10.ラース・フォン・トリアーがビョークを使って映画を撮るという時点で、あのラストは完全に予定調和。あの変態監督、神経逆なでする映画ばかりでムカつくんだけど、どうしても観てしまう。才能は物凄くある。列車のシーンのカット割りは素晴らしく、鳥肌が立ってしまった。ラストよりずっといい。監督の実際の言葉。「この映画のどこにも愛はない」。母親の無償の愛を描いた映画だ、というのは解釈違いのようです。 そうですね、あれは母親の無償の愛じゃない。セルマの自己満足の物語です。息子を思うどころか、むしろ息子のいる現実から逃げ、自分の世界に酔い、それに殉死した。そういう意味で、セルマは勝ち逃げをしたのです。幸せな人なのです。少なくとも私はそう思った。だから、私は一般的な解釈にかなり違和感を抱いてしまう。分かりますか、そういう訳で、本当にひどい監督なんですよ、この人は。 【ひのと】さん 10点(2003-12-08 20:02:00) (良:4票) |
《改行表示》 9.映画館で本気で泣いた映画。悲しい映画だから泣いたのではない。 ストーリーに泣いたのでもない。もう、なかば反射的に涙が溢れてくる映画だった。 ミュージカルシーンになると涙があふれる。 ハンドカメラの色褪せたブレる画像が、発色のいいカラーになって、クレーンやヘリを駆使した、壮大な映像になった瞬間、涙があふれる。 ビョークの伸びやかな歌声と、リズミカルなステップと、幸福の絶頂にあるような笑顔。 つらい現実の世界を、自由な想像力で、美しく変えてしまうチカラ。それでも容赦なくどこまでも救いのない現実。空想。現実。空想。現実。空想。 空想のまま死ねたから、それでいい。ショーの幕は下りるけれど、そのまま終わるなら、それでその人生は完結。他人から見たら憐れでも、心の中はきっと幸せ。 現実を、どこまでも現実として捉えなければならないシビアさ。それでも現実を笑い飛ばし、捉え方次第で幸せを作り出すのは、他ならない自分自身の心。 この両方が生きるチカラだと、そう震えないではいられない大・大・感動作。 【よしの】さん 10点(2003-11-22 14:56:28) (良:3票) |
8.この映画を見た人で、セルマの馬鹿さ加減がムカつくと言う人がいる。じゃあ、その人に聞きたい。馬鹿で愚かな人間は主人公になる資格さえ無いのかと。聡明な人間しか主人公になれないのかと。失明すると分かっていて生むのは親のエゴだという人もいる。じゃあ、その人に聞きたい。目に障害を持つ人間は、この世に生まれてはいけないのかと。セルマみたく、あんたいったい何考えてんのさ、少しはなんか言えよ、といいたくなるような人って、この世の中にはたくさんいるじゃない。この映画は、そんな人達が辿ってしまうかも知れない末路を、刻々と描いた映画なんだ。そして、監督はそんなのいたいけな一人の女を、悲劇の中に放り込む。ここまでは全く、『奇跡の海』と変わっていない。しかし、決定的に違うのは、ラストにおいてなのだ。べスとは逆に、セルマは、自分で幸福までたどり着く。自らの心音を頼りに、死の恐怖を軽く飛び越え、あっという間にそこまでたどり着くさまを描いたこの映画は、奇跡だ。その奇跡こそが、それまでのあざとさを払拭している。これほどの映画は、これ以降、二度と現れないだろう。 【ククル】さん 10点(2002-06-24 16:15:24) (良:3票) |
