7.ネタバレ グランド・ホテルの回転ドア(この時代にもうあるのね)をくぐると、それに呼応するかのように、それぞれの人生も回転します。社長は犯罪者へ、帳簿係は絶望から希望へ、踊り子は陰鬱から高揚へ、タイピストはお金から情へ、盗人は恋を覚え、生から死へ。そして、元の回転ドアをくぐり戻っていきます。犯罪者は横の戸口から、死者は裏口から出ていくのもどこか暗示的。その様子を何事もなく眺めるような円形ロビーの俯瞰ショットが「人生はめぐる、いい事があれば悪いこともあるさ」とささやいているようでなんとも象徴的でした。形式としてその名を残すだけでも誉れ高い作品です。 【彦馬】さん 8点(2004-05-04 16:39:28) (良:3票) |
6.ネタバレ たまたまのある日、ベルリンの一流ホテルに集まったいろんな人々の人生模様を描いてみせる。高名な悩めるプリマ、お金に困っている男爵、死を宣告されているしがない労働者。美しい秘書、危なくなっている会社の社長、それにホテルの従業員も。話は男爵を中心に回っているように思えるが、彼は思わぬ最後となる。「グランドホテル、人々が訪れては去っていくところ」その限られた舞台で生と死、喜びや悲しみ、怒りや希望、人間の欲望や高潔さ、と様々なドラマが凝縮されている。印象的なのは死を宣告されて絶望の淵にいたライオネル・バリモアが、秘書のJ・クロフォードと希望を持って旅立つ姿と、男爵の困窮してもぎりぎり踏みとどまり人間の気高さを失わない生き方。多くの登場人物をきっちり描いて、彼らのそれぞれに考えさせられるドラマがあるのが素晴らしい。ここでもガルボは美しく魅力的。 【キリコ】さん 8点(2003-10-21 14:30:10) (良:2票) |
5.ネタバレ たくさんの人の人間模様が描かれているので、誰に共感するかは人それぞれ。私はプリマに感情移入しっぱなしでした。世界一(だろうと思う)のプリマである彼女はベルリン一のグランド・ホテルに滞在してベルリン公演に臨む。ところがプリマは鬱状態になっていて公演をすっぽかしてしまうわけです。頂点を極めた人の焦燥感はわかります。バレエ人気も翳りが見えはじめ、お客さんの拍手も明らかに小さくなっている。それこそ果ては『サンセット大通り』のグロリア・スワンソンのようになるかもしれない。そんなときに、流星のごとく現れたのがダンディな男爵。二人は瞬く間に恋に落ちる。ところが男爵はお金に困っているホテル荒らし。実際のところ、プリマの持っている真珠を盗もうと部屋に侵入した際に出会うわけです。この二人は。プリマはお金持ちなので、男爵のためなら何でも投げ出す気持ち。一方の男爵は惚れた女に援助をしてもらうことなんてできない男気の持ち主。プリマは男爵に会えたことで、一気に躁状態に突入するんですよ。はじめて恋を知った少女のように部屋で唱い踊る始末。公演も大成功。むちゃくちゃカワイイ。男爵のほうはというと金策に困って大会社の社長の部屋に盗みに入るわけですが、運悪く殺されてしまう。もう、何度思ったことか。プリマに真珠をもらえよぉ~、お金だって用意してくれるよ、そして二人で幸せにくらそうよ、と。これがケイリー・グラントだったら即行で彼女にタカってたはず。コホン、それはさておき殺されたことを知らないプリマは一晩中彼を待ち続けるんですよ。で、事件を知らされることなくホテルを去る。ああ、なんと哀しいんだろう。せめて生前に男爵がもらしていた「初めて恋を知った」という言葉を伝えてあげたかった。男爵がかわいがっていた犬を引き取って欲しかった。だって『タワーリング・インフェルノ』のアステアは猫を大事に抱えていたじゃないですか!! 犬がどこに連れて行かれたかはわからない。たとえ事件が起きても何事もなくゲストを送り出すのが一流ホテルの務めなんだから。でも、でも、せめてプリマの付き人くらいは彼女のために動いてほしかった。そんなビジネスライクな人々に囲まれていたら鬱にもなるよぉ~。とまぁ、異常なほどにプリマに感情移入をしてしまったのでした。 【元みかん】さん 7点(2003-10-17 18:05:23) (良:2票) |
