《改行表示》 7.《ネタバレ》 『ミザリー』の原型とおぼしきストーリーは、似たような例をいくつか知っているため新鮮味はない(もっともこちらの方が先だけど)にもかかわらず、ベティ・デイビスの圧倒的な演技力にぐいぐいと引っ張られた。あの魚の腹のようにぎとぎとした光を放つ三白眼。 しかも途中まではありがちに思えた物語は、終盤の逃避行に至って予想外の着地をみせる。あんなにおぞましかったジェーンが、信じられないことにいじらしく、可愛らしくさえ見えてきて、それまでの恐怖と嫌悪が憐れみと哀しみに反転する。 ラストで明かされる意外な真実。ブランチの無防備すぎる行動にも、姉をいたぶりながらも肝心なところで姉にすがりつくジェーンの行動にも、合理的な説明がついたのには感心した。 ジェーンは二つのストロベリーアイスを手にして言う「だめよ、これはブランチのなんだから」。この台詞で、彼女が姉を愛していたことがわかる。姉を妬み、憎み、その一方で罪悪感に苦しみつつ、間違いなく姉として愛していた。単純に憎むことも愛することもできない、同じ女優ゆえ、姉妹ゆえの複雑な感情。 何がジェーンに起ったのか。それを知っていたのは姉のブランチだけだった。いや、本当は、誰も知らなかったのだろう。彼女が人知れないところでどんな苦悩を抱えていたのか、彼女がどんな風に心を病み、狂気の渦に飲み込まれていったのか。ラスト、ジェーンは海岸でみんなに囲まれて楽しげに踊る。彼女を遠巻きに眺める人々の顔には恐怖と嫌悪、嘲笑と好奇だけしかない。何がジェーンに起ったのかは、誰も知らない。その壮絶な孤独に、胸が苦しかった。 【no one】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-02-10 20:38:30) (良:4票) |
《改行表示》 6.《ネタバレ》 面白いです。 妹ジェーンは一世風靡した子役。姉ブランチは大人になってから才能をみとめられた人気女優。大人になって演技が大根と低評価であった妹は姉を車でひき逃げしてしまう。その事故で下半身不随になってしまった姉は表舞台を退き、妹と2人で隠居生活…。 ブランチの性格は健気で儚げ、純粋で清らか。一方ジェーンは自分勝手、無慈悲、妄執的、暴力的、破滅的…。ブランチは酒におぼれる妹にも懸命に接する。健気過ぎて、感情移入してしまいます。 しかし‥序盤から感じていた幾つかの違和感。だんだんと気になってきて、どんどん「どう考えてもそうなるんは不自然!」 と思ってくる。 その違和感とは、まずプロローグシーンで、子役として大活躍しており傲慢になっている妹に憎しみに似た感情を持っていたブランチの姿。悔しさを「絶対に忘れない…」と呟くブランチ。そこからどうしてあんな邪気のない大人になれるのか? 更に、あまりにも従順すぎるブランチの姿。愛鳥をチキンにされたり、ネズミの丸焼きを出されたり、相当壮絶な仕打ちを受けているのに、ただただ受け入れている。不自由な体とはいえ、彼女は妹を罵倒すらしない。なぜ? また、題名にたいする違和感。「何がジェーンに起こったか、でなくて何をジェーンがしたか、が正しい題名じゃないのか?」と。 しかし、これらの違和感達はあるべくしてある違和感で、土壇場できちんと謎解きしてくれます。 オチとしては意外ではないかもしれませんが、成程、とすっきりと解決します。 ラストでのジェーンの無邪気な表情や妄想と現実が入り混じったダンスは、いろんな意味で鳥肌ものです。 女という生き物の怖さ、浅はかさ、愚かさ、哀しさ、そして血の繋がりという危うい絆。この映画には詰め込まれています。 今となっては「姉妹に秘密事はできないわ・・」といったブランチが怖い。 この映画は、まさに、「何がジェーンに起こったか?」なのです。 【まりんこ】さん [DVD(字幕)] 9点(2009-07-29 22:17:37) (良:3票) |
5.幼少時から憎しみ合った二人の密室劇で、山姥のようなジェーンがブランチの思惑を一つ一つ潰してゆく様は丹念なカメラワークもあいまってホラーであり心底恐ろしい。踏み躙られてもジェーンを思うブランチの心境が理解し難かったのが、「何がジェーンに起こったか?」が告白するラストで明らかになり、胸が塞がる。隣人とピアニストがもっと話に絡んでくれれば。ジョーン・クロフォードとベティ・デイヴィスは犬猿の仲だそうで、本作で二人を制御できるのはアルドリッチ監督ならではか。撮影現場の緊張感も半端なかったと想像できる。全編が異様なオーラに包まれる傑作。 |
4.《ネタバレ》 《ネタバレ有ります注意です!》《ネタバレ有ります注意です!》《ネタバレ有ります注意です!》 なんてむごい結末。もうさ、老婆だろうが、ヤマンバだろうがなんだっていいや 優しくギュッと抱きしめてあげたい なでなでしてあげたい。 泣いたっていいんだよ 相当辛い思いをしてきたんだから ずっと見守っててあげるから。 アイスクリーム、自分で買わなくたっていいんだよ 買ってあげるから2つでも3つでも。(あなただけに買ってあげるから。) 哀しすぎた結末に胸が痛い。ずっと心にひきづる 忘れられないベティ・デイヴィスの変わり身とあの表情。 展開こそ全然違えど(かなり真逆になってしまうが)チャップリン名作の〝街の灯〟でチャップが最後に見せた顔演技の時ほどの衝撃を感じた。 ベティ・デイヴィスがすごく良い。その後、アカデミー賞授賞式当日にまつわるエピソードや、ジョーン・クロフォードとの確執エピソード等々、 こぼれ話的なものでもいろいろ楽しませてもらった。まあ、とにかく今後一生忘れる事はないでしょう。そんな確信を持ってしまったベティ・デイヴィスの表情でした。 【3737】さん [DVD(字幕)] 9点(2010-01-16 19:10:08) (良:2票) |
《改行表示》 3.《ネタバレ》 (ネタばれ思いきりしてます)ENDマークが出てから、しばし呆然とオソロシイ余韻が残る。凄いオチだった。最後の数分で、「何がジェーンに起こったか」わかるんである。この姉妹の真の姿も。互いに憎みあい、でも反面依存しあっているという家族ならではの倒錯。100分以上も妹の姉への虐待につき合わされ、彼女の狂気を見てきた観客は姉ブランチが殺されてしまうかも、との危機感を抱く。でも、違った。殺したりしない。妹にとって姉は困った時頼る存在なんだもの。ストロベリーアイスは必ず姉の分も買うんだ。 妹を轢き殺そうとしたのは、姉の方だったのだ。そして真相を明かさず、妹が良心の呵責に苛まれ、理性を失うに至らしめたのも貞淑な姉、ブランチなのだった。ぞおーっ。 「あなたは知らないのよ あの子がどんなに輝いていたか」お手伝いさんに語る姉の喜びに満ちた表情は芝居ではない。姉は妹がスターだった子供の頃の憧憬を抱き続けていた。愛が、嫉妬と憎しみで捩れた二人。全部が明かされた陽光眩しい海岸、強烈なラストシーン。B・デイビスの化け物じみた怪演は戦慄の極み。しかしそうなった理由、真実はその姿以上に大きな衝撃でありました。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2018-07-27 20:46:17) (良:1票) |
《改行表示》 2.「二大女優競演!」ともなると、此処までやらにゃいかんのだ、という悪しき前例を作ってしまった映画、とも思えるのですが、もうとにかくこれが、コワくてイヤらしくてエゲツないんです。 ベティ・デイヴィスの特殊メイク顔(??)も十分にコワいんですけど、物事の裏側を浮き彫りにして不穏な空気を演出するローアングルのカメラが、これまたコワくてイヤらしくてエゲツない。 ラスト、どこまで引っ張るのだろうと思っていると、「かつて何がジェーンに起きたのか」「そして今ジェーンに何が起きているのか」というところに繋がって行って、実は意味深なタイトルであったのだなあ、と。 それにしても、残酷描写に頼らなくったってこれだけ怖い映画を作ることはできるのであって、昨今の映画は残酷描写に頼り過ぎなのでは、とも思えてくるのですが、これもまあ、時代の流れというか、いったんソチラに踏み込んでしまうと簡単には戻れない訳で、致し方ない面もあるのかなあ、などと思いつつ。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2017-11-21 08:20:44) (良:1票) |
《改行表示》 1.《ネタバレ》 憎しみ合う姉妹の映画です。 うまく作られていますね。 事故が起きたときは、顔が映ってない。 なのに、姉が車いすなので、勝手に被害者に。。。 酔っぱらっていたので、やった覚えのない妹。 だから姉にあんな仕打ちを? 姉はなぜ、自分が悪かったともっと早く言ってあげなかったのかな・・・ まぁ、憎しみ合うのが題材だから、こうなるのか、 本当の姉妹なら、こうはならないと信じたい。 ジョーン・クロフォードが一方的にかわいそうに見える映画なんだけど、 「愛と憎しみの伝説」を見てしまうと変わりますよ。 【新しい生物】さん [DVD(字幕)] 9点(2016-02-07 04:35:29) (良:1票) |