《改行表示》 8.《ネタバレ》 この映画では「コニー・コリンズショー」は最後、黒人と白人が一緒に踊り白人至上主義のヴェルマはクビになって追放!メデタシメデタシ!なエンド。 でもこのショーのモデルになっていた実在の60年代の番組「バディ・ディーンショー」(映画同様2時間ワクで週6日放送されていた大人気番組)では司会者が黒人に対する差別化廃止を訴えたとたん番組が打ち切られたという真逆のバッドエンドだったのだ。 2枚組DVDの特典disc2をぜひ見てほしいのだが、オリジナル版を作ったジョンウォーターズが、その司会者を中心とした出演者(当時は高校生。今はおじいちゃん&おばあちゃん)の同窓会(そんなものがあったとは)で、その番組の不幸な顛末を聞いてこの作品のストーリーを思いついたそうな。 なるほど、それを思えば、社会的マイノリティを描かせたらピカイチのジョンが「美男美女がウケるティーンの番組でもし、チビデブが支持されていたら?」「黒人差別を廃止できず強制終了された番組がもし、黒人差別を廃止を受け入れていたら?」・・・といった、マイノリティーのポジティブな”if”を映画の中で現実化させたらさぞかし痛快になる。 ということで生まれたこのステキなストーリーだが、オリジナル版はB級味こってりだったので<知る人ぞ知る>な作品だったところ、後に舞台でミュージカル化されて知名度がアップ、そしてその<多くの人が知る>ミュージカル舞台版を映像化した今作は、ユニークな物語に実力派ベテラン俳優団と若手新人団が見事に融合した傑作だ。 しかも舞台版よりも多くの曲が追加され、躍動的なダンスシーンのオンパレード。それはアダム・シャンクマン監督が以前はダンサーで振付師でもあったことから来るそうで。とにかく痛快で”動的”な作品なのである。 かくして大量のダンス&歌が詰め込まれていたわけだが、私はまだまだ、あと5曲くらい増やしてくれてもまったく飽きないくらい。ゴスペル、ロック、モータウン、R&B、ラテン、ビッグバンドジャズなどなど・・・カラフルなケーキやお惣菜が食べ放題のように次々と目の前に並べられているような気分になる。 ジョントラヴォルタは、ママ役のオファーが来た時「女装した男じゃなくて本当の女に見えるようにメイクして」と条件をつけてOKしたそう。そういえばウォーターズのオリジナル版では、ディヴァインがママ役をやっていて、それはもう「ピンクフラミンゴのドラァグ・クイーンのまんまやないか!マツコデラックスやないか!」という見た目だったのだが(私的にはちょっとそれはカルト臭がして苦手だった)、この作品のジョントラは、オネエではなく、見事に女性になっていた。その身振り手振りやちょっとした表情も見事に女。やっぱり演技力最高ですね。 ザックエフロンのようなディズニーチャンネルあがりのイケメン若造俳優は私が最も苦手とする部類なのだが、この映画のあの額部分にフックがついているみたいなヘアスタイルといい、何かとウィンクしてくるヤサ男っぷりが素晴らしく、この作品を見てザックが好きになって、思わず「ハイスクールミュージカル」をずいぶんブームが去って今さらの時期に見てしまったくらいだった。 ラティファ女王も余裕の貫録。彼女は終盤あたりで「I know where I've been」という黒人差別についてシヴィアに歌い上げるゴスペルを披露するのだけど、他の曲がすべてアップテンポかミディアムな中で唯一スロー、そして他の曲がすべてオチャラケ系であるのに対してマジメ系・・・という点で、よりいっそう見るものはこのナンバーに心がフォーカスされるのではないでしょうか? 美魔女ミシェルもまた余裕の貫録&美しさ。49歳であのミス・ボルチモア時代の思い出シーンはすごいとしかいいようがない。 ウォーケンは動きが少ない分、細い表情の演技がとても素晴らしい。私は、ジョントラママに家を追い出されて店で寝ていたところにトレイシーがやってきて家のカギを彼に見せたとき「おぬし、やるよのう」みたいな表情をする彼が好きですよ。あと、ジョントラママがフリンジドレスで踊ってデカ尻をウォーケンに向けてブルンブルン振った時に「うっぉーうちの嫁タマンネー!」って表情で口に手をやるとことろも。彼のあの、サラリとした顔だからこそできる、絶妙な顔ワザではないかと。 そして私は「良い演技をするので好き」な黒人俳優は何人かいましたが「デートしたい」と思う黒人俳優はいませんでした。が、この映画のシーウィードには、ヤられました。ブラックベリーの味をお試し希望。 【フィンセント】さん [DVD(字幕)] 10点(2015-06-16 11:15:02) (良:2票) |
