5.《ネタバレ》 自分が加害者である、と認める事は人の罪を許すのと同じぐらい難しい。彼女は小さい頃はあんなに独裁的だったのに、すっかり変わっていた。人を思いやる心をもち、人の悲しみも罪も美しさも理解していた。「救済」を行う決意も固めていた。自分の罪を認め、一生を償いに捧げる覚悟をしていたからだろう。その勇気は相当なものだと思う。「つぐない」とは、決して許されない事を前提に行うべきものである。「許される」為に行う償いは、償いではなく、その時点でその人に許される資格はない。無期懲役の囚人が「仮釈放」の申請を自ら行う事が出来ないのと同じように(申請する時点で「仮釈放」の資格はない、と判断される為)彼女はそれを分かっていた。自分の罪を認め、決して忘れぬように決めていたに違い無い。だが、病気の為に彼女は「忘れる」ようになってしまう。だから、世界中の人に「自分の罪を知ってもらい、覚えてもらう」為に小説を書いたのではないだろうか?決して「許される」為に書いたのではないと思う。最後の結末の変更は読者の為であろう(彼女の他人に対する優しさが感じられる)彼女のした事は取り返しのつかぬ事体を招いてしまった。しかし、誰にでも起こり得る事である。その時、彼女のように勇気をもって「自分の罪を認められる」人が、何人いるだろうか?「罪の告白」はかなりの勇気と覚悟を必要とする。罪を自覚し、一番苦しんでいたのは彼女であろう。最後まで彼女は苦しみ続ける事を選んだ。それが「つぐない」なのだから…加害者の苦しみと哀しみを美しく描いたこの作品は稀な映画であると思う(蛇足ながら…いくら美しいからって監督、キーラにタバコ吸わせすぎです;) 【果月】さん [DVD(字幕)] 7点(2009-08-18 10:42:34) (良:2票) |
4.《ネタバレ》 イギリス小説家であるイアン・マキューアンの『贖罪(Atonement)』(2001)を映画化。1930年代のイギリス中流家庭の姉妹セシーリアとブライオニー、使用人の息子ロビーの三角関係が主軸。 双子の従弟の家出捜索時に従姉ローラが襲われる事件を目撃したブライオニーが、その犯人をロビーだったと告発。ロビーに対しほのかに恋心を持っていたのだが、実はロビーはセシーリアと相思相愛だった。そしてロビーは刑務所に入れられ、のち兵役に駆り出されて・・という話。
ブライオニーの視点を中心に、少女、ナース、小説家の時代に分けて語られていきます。この少女時代を演じたシアーシャ・ローナンがアカデミー助演にノミネートされているのですが、危うく不安定な純粋さを持つ少女を表現し評価されたのでしょう。 映像的には、イギリスの旧い家のたたずまいや緑映える草原の美しい景色、英仏連合軍がナチスドイツに追い詰められたダンケルクにおける悲壮な光景、これらがうまく対比されていて見どころ。
老齢になって出す小説が「つぐない」。ここで実は・・という悲恋話をキレイにまとめています。この収束があってこその作品。音楽もタイプライターの音を効果音として取り入れ作曲賞を受賞しています。 そういえば、「イングリッシュ・ペイシェント」の監督アンソニー・ミンゲラが、インタビュアー役で出ていますが遺作になっちゃいましたね・・。 【尻軽娘♪】さん [試写会(字幕)] 7点(2008-03-27 16:20:57) (良:2票) |
3.《ネタバレ》 こんなラストを観たくて、最後まで観たのではない!と言いたいくらいのラスト。才気を感じさせる演出や音楽。この女の子は、演技と思えないくらいの、存在感。それが、それから4~5年、自分のやった事に気づいて、自分を責めたのであろう、と思わせるような表情に力のない女性を配してる。また、どのシーンもセンスがあふれる映像。演出も進化するんだなあ。 【トント】さん [DVD(字幕)] 7点(2009-02-06 18:41:09) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 脚本が秀逸です。ラストの展開は「やられた!」と唸ってしまいました。セシーリアとロビーの交情をブライオニーの主観で見せ直すなど工夫が感じられます。難点は、ロビーが逮捕される“レイプ(?)”事件の展開です。いくら70年前とはいえ、あんな子供の証言ひとつで有罪になるかよって突っ込みたくなります。連行されるシーンから4年後の戦場シーンへの移り変わりがなんだか唐突感がありました。もともと裁判・有罪というシークエンスがあったが、編集でカットされたのかなと思ったぐらいです。その点が私としては残念です。
【S&S】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-12-14 12:42:21) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 ちょっとブライオニーおばちゃん!あんた自分の小説の中で二人をハッピーエンドにしたからって、罪をつぐなったことにはならへんやろ!と思わず叫んでしまいそうになったが、しかしまぁ、よくよく考えてみりゃ、子供というのは純粋無垢であると同時に残酷な面もありますからな。ここまで大事ではなくても、大半の人が子供時代に誤解やら悪戯やらで、無実の人を貶めちゃった経験というのがあるんじゃないでしょうか。しかもそういう経験というのは、いくつになってもずっと記憶に残ってるものなんですよねぇ。私にもいくつか思い当たるフシが、、、、。いやそれにしても、この作品の映像表現には本当に並々ならぬセンスと気概を感じますな。イギリスのお屋敷における庭園の残酷なまでの美しさ。それはセシーリアとロビーにとってはまさに桃源郷の様でもあり、降り注ぐ木漏れ日は二人を祝福すると同時にそれが長くは続かないのだということを予期しているようでもあります。そしてまたブライオニーにとっては少女の無垢さと残酷さとを表している様。また、ブライオニーが個室の暗闇に浮かぶ妖しいライトの光に向かって歩んでいくと、そこからぼぅっと浮かび上がる二人の行いを目撃するシーンなど、もの凄く如何わしい感じが伝わってきてとてもいいですね。戦争時代になると一転して画面は暗く冷たい色調となり、例の長回しのシーンなんかはロビーの出口の見えない絶望的な心情を表現しているようで、これまたため息もの。そんなわけで、映像表現のよさをいちいち取り上げていたらキリがないよと言うほど、どれもこれも凝った作りになってます。 【あろえりーな】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-10-20 18:34:52) (良:1票) |