6.《ネタバレ》 いやあ、せつない作品だった。大金を手にしたゆえに追われ命失う者、その妻、何の躊躇いもなく命を奪う者。作品通じて無常観が漂う。とにかく緊張感が半端ではなく、息を飲む場面が延々と続く。なんといってもシガー役バビエルバルデムの得体のしれない不気味さの表現が光る。素晴らしいと思ったら、やっぱり助演男優賞受賞してた。この作品なんの下知識なくレンタルしてたけど、本作品自体が賞取り作品だったんですね。良い出来でした。理詰めということはない、若くて前途洋々の人たちには理解しにくいかも、人生折り返し越えていろいろあった人たちには感じ入るところがあるかも。さんまさんの「人生生きているだけで丸儲け」という言葉が浮かびました。 【タッチッチ】さん [DVD(字幕)] 7点(2017-10-25 15:15:20) (良:2票) |
5.鑑賞後の気分が「ゾディアック」を見た時と似ていて、それはつまり徒労感なのだが、「ゾディアック」の157分が事実をベースにしておきながらストーリーがどこにも向かっていない印象、だとするならば「ノーカントリー」はどこにも向かってなさそうだったが実はその方向性が見えてなかっただけだった、という感じだろうか。ラストの提示に疑問は残るが、まあそういう事なんだろう。No country for old menか、アメリカって怖いなー、ぐらいのものだ。それより途中に挟まれるいくつもの挿話、そのほとんどが殺人鬼であるハビエル・バルデムの行動原理及びその実践を示すものであり、それらは彼の人物画を読み解くものとして有効に働いているのだが、結局の所キノコ頭と空気ボンベ銃とコインなのである。こういう徹底的なキャラクタライズは極めてマンガ的であり、つまり静止画的だと思う。「ヒストリー・オブ・バイオレンス」でヴィゴ・モーテンセンが演じる元殺し屋は反対に、まず彼の動きによって記憶される、そんな人物だった。カメラを向けられた対象(人物)へ潜行せず、その周辺で巧みにやり繰りする、そのやり繰りレベルの高さは相当のものだと思う。けれども、なんとなく抜け殻のような(そこがこの映画の良い所なのかもしれないが)映画だな、という感じは残った。とはいえ全体的に面白いし、中盤の追いかけっこはかなりドキドキさせられた。 【Qfwfq】さん [映画館(字幕)] 7点(2008-04-10 01:17:18) (良:2票) |
《改行表示》 4.一筋縄ではいかない展開。複雑に意味を込めようとしている感じで、観ている人にも多少の解釈を求める。 それでも、ただ何となく観ていてもそれなりに満足するちょっと不思議な映画。 【simple】さん [地上波(邦画)] 7点(2019-05-30 20:42:50) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 途中まではかなり面白く観ました。ハビエルのキャラが立ちまくりで(松本人志のズラ風の髪型最高)緊迫感もあり、グイグイ引き込まれましたが、その分クライマックスが…。トミー・リー・ジョーンズがもっと絡んできて三つ巴の闘いかと思いきや、あっさり引退⁉そこだけ物足りなかったので、この点数です。 【来た別府】さん [DVD(字幕)] 7点(2012-01-04 22:11:42) (笑:1票) |
《改行表示》 2.《ネタバレ》 映画史に残るオレ流の殺し屋でした。この殺し屋の怖さは独特です。「どこからお越しですか?」と世間話をしようと声をかけたら「それはどういう意味だ?」といって突然キレて、ポケットからコインをとり出して「裏か表か当ててみろ!」とすごむ。こんな殺し屋、絶対にイヤだ。不条理が服を着て歩いているような殺し屋でした。ルールというのはみんなで決めるものではなく、力の強い者に決定権があるという哲学的な殺し屋でもあります。そんなオレ流の殺し屋が、社会のルールに従って、青信号で交差点を渡ろうとしたら、信号無視の車に追突されて瀕死の重態に陥ってしまうというコーエン兄弟ならではの滑稽さが際立っている。殺し屋と善戦したモスのあっけない死にかたは「西部戦線異状なし」を彷彿とさせる。「死」とは日常そのものであり、劇的なものではないという渇いたメッセージ。シーンの1つ1つにこだわりが感じられる。圧巻の世界観に惚れました。 【花守湖】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-09-01 20:42:09) (良:1票) |
《改行表示》 1.《ネタバレ》 アカデミー賞にふさわしいかどうかは分からないが、完成度は高い作品。 本作品からは他の作品からは感じられない、得体の知れない“気持ち悪さ”を感じられるようになっている。 その象徴的なものをハビエル・バムデルが好演している。 感情すら感じられない存在、人間とは異なるような存在、トミー・リー・ジョーンズも語っていたが幽霊のような存在を演じている。 シガーとは会話自体も成立していない。 雑貨屋のオヤジとの一切噛み合うことのない会話や、人間の生命をコイントスで左右する手法が印象的だ。 映画自体も、シガーとの会話のように全体的に噛み合っていないようなところが多数見られるが、そのためか、得体の知れない“気持ち悪さ”をより感じられる効果が増しているように思える。 もちろん、コーエン兄弟は完全に狙って演出・編集しているだろう。 水を欲しがっていたメキシコ人に水をあげに行くことでトラブルに巻き込まれたり、シガーが銃撃戦などではなくて青信号を走っているときに致命的なダメージを受けるということも、善行や悪行といった既存の概念を超越している。 金、麻薬、殺人によって、人間の感情が麻痺しているように見られる。 人間が動くのは全部金ともいえる。 シャツをもらうのも金、病院に運んでもらうのも金、ホテルのオヤジから情報を提供してもらうのも金、殺人を依頼するのも金。 飲みかけのビールですら金をせびろうとする姿勢や、金をもらった瞬間に仲が良かった少年たちが喧嘩をし始めるということも本作が言わんとしていることをよく表しているように思える。 このような気持ち悪い世の中になったのは最近のようにも思えるが、1900年台初頭にも同じような惨劇があったという、トミー・リー・ジョーンズとネコ屋敷のオヤジとの会話も印象的。 本作が描こうとしていることは、近年において人間の本質自体が変わったということではないのかもしれない。 暴力と欲求が“人間の本質”であり、人間の本質自体は変わっていないということだろうか。 【六本木ソルジャー】さん [映画館(字幕)] 7点(2008-03-16 02:39:53) (良:1票) |