒッチコック映画(20本弱)の中では、この「レベッカ」と「北北西に進路を取れに進路を取れ」の2本がベストである。スリルとサスペンスという点では後者だが、ゾクゾクとするサスペンスと映画のできとしてはこの「レベッカ」 もちろんフォンティーンの美しさに目がくらんだと言うこともある。しかし何といっても主人公レベッカが最後の最後まで姿を見せない。死んでいるのだから当然なのだが、恐怖の存在として常に物語を支配しているのはすごい。逆にフォンティーン演じる女性は実質の主人公でありながら、私とかマキシムの2番目の妻という表現で名前すら出てこない。オリヴィエが彼女を呼ぶとき何というか注目して見てみたがやはり名前はない。実に不思議な映画だ。 映画はダンヴァース夫人を演じるジュディス・アンダーソンがすばらしい。この人がいて、この映画は成り立っているとも言える。しかし、最後までわからなかったのは、あの肖像画、あれはレベッカだったのだろうかそれとも・・・。 【ESPERANZA】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2011-09-02 17:38:07) (良:1票) |
《改行表示》 3.ヒッチ先生+セルズニック=メロドラおばさんは当然ノックアウトです(笑)。 本作では、観る側の頭の中で’レベッカ’を常に演技させていること!ここがすばらしねぇ。終盤の詰めに及んでは、主役のカップルよりもこの’レベッカ’さんとダンヴァース夫人の心情へ傾いてしまってる自分にも気づいて呆然としたように思います。モノクロ時代の作品ってやっぱり力強いわ(こんな国と戦争したのね、トホホ)。/まぁしかしこの時代の役者はやっぱり’顔’やでなぁ(笑)。英国紳士オリヴィエ氏は美しいうえにまぁなんと悩ましいことよ(ヴィヴィアン・リーもそりゃ惚れる)。また自分が子どもの頃、洋画に出る正統派美人女優と言えばこの人ジョーン・フォンテーンでした(メラニー役は姉ちゃんに獲られたが私はジョーンの方が好きでした。)。私が選ぶ女もんスーツBEST3が本作の、えーと、ふあっしょん音痴で名前がわからないのですが、エンドウ豆のサヤみたいな形した襟のスーツで。薄桃色であってほしいがたぶん違う(笑)。これ着てる時、女にとってとても嬉しい求婚(←あんな所からされて?ハイ。)をされるわけですが、結婚後~夫と心をやっと通わせるまでの長い間、背をかがめて怯える彼女が着るものはどれも似合わないものばかりになっております、衣装さんにも+1点でおます!。 【かーすけ】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2005-12-03 00:48:15) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 レベッカと言う女性を一度も映すこと無く、登場人物は皆レベッカを知り、知らないのは新妻と観客のみであることが、逆にすでにこの世に存在しないレベッカの存在を強烈に印象付け、そのレベッカに対して恐怖を感じる。そしてラストで登場人物の誰もが知らないレベッカの衝撃の事実を知ることとなる。レベッカの本心は夫を憎み、夫を殺人犯にしたかったのだろうか、それとももっと夫に愛して欲しかった女性であり、もっとも愛している夫に殺されたかったのか。真実を知るのはレベッカのみである。 【亜流派 十五郎】さん 9点(2004-12-06 18:43:01) (良:1票) |
1.おおっ、書こうと思ったことがほとんど↓で書かれているぅ~。でもまだあるもんね。当たり前すぎて誰も書いていないこと、それは主役のJ・フォンテインに役名がないってこと。それではあらすじを書くのに不都合だってことで与えられた称号が“アメリカ娘”。白百合のように可憐で美しい彼女をつかまえて“アメリカ娘”だなんて、イヤだっ~。こんなところでまで、イジメられなくてもいいのに……。“家柄と知性と美貌”という三拍子揃ったレベッカの影に怯え、能面のようなダンヴァース夫人にないがしろにされるJ・フォンテイン。しかもダンヴァース夫人はほとんど歩かない。大邸宅マンダレーの中、どこにいるのかわからないのに、いつのまにか背後に立っている。あの恐怖は並ではない。でもそれは、守ってあげたい女優No.1のJ・フォンテインだったからこそ成り立つ。ヒッチコックのマゾっ気を存分に刺激した女優、それが彼女だったのだ。 【元みかん】さん 9点(2003-11-11 07:27:46) (良:1票) |