《改行表示》 7.素晴らしい。まさにこれこそがミュージカル映画だ。 歌って踊ることが大好きなおデブちゃんの女子高生が、テレビスターを夢見る。それに当初は反対する巨漢の母親。その母親役をなんとジョン・トラボルタが演じている。 そう聞くと、なんだかエディ・マーフィのコメディ映画みたいな印象も受けるが、ある意味、圧倒的に正統な楽しさに溢れるミュージカル映画に仕上がっている。 数日前に豪華俳優陣を揃えて大ヒットブロードウェイミュージカルを映画化した「NINE」を観たばかりだった。「NINE」は流石に豪華な大ミュージカル映画だったが、あくまで舞台ミュージカルの映像化という範疇を抜け切らなかった点が、ミュージカル映画好きとしては残念だった。 でも、今作は、映画だからこそ表現出来るミュージカルシーンをきちんと見せてくれる。 主人公の女子高生が、丸々とした愛らしいルックスで朝の街を歌い踊りながら登校するシーンからはじまり、ロケーションとカメラワークで多面的でバラエティ豊かなミュージカルシーンに溢れている。 ストーリーなんて二の次で、とにかく見ているだけで「楽しい」。ということこそ、ミュージカル映画が持つべき根本的な魅力だと思う。 その本質をしっかりと押さえつつ、“他人と違う”ということを肯定しその価値を魅力的に示すことで、あらゆる「差別」の否定にまで繋げたストーリー構成も良かった。 何と言っても、ジョン・トラボルタを自らの体型にコンプレックスを持つ母親役に配したことが、最大のファインプレイだろう。 やや引きこもり気味だった母親が、新進的な娘に刺激されて徐々に自分を曝け出していく流れは、トラボルタがどういう俳優か知っている人にとっては予定調和過ぎる要素ではあるが、巨漢の母親に扮した彼がBigな尻を振り乱し歌い踊る様は問答無用に爽快だ。 そして、すっとぼけてはいるけど理解のある人格者の父親を演じたのは、名優クリストファー・ウォーケン。 まさかトラボルタとウォーケンが「夫婦役」で共演し、愛に溢れたミュージカルシーンで共に歌い踊るとは……、拍手。 【鉄腕麗人】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-03-22 12:43:08) (良:2票) |
6.《ネタバレ》 文句なしに、楽しい映画。これぞアメリカ映画、っていう感じか。歴史を語るには、特に歴史の恥部を語るには、国によっていろんな文法があって、たとえば日本なら後悔と反省で語るだろうし、イギリス人やドイツ人なら皮肉で語るだろう。しかし、そんな歴史すらエンタテイメントとして語ってしまうのは、これはもうアメリカ人しかやらないことで、そこにはエンタテイメントに対する情熱というか、執念を感じる。平和な古き良き時代だった50年代から、公民権運動や学生運動に揺れる60年代へ。客観的には暗い道を進み始めたこの時期を、あえて「Welcome to 60's」などと明るく歌い上げてしまうアメリカ人の根性をうらやましく思える、そんな映画。 【ぽん太】さん [DVD(字幕)] 9点(2008-10-13 18:08:59) (良:2票) |
5.《ネタバレ》 ミュージカル映画を冒険アドベンチャーモノのプロットで作ったらこうなりました、という見本のような映画。このプロットというのが本当にコテコテの王道プロットでして、割と色々な映画でも使われているものです。①主人公がある大きな難関に遭遇し、すごすごと引き返してくる。②社会的地位の低そうな連中(黒人の不良生徒達)の仲間になる。③野蛮なはずの彼らが実に洗練された技術(ダンステクニック)を持っていた。その技術を授かって難関を突破。④難関突破のご褒美イベントとして、主人公が以前から「いつの日かあそこに…」と憧れていた場所(TVスタジオ)で自由に行動できる状況に。以降、「忙しいが非常にやりがいのある充実した日々」が過ぎていく。さらに、素敵な異性との仲が親密になる嬉しいイベントも発生。⑤蜜月の日々から一転、主人公の運命が急激に破滅へと向かい始める。仲間達と離れ離れになり、主人公の立場が刻一刻と悪い方へと向かう。⑥絶体絶命の状況から一気に敵の懐までスッポ~ンと飛んでいくありがたいワープイベントが発生。⑦最後は愛する人との共同作業で敵にトドメを刺す。…と、まあ大体こんな感じの話になります。こうしてみると本当に教科書的な王道プロットです。実はこのプロットは、宮崎駿さんの傑作「天空の城ラピュタ」にそっくりの構成なんです。