4.頽廃の匂いと言うほどではないが、アメリカがヨーロッパ・とりわけドイツに抱いている世紀末的な雰囲気への憧れが感じられた。子どもが大人に抱くような視線。滅びや衰退ってものの厳粛さへの過剰な評価。死が近づく病人、人気下降気味のバレリーナ、崖っぷちの会社、それらがウィンナワルツをBGMに旋回していく。当然のように犯罪も入り込んでくる。歴史を重ねてきた都市だけが醸し出せる「大人」の雰囲気。アメリカ映画が持てなかったヨーロッパ的なものを、とりわけ大事そうに画面に塗りこんでいるところが、いじらしくも楽しかった(ドイツの小説をアメリカで戯曲にしたのの映画化と聞いている)。この様式が拡大されたのが、アルトマンってことか。『グランド・ホテル』にはアメリカのヨーロッパへのコンプレックスが感じられるが、アルトマンがそれをより発展させ、混在国家アメリカに文化にしてしまった。最後に「事件」を置いてキュッと全体を締める手法なんか、『ナッシュビル』でより大規模に再現してくれた。そのアルトマンの映画が、ヨーロッパでより高く評価されたってあたり、旧世界と新世界の相互の「憧れ合い」が微笑ましく見えてくる。この手のドラマでは、人々がそれぞれの人生を担って同時に生きていることを示すため、当然のように長回しの手法が生かされてくるんだ。 【なんのかんの】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-03-18 10:02:32) (良:1票) |
3.この時代の映画が、今の時代に残っていて、鑑賞に堪えうること自体がすごい(逆にこれを70年後にサルまねして、下らない映画しか作れないのは、相当、痛い)。 【みんな嫌い】さん [DVD(字幕)] 6点(2008-08-31 18:00:50) (良:1票) |
2.ネタバレ “●●グランドホテル”なんていう名のホテルは日本に、いや世界中に星の数ほどありますが、その起源と思わせるかのような、いかにもといったこのクラシカルなタイトルは実はかなり好きです。 豪華な配役、と当時は結構もてはやされていたそうですが、そのほとんどの役者が馴染みのない人たちばかりで“5大スターの競演”とか言われてもイマイチありがたみが出てこない・・・(涙)。 私は、5人全員のエピソードに繋がりを持たせる必要はないと思いますが、もう少しそれぞれの話に面白味があればもっと楽しんで観れたことだと思います。 映画の序盤に出てくるエントランスホールの長回しもホテルの格の高さを醸し出していますし、劇中で殺人が起きてもその直接的な描写はせず、男爵の横たわる姿すら見せないのは、ホテルの豪華さや客層の良さに決して引けをとらない非常に上品な演出だと思います。 【もっつぁれら】さん [映画館(字幕)] 7点(2007-10-07 10:16:21) (良:1票) |
1.ネタバレ 医師の言葉に象徴されるように、去る者あれば来る者があり、死に行く者があれば生まれる者がある。一人一人になにかが起きても世界は続きます。それでもやっぱり印象に残ったのはお金に関すること。死んだ男爵を悲しむ友人のクリンゲライン、男爵に恋していたフレムフェン。二人は男爵の死を嘆きながらも、クリンゲラインはお金の力でフレムフェンを誘い、それに乗り幸せそうにホテルを出て行く二人。男爵の死がお金によってもたらされた不幸であるのに対し、クリンゲラインはお金によって幸せを手にするという強烈な皮肉を感じずにはいられませんでした。 【アンダルシア】さん [DVD(字幕)] 6点(2006-01-22 23:22:11) (良:1票) |