6.《ネタバレ》 本サイトでの高評価を受けて鑑賞することに。ただ、レビュー内容には一切目を通していなかったため、ジャンルさえ知らずに映画に望みました。果たしてこれが大正解。先入観なく観られたことは、本当にラッキーでした。もしお住まいの地域で、まだ劇場公開されているようでしたら、予備知識を仕入れずに、速やかに劇場へ足をお運びすることをオススメします。 さあ、では沢山ホメていきましょう。まずキャスティングから。靴屋の倅は好感度抜群。関めぐみは芯の強い女性を好演していました。大塚寧々からも憂いが感じられて良かった。年歳が味になっています。そして瑛太。ルックスだけでなく、若手トップクラスの演技力。そして役者としての“雰囲気”がある。得難い武器だと思います。もちろん脚本も素晴らしいです。序盤は完全なコメディ。田舎モノの青年が騒動に巻き込まれていく。戸惑う様が微笑ましい。しかし、途中から劇的に物語は転換します。コメディからサスペンスへ。事象を一つの視点から追うのには限界があるとつくづく思う。もっとも表も裏も知ることなんて、普通は無理です。与えられた情報で判断するしかないのが現実。でもヒントは出ているのかもしれない。例えば「広辞苑」と「広辞林」を間違えた理由は?買ったばかりの教科書が消えているのは?正解を探すよりも、自分が納得できる結論を選んではいないか。でもそれは、可能性に蓋をしていることも忘れてはいけない。難点を挙げるなら、タネあかし部分。爽快感よりも悲壮感が勝るのがツライところ。詰まる想いがクドさに繋がってしまう。物語の性質上仕方ないとはいえ、編集には一考を要すると感じました。ラストの解釈。あのあと瑛太はどうなったのでしょう。靴屋の倅は?ロッカーの神は目隠し状態。ですからブータン人の論理「善行を行う人は死なない」は当てはまらない。神の目は行き届いていません。瑛太を待っているのは悲劇でしょう。世の中はウソで溢れている。でもウソではないウソもある。それを今回の件で知った靴屋の倅が、両親の言葉をどう聞いたのか。彼はもう戻って来ないと感じました。これが自分の解釈です。でも数多在る可能性の中の一つでしかありません。これまでの出来事、台詞のひとつひとつが、全て結末への伏線に思えます。どの伏線を活かすかは個人の判断に委ねられている。だからとても悲しい物語なのに、どこか優しいのだと思う。 【目隠シスト】さん [映画館(邦画)] 9点(2007-10-01 18:51:34) (良:4票) |
5.《ネタバレ》 つくづくネタを知らないで見ることが出来て幸せだったと思える映画です。 実は、前半はかなりイラつく映画でした。意味不明な登場人物が繰り広げる、意味不明な行動。勿体ぶった意味不明な台詞。実は大嫌いなサブカル系にありがちのパターンと誤認しかかってあやうく観るのを中断しかけました。 それが一旦後半部分に入ると!!!!! 今まで意味不明と思われたことが、全てきちんと伏線になってて回収されていく面白さ、気持ちの良さ。 これだけ前半と後半の印象が違う映画も珍しいです。 あと、すごく泣ける映画でもありました。 死ぬ寸前に、逃げていく犬をじっと見つめてそれから閉じられる琴美の大きな目、 恋人と唯一の友人を失い、ずっと部屋に閉じこもり二人の残した声だけを何度も何度も聞いて過ごしてきたドルジの耳に聞こえてきた椎名が歌うボブ・ディランの歌。(ああ、思い出しただけで泣けてくるw) ただ、すごく残念なのがやはり一度目と二度目以降では、どうしても面白さに差が出てしまうという点ですね。 もちろん、一度観てそれで評価すべきという考え方もあると思われますが、自分にとってほんとに好きな映画というのは、何度も何度も繰り返してみるものなので。 できるものなら、何かのはずみでこの映画に関する記憶だけ失われたら、こんなに幸せなことはありません。w 22年2月8日追記 思いが高じてDVD購入しました。 実は、一番最初のシーンさえ注意深く見ていれば、ネタとか完全にわかったということを発見しました。 あと、メーキング映像が秀逸。監督がどういう意図を持っていたか、俳優がそれをどう受け止めてどう変えていったか。これほど映画の理解を深めるメーキングに出会ったことがない。(塚、今まで買ったDVD映画がたいていアイドル女優物だからw) もちろん、正統的な映画の楽しみ方とはずれてることは重々承知ですが、この映画が好きな人には是非お勧めです。 【rhforever】さん [DVD(邦画)] 9点(2010-02-01 11:49:14) (良:2票) |