7.《ネタバレ》 この映画がどうしてこんなにも人の心を掻き乱し、賛否両論分かれるのか。何度も何度も繰り返し観て(よく自殺しなかったな笑)なんとか自分なりに結論を得ました。この映画は踏み越えてしまっているんです。つまり、主人公セルマは頭のおかしい気の狂ってしまった人間なんです。だから、間違った選択を繰り返し、誰の助けも借りず、最後は息子のためにと幸せに死んでいく。この主人公に「やっぱりお前は馬鹿だ、不幸だ」と誰が言える権利があるでしょうか。そう、この映画のテーマはそこです。人間の幸せは主観的なものであるなら、自分を幸せだと強固に信じる人間を誰も非難できない。つまり、もしかしたら全ての人間の幸せに意味などないのでは、ということです。とても恐ろしい踏み越えてしまったテーマです。この映画が、敢えてその恐ろしい問いに挑戦する武器として、想像力の美しさを選んだことに敬服せざるを得ません。ただ、勝利できたかどうかは観る人の判断ですが。そして、この映画を徹底的に非難するレビューにこそ、僕は感動を覚えます。そこには、全ての人間の幸せには意味があると信じようとする力強さを感じるからです。それこそが人間の想像力の持つ美しさだと思います。敢えて踏み越えてまで、この映画を撮った監督に改めて敬意を表したい。 【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 10点(2012-05-14 02:27:21) (良:2票) |
《改行表示》 6.こんなに賛否両論分かれる映画はなかなかありません。このような映画を「アクの強い作品」というのでしょう。主人公が「ただの少し頭の悪い母親」に見えたか、「大人になりきれていないながら立派であろうとした母親」に見えたかによって評価が分かれるのかもしれませんね。私は当然後者です。まるで子供のような親は世の中に腐るほどいますが、子供を第一に考える親であれば、どんな親であろうと無問題であると私は個人的に考えています。それにしてもミュージカルの形式であるのにここまで全体を通して暗い映画もめずらしい。ラストは特に悲惨なものであるが、一概にこの映画をただの悲劇と呼ぶことはできません。 またこのような作品がでることを私は待ち望んでいます。 【べいんびーる】さん [DVD(字幕)] 10点(2010-03-11 19:14:55) (良:2票) |
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《改行表示》 5.《ネタバレ》 セルマの死は当然だったと思います。 それが母親の姿としてどうかは賛否が分かれていますが 自分には究極の愛が垣間見えたような気がしました。 虐待などのニュースが多い中、 今の時代の母親に足りないものかもしれません。 【05】さん [DVD(字幕)] 10点(2006-01-03 21:43:36) (良:1票) |
《改行表示》 4.《ネタバレ》 10点と0点がこれほど多い映画は非常に珍しい。善くも悪くも印象深い作品だからだと思う。私は10点をつけたい。 批判的な意見の多くに、セルマは愚かで利己的、さらには馬鹿すぎるといったようなものまである。確かにセルマの行動には一般的には理解し難いものが多々あるのは事実だろう。もっと他の選択肢があったはず・・そう思わずにはいられない。滑稽に見えても仕方が無いかもしれない。しかし一つ考えてほしいことがある。それは彼女が重度の視覚障害者であり、金銭的にも決して恵まれた人生を送ってきたわけではないということだ。そういった閉塞的な環境が彼女の人格形成や知能に不利に働くことは想像に難くない。もしも彼女と同じような過酷な人生を強いられた場合、はたして私たちはどこまで常識的で、あるいは立派でいられるだろうか? それでも彼女には唯一の信念がある。息子の目を治療し、自分と同じ人生を歩ませないことだ。病気が遺伝することをわかっていながら産んでしまった息子への償い、そして母親として果たすべき最後の責任として。息子に必要なのは母親ではなく目なんだと、必死でキャシーに訴えるセルマの叫びが私は忘れられない。彼女も死にたくはない。死ぬのは怖い。しかし何をさし置いても、彼女にとっては息子の人生には目が大事なのだ。それは目が見えないことによる苦しみを彼女自身が一番わかっているからだろう。あまりに不器用な彼女の生き方が、私にはあまりに純粋で美しく見えた。