5.《ネタバレ》 フリッツ・ラングが当時のアメリカの摩天楼に衝撃を受け、妻のテア・フォン・ハルボウと共に熱狂しながら構想した「メトロポリス」。 公開当時は「近未来」、今ではゴシック調のSFファンタジー・サスペンスとしての面白さがある。 当時のドイツ美術の粋を結集した美しさ、自らも脚本を手掛けた「カリガリ博士」を思い出す怪しげなロートヴァングの研究所、機械工場の爆発と押し寄せる水、街に放置された車の山の不気味さ、そしてアンドロイドマリアの誘惑によって狂気の渦と化す人の恐怖。 1984年に熱狂的なファンだったジョルジオ・モロダーが尽力して本作が再び注目され、 2002年にマルティン・ケルパーが映像をデジタライズ、 2010年に行方不明だったフィルムが発見され「完全版」として蘇った。 ゴシック調の摩天楼が居並ぶ近未来的な都市。 冒頭から力強い機械の描写、労働者と富裕層が完全に分断された格差社会が拡がっている。 そう、本編の主軸は鮮烈な映像だけではない。 中世の貴族趣味に興じる富裕層、 近未来のはずの都市に「複葉機」が飛んでいる事自体、富裕層の道楽ぶりを表している。 近代的な都市を闊歩する富裕層の下で、自らの力で機械を動かす労働者たちが蠢いているのだ。 どんなに機械が発達しようと、それを作るのは人間だ。 手塚治虫が本作に影響を受けた事からも解るように、機械を創れるのは結局「人間」なのだ。 人がいなければ機械は目覚める事も無い。 当然、人間も機械ではない。 超過勤務や過重労働で肉体は疲れ、精根尽きるまで死ぬまで働かされる。 これでは「奴隷」と同じでは無いか。 だが、奴隷になりつつある労働者たちも黙ってはいない。 「頑張ればきっと神様が助けてくれる」と神を心の支えにして必死に生きているのだ。 労働者を励ます少女の「マリア」は、天使聖母マリアの如く人々の拠り所である。 様々な人物模様がメトロポリスをきしませていく。 壮麗な未来都市、 丁寧な作り込みの美術、 魅力的な登場人物、 起伏に富んだストーリーなどなど、我々を飽きさせない。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-01-25 12:54:42) (良:2票) |
4.《ネタバレ》 この映画こそがクラシック映画の醍醐味を堪能できる映画なのではないでしょうか。 クラシック映画の最大の魅力は“国籍人種及び時代を問わず、いかなる環境の下で鑑賞しても楽しむことの出来る普遍性を有する”ところにある、と私は考えているのですが、本作品はそれが見事なまでに表現されていると言えるのです。21世紀のこの時代に観ても十分に説得力のある先見性ではありませんか。 “手と頭脳を結ぶのは心”この決め台詞にシビレました。 どんなに時代が進んで機械化が進もうと、それを作って動かしているのは必ず人間であり、また、その人間同士の間においても、気持ちの通うことのないやりとり(現代社会に当てはめてみれば、メールやFAXのみでの伝達など)ばかりでは駄目なのだというメッセージを既にこの時代から訴えているのです。 また、会社勤めをしている自分にとって、この映画は現代社会の企業の縮図であるような気がします。会社の上層部の人間と現場で働く人間とが上手く連携をとっていかないと企業としての成長が見込めないということは、仕事をしたことのある人にとってはごく当たり前のことですよね。 映画序盤にいきなり登場する巨大なセットで観客の心を一気に掴み、ラストのクライマックスに向けてテンションを上げていくといった、明らかに観客を楽しませようと意識した作りに仕上がっているところもフリッツ・ラングのエンターテイナーとしてのプロ意識のようなものが感じられ、好印象なのであります。 〔追記〕後日、DVD(淀川長治100選のヤツ)で鑑賞したら、劇場で観たオリジナル版(122分)に対してDVD版92分と、30分も削られているではありませんか。確か、日本の歓楽街“ヨシワラ”という言葉が出ていました。しかも、オープニングのタイトルも滲んでいて“Metropolis”の文字が見えず、序盤の巨大なモニュメントも目の部分より上が画面からはみ出ているし、それに、劇場で見たときの荘厳なオーケストラの音楽もなく、終始単調なピアノの音がただ流れていただけで、かなり物足りなかったです。DVD版だと8点です。 【もっつぁれら】さん [映画館(字幕)] 9点(2006-01-21 00:17:07) (良:2票) |
3.1920年代を舐めてた。当時でもこれだけのものを作ることができたとは驚き以外の何物でもない。時代設定は製作年からちょうど100年後という事だが、その通りに都市の姿が「今」より少しだけ近未来的に見えるのが凄い。どういう役割を果たすのかさっぱり分からない機械も出てくるが、それはそれで面白いし、階級(格差)社会で酷使される労働者たちが起こす反乱、集団心理の恐ろしさなど、現代社会にも通ずるテーマを扱っているので決して古臭くない。最後の数分だったか、十数分だったか夢中になってて忘れたが、画面に釘付け状態にされてしまった。特にブリギッテ・ヘルムのロボット・マリアの演技は強烈なインパクトを残している(ロボットが感情を見せるのはおかしいといえばおかしいのだが)「SF映画の原点にして頂点」とまで言われるのも納得の名作。 【リーム555】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2011-03-08 20:07:06) (良:1票) |
2.嗚呼、美しい。映像、音楽、デザイン、編集、キャラクター全部好きです。美しや、美しや。こういう映画をもっと観たいです 【ようすけ】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2005-10-04 19:26:18) (良:1票) |
1.まず勤務交代のシーンにビックリ仰天間違いなし。世界観も好きだ。最近のくだらねえSFより風刺が利いてるし人間愛もうまく描かれていてよかった。地底にすむ労働者階級の人間と資本家とのバトルがマリアという女性と資本家の息子を軸に描かれているが、このマリアという女性の描き方が素晴らしいですな。マリアはロボットとして悪用されるわけだが、マリア役の女性の演技がいいと思います。資本家の息子はなんか気持ち悪いが、頑張ってるなーという印象を受けました。それから、音楽がなんかいいんだよね。品があるというか、余裕があるというか。まー、皮肉も入った素晴らしい作品であることは間違いないと思います。 かなり前に作られた作品ではあるけど、驚きと新鮮さを今の時代でもたくさん発見できる映画です。 【たましろ】さん 9点(2004-02-04 22:59:18) (良:1票) |