試しに②の「黒人の不良生徒達」を「海賊達」に、③の「ダンステクニック」を「飛行機」に、④の「TVスタジオ」を「大空」に変えてみて下さい。あとはほとんど同じになりますから。ま、ともかくこの映画、黄金期の宮崎駿さんも好んで用いたこの超優等生プロットのお陰で、ミュージカル映画としては驚異的なハイペースでサクサクと気持ちよくお話が進んでいきます。普通のミュージカル映画では、ミュージカルシーンに入るとそこで一旦ストーリー進行が途絶えがちになったりするものですが、この映画ではミュージカルシーンでもお構い無しにどんどんストーリーを進行させるという方法がとられているので、その疾走感たるやかなりのものです。ミュージカル映画でここまでのスムーズネスを実現した映画はちょっと例がないのではないでしょうか。シチュエーションを頻繁にチェンジさせて、視覚的にも飽きさせない工夫がなされているのも感心しました。これには「雨に唄えば」的なサービス精神を感じます。9点です。良く出来てます。 【バーグマンの瞳】さん [地上波(字幕)] 9点(2013-08-16 20:34:03) (良:1票) |
4.クドイですが自分は基本ミュージカル好きです。見終わってから見てよかったと心から思えた作品でした。 【naniwahito】さん [映画館(字幕)] 9点(2009-02-20 22:32:05) (良:1票) |
3.メタボメタボとヒステリックに叫ばれている中、でぶでぶした女の子がどこ吹く風とコロコロ踊ってるのを見るのは愉快である。でぶの人はだいたい主人公のドジで愉快な友人役と決まっていたものを、それを中心に持ってきただけで新鮮。そして60年代風音楽がカラフルに展開していく。キャスティングの妙。だってクリストファー・ウォーケンとジョン・トラボルタが仲良く夫婦愛を歌って踊るんだぜ。ミシェル・ファイファーの根性まがり女も楽しい。ただ、この作品ならこの曲と記憶されるような決定的ナンバーなり、ユニークな振り付けなりがないのがちょっと寂しい。デモのシーンなど、ここは大事なところだから真面目に演出しました、って感じだったが、ああいう場面こそ、もっとミュージカル的に盛り上げて、それでメッセージが濃く伝わるのではないか。とはいえラストのコンテスト会場シーンはたっぷりで満足。あの姿のトラボルタにダンスのキレを期待するのは酷だな。 【なんのかんの】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-07-24 10:45:01) (良:1票) |
《改行表示》 2.人種問題?おデブちゃん?なぁ~に言ってんの。こっちは手繋いで一緒に踊ってんだぜ?これ以上何があるんだYO!小難しい事考えてないでこっちにおいでYO! 【オニール大佐】さん [DVD(字幕)] 10点(2008-07-22 15:49:35) (良:1票) |
《改行表示》 1.《ネタバレ》 と、に、か、く、テンションが高いっ!驚くほど元気いっぱいのミュージカルだ。やはり踊りが素晴らしい。ミュージカルというと、歌の批評が多いですが、この映画のレビューを読んでも分かるように誰もそんなことにこだわっていない。そういう次元をはるかに超えている。この映画に出てくる奴らは全員やぶれかぶれなんです。何があっても、ええじゃないか、といってひたすら狂ったように踊りまくっているんです。これほど激しく動きのミュージカルは初体験です。鳥肌がたったシーンは、母と娘がお店から出てきたときに、なぜか大勢の通行人が道路で無我夢中で踊りまくっていたところ。そして母と娘も申し合わせたように一緒になって踊りだす・・この意味不明のサジ加減が最高です。このシーンを見ていると、小さな悩みでクヨクヨしているのが馬鹿らしくなってきて、もうどうでもいいや、という気分になってくる。ツマラナイ理屈なんてすべて吹っ飛ばしてくれるだけのパワーがこの作品には漲っている、それと人生って、なるようにしかならないんだな、という開き直った気持ちにもさせてくれます。悪のり風のドタバタ劇ですが、そこには黒人も白人もデブも関係なく、小難しいイデオロギーや偏った価値観にこだわらず、とにかく一緒になろう!という心地良い一体感が感じられます。心地良い混沌(カオス)でした。エンドロールが流れたときには嵐が通り過ぎたような感覚で茫然自失となりました。 【花守湖】さん [映画館(字幕)] 10点(2007-10-27 13:20:23) (良:1票) |