どんなに滑稽で愚かだとしても、ひたすらに息子のことを想う彼女の生き方を誰が責めることができるだろうか。 この映画は娯楽ではない。エンディングは最悪である。救いは無い。観なければ良かったと後悔するかもしれない。しかしこの映画は他の映画にはない衝撃を間違いなく与えてくれる。それが善きにせよ悪しきにせよ、それだけで意味のある素晴らしい映画だと思う。 セルマという人間を見事に演じたビョークと、ダンサーインザダークという作品を情熱と信念を持って造り上げたラースフォントリアーに心から感謝したい。 【ばかぽん】さん [DVD(字幕)] 10点(2004-07-02 00:38:17) (良:1票) |
3.重くて暗い映画。たとえどんなに悲しい映画でも、感動できたり、反発できたり、何かしらエネルギーをくれるものだが、この映画はエネルギーをすべて奪って行き、なお、エネルギー源もつぶされた。普段はスタッフロールは見ないがこれは動く気力がなくなりただボーっと最後まで見てしまった。あまりの影響力に、最悪だなと思う反面、すごい映画なんだなとも思う。まぁ結局ビョークの歌声のすばらしさに魅せられて5回くらいみてしまったんだが・・・。暗い現実とは逆に妄想の中の明るい音楽、明るい笑顔、明るい踊り。人間が内に秘めるものの大きさを感じさせてくれた。 【ぷりんぐるしゅ】さん 10点(2004-03-12 20:56:55) (良:1票) |
2.あくまでも徹底的な悲劇に私の心は揺らぎっぱなしだった。基本的に悲劇は苦手だし好きではないのだけれど、この映画が描くものはもはや好きとか嫌いとかそういうレベルではない。辛い現実を覆い隠そうとするかのような濃厚な幻想でのダンスシーン。哀しいまでに躍動的に歌い踊るその姿は、誰が何と言おうとも私は「幸福」そのものだと言いたい。幻想であろうと何であろうと、彼女が生きぬいたその様は、「悲劇」さえも越えた深い深い「幸福」だったに違いない。 【鉄腕麗人】さん [映画館(字幕)] 10点(2003-12-12 01:34:50) (良:1票) |
1.暗すぎる。あざとい。ビョークが美人じゃない・・などなど様々な不満の声(私の知人の意見。ミュージカル嫌いという人多数)。そのとおりでしょう。内容的に賛否別れ、おそらく否が多い作品かもしれません。カンヌでパルムドールを獲り、褒めないといけないという圧力に逆に反発したくなるような作品でもあります。しかし、万人受けの娯楽作でない重苦しい内容で、この驚くほどのレビュー数は無視できないのではないでしょうか?。あんなに実験的で挑発的で悪趣味で悪意に満ちた変態的作品なのに・・・。まぎれもなく既に映画の歴史に残ってしまっている作品じゃないでしょうか?。我らの時代の傑作の一つであり、リアルタイムで観たことを将来誇れる映画じゃないかとさえ私は思ってます(おおげさ?)。「正しい」映画の観方じゃないかもしれませんが、本作に関しては、ドグマ95がどうの、撮影がどうの、アメリカがどうのといったことは鑑賞後何年も経った今でさえ私にとってはどうでもいいことです。映画館、ただ真っ黒の画面、静寂の中に闇の底から流れてくる旋律、妙に不安な幕開け。その後の体験は唯一無二の激しくも神秘的と言っていいようなものでした。別の世界から響いてくる叫びのようなビョークの歌声。めくるめく鮮烈な脳内妄想ミュージカルシーンの開放的でありながら危うげな現実逃避。時を忘れました。映画館であんなにとめどなく涙が流れたことはありませんでした。どれだけ現実世界に拒絶されようが、あえて生きていく意味が人生にはある。そう感じました。この映画は強烈に人の心をかき乱すからこそ嫌われるんだと思います。勝手な思い込みの勘違いな自己陶酔と言われても全然かまいません。私はこの映画を陳腐だと評価することはとてもできません。 【しったか偽善者】さん [映画館(字幕)] 10点(2003-11-29 19:38:26) (良:1票) |