4.《ネタバレ》 ブータン人留学生の孤独を想うとグッとくる。泣ける。 彼は初対面の隣人シーナを共犯にせざるを得ないぐらい、誰もいなかった。 彼はヴォイスレコーダーでどれだけの回数、どれだけの夜、二人の声を聞いたのだろう、それはもうネイティヴとしか思えないほど日本語が上達するぐらいに何度も何度も再生したのだろう。そういったことを想像するとグッとくる。泣ける。 【NIN】さん [DVD(邦画)] 9点(2008-02-03 04:13:06) (良:2票) |
3.《ネタバレ》 映画化されていると知り、でも限られた映画館でしか上映していなくて、家族にせがんでねだっておがんで、電車を乗り継いで映画館まで連れて行ってもらってまで観た、思い出の映画です。どうしてそこまで観たかったのかというと原作ならびに作者の大ファンだからです。 現在と二年前の時間軸が交錯していく構成の物語を、映像でどう落とし込むのかなって思っていたら、椎名の想像(解釈)と、真相パートで演者を変えて同じ画を撮るって言う手法に度肝を抜かれました。原作での多少のクサさが映画でさらに上乗せされてる感はなくもなかったですが(琴美が車の前に立ちふさがる所とか…原作は飛び出したってだけだった気がする)、原作の再現度、リスペクト、どう魅せようかという工夫や演出が光っていて、それだけですごくすごくうれしかった。鑑賞後に地元のレンタルショップで映画に出てきたのとまったく同じボブディランのアルバムを借り、「風に吹かれて」を何度も何度も聴いて必死で歌詞を覚えたのも忘れられない思い出です。原作ファンとして、中村義洋監督に心からのありがとうございますを捧げたい。原作を後から読んだ「陽気なギャング~」の映画で負った傷がすっかり癒えました。 【深々】さん [映画館(邦画)] 9点(2018-09-08 21:28:28) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 原作は未読です。 最初はシュールなコメディでちょっとクスっとくるくらいで、なんとなくゆるーい映画やなぁくらいに思っていたけど、予想外の展開!ただ単にシュールと思っていた事項が、どんどん線になり繋がっていってびっくりしました。
見ていて切なくてたまらんくなりました。 あの方法で報復するドルジに涙が出た…。 動物虐待を繰り返す若者たちを 鳥葬にしちゃえばいい、とつぶやいた琴美に対して、ドルジは鳥葬は死に方じゃない、弔い方だよ、と語った。あんなに穏やかな性格で、死や生に対して神話的で自然的なとらえ方をしているドルジが、琴美をひき殺した若者を、人なんて寄り付かず黒い鳥達だけが来るだだっぴろい草っ原の大きな木に、ナイフを突き立てて生きたまま放置した。その時の彼の気持ちが私の琴線に触れて、胸と喉が熱くなって苦しくって涙腺が崩壊するほどだった。
苦し過ぎるので、二度と見ないかもしれないけど、胸を突く映画です。 最後があんまり好みでなかったのが、少し残念でした。 【まりんこ】さん [DVD(邦画)] 9点(2009-03-29 19:56:57) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 ふとこういう色々な意味で驚きに溢れた良い作品にめぐりあうから、映画はやめられない。
進学のため越してきた普通の大学生が、突然隣人に「本屋を襲わないか?」と誘われる。 なぜ、隣の隣のブータン人のために本屋を襲わなければならなかったのか?……なぜ、ディランを歌うのか?……なぜ、「じゃあ河童の方」の河なのか?、さりげなく散りばめられた伏線が結びつき、紡ぎ出された「真実」に、突如として感情が揺さぶられた。
伊坂幸太郎の原作は未読で、「映像化不可能」と言われいた文体がどういうものなのかは、この映画化作品を見た後だからこそ、殊更に気になる。
こういう映画は、感想の言葉を並べれば並べる程、蛇足になってしまう。
ボブ・ディランの「Blowin' in the Wind」によって繋がった出会いは、きっと神様が「彼」に差し伸べた「救い」だったのだろう。 【鉄腕麗人】さん [DVD(邦画)] 9点(2008-06-21 16:55:53) (良:1票) |