《改行表示》 5.《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。あまりの素晴らしさに打ちのめされました。これほどの傑作が2012年まで日本未公開だったとは! 設定そのものがとても魅力的ではあるものの、中盤まではサスペンスなのかコメディなのかハートフルストーリーなのかまったく予測できません。 ぎりぎりのところまでコメディタッチの洒落たサスペンスと見せかけて、最終盤で一気にノワールへと変貌する!これは結局のところ、しがなくも実直で勤勉だった中年男が、その善良さにもかかわらず転落するという報われない物語。今でいうところの「イヤミス」ですね。ラストシーンで「神の子は今宵しも」や「ジングルベル」などのクリスマスソングが流れるところも不気味で秀逸。べつにイヤミスが好きなわけではありませんが、この作品にはすっかり魅了されました。脚本がきわめて巧みで、とくに終盤部分で関係者の証言がみごとに一致するところなどは唸ります。 なお、原案はルノワールの「牝犬」だそうですが、タイトルを「Scarlet Street」に変えたのは、もしかしてゴシック小説の「緋文字(The Scarlet Letter)」やコナン・ドイルの「緋色の研究(A Study in Scarlet)」に関係してるんでしょうか? 追記:きっとNYのグリニッジ・ヴィレッジが赤煉瓦の町だから「スカーレット・ストリート」にしたんでしょうね。逆にいうと、そのために物語の舞台を、原作のモンマルトルからグリニッジ・ヴィレッジに変えたのだと思う。 【まいか】さん [インターネット(字幕)] 9点(2022-09-18 02:48:37) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 リメイク元の「牝犬」はなんだかんだ言ってダメ人間に寄り添うようなラストが用意されていたのと対照的に、ラングは重すぎる罪を負ってしまった男をこれでもかというほど冷淡に突き放しています。偶然の折り重なりがラング映画の運命を形成するのですが、本作の運命はあまりにもむごい。地味な非モテが身の丈に合わない恋に燃えただけでこの仕打ちとは!クライマックスの発狂シーンはラングのすべてが詰まっています。照明、音響、装飾が男を奈落の底に突き落とし、ついに心の中に自分しか存在しない地獄のような世界に閉じ込められてしまった。彼が完全に心を閉ざしたのはこれまた偶然です。ラングはなんて嫌な奴なんでしょう!上流階級に対する風刺も込められたアメリカ期ラングの最高傑作だと思います。 【カニばさみ】さん [DVD(字幕)] 10点(2017-01-17 04:29:30) (良:1票) |
《改行表示》 3.もしかしたらフリッツ・ラング監督の最高傑作ではないでしょうか? 1945年という何とも言い難い年に、ハリウッドでは、こんな映画が作られていたんですね。 彼は客が満足するようなハッピーエンドより芸術性を貫いたことが十分伝わってきます。洒落たセリフ、小道具、シャレード、伏線、使われた音楽が見事と言っていい、「本当に面白い映画とはこれだ!」と言いたくなります。 心温まる映画かと思いきや、人間の汚い部分を見事に描いてあり、笑い、エロス、涙、恐怖、全てが含まれています。 私にとって永遠に残る逸品となりました。 ヒロインが画家を演じるシーンでは笑ってしまいました。だって、佐村河内氏と新垣さんと同じなんだもん! 当時のハリウッド特有のオールセットなのも見どころの一つです。 【クロエ】さん [CS・衛星(字幕)] 10点(2014-04-17 15:50:55) (良:1票) |
《改行表示》 2.《ネタバレ》 「飾窓の女」のオチが気に入らない俺は断然「スカーレット・ストリート」。 序盤はラング得意のじっくりドラマを描く展開で見せ、徐々に複雑かつ深刻な状況に主人公を追い詰めてしまう。些細な出来事がどんどん膨れ上がる恐怖。 主人公が描いた美人画(どう見ても「メトロポリス」の雰囲気バリバリの絵です。本当に(ry)が強烈だ。 「飾窓の女」に出てきたショーウィンドウの絵よりも強烈だぜ。言っちゃ悪いが、アッチはキレイすぎて毒が無い。サスペンスはやっぱり猛毒が無いとな。悪夢が一生続くような毒がさ。 寝ても覚めても悪夢が主人公を蝕み続けるラストが素晴らしい!こういう「飾窓の女」が見たかったのよ。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-03-26 14:40:22) (良:1票) |
《改行表示》 1.《ネタバレ》 ストーリーは、パッとしない初老の出納係が悪女にのめり込んでいってしまうという既に何度か見たことのある話なんですが、序盤から主人公クロスの人物描写のきめ細やかさには目を見張るものがあり、興味を引かれるところであります。 雨の中、友人を傘に入れてあげたり警察を呼びに行ってあげたりするだけでなく、傘が破れているところをさり気なく入れてみたり、金庫から金を取ろうとして思い直したりするところや、エプロンをつけて家事をする姿なんかは滑稽を通り越して悲哀な印象すら覚えるほど。一方、悪女キティの方も、タバコを投げ捨てるだけでなくその先の流し台の中までも描くところなんかも唸らさざるを得ないようなワンショットだと思います。 人物の描写は丁寧で好きなのですが、やはりストーリーにアラが目立つのが難点でしょう。 一番気になってしまったのが、遠近法がメチャメチャと言われた絵が何故か高値で買い取られてしまったのと、金を工面するシーンが出てきたにもかかわらず最初に出てきた懐中時計がキーアイテムとしてその後に全く活用されなかった事なんですが、他にも、キティが主人公の台詞を借りて堂々としているにもかかわらず彼女は自分の絵に自信がないという設定で押し通そうとしていたり、殉職したはずの元夫と夫人が再会した後から裁判で証言をするシーンまでの過程が描かれていなかったりといった所もツメの甘さを感じました。 しかし、サイレントの影響を感じさせる音響演出なんかは好きですし、決して悪くはない映画だと思います。 【もっつぁれら】さん [映画館(字幕)] 7点(2012-09-28 00:45:03) (良:1票) |