11.《ネタバレ》 霧の中には人を襲う何か。身の危険を感じた住民たちはスーパーマーケットに立て篭もる。巨大生物系のパニック映画や名作ホラー『ゾンビ』を彷彿とさせる展開です。子を守る父親が主人公という設定は、『宇宙戦争』(2005)と同じ。自分も人の親。恐怖で身を硬くして画面に見入りました。外の化け物は確かに恐ろしい。けれど内の人間も同じくらい怖かった。たった一人の女に扇動されたヒステリー集団。彼らに恐怖を感じるのは現実味があるからです。学校や職場を思い出してみると分かる。集団には派閥があり、リーダーが存在した。目的は一緒のはずなのに手法で対立する。群れに身を置くことはストレスを伴う事。疎外されやしないか、虐められないかと神経を使う。その緊張感を知っているから、宗教女の暴走を絵空事とは思えなかった。主人公には強く共感できました。極限下においても、自分と息子と仲間の事をバランスよく考え行動できた。なかなか出来る事ではありません。彼の選択は間違っていなかった。ただ1点の最悪のミスを除いては。銃を手にした事。太刀打ち出来ない怪物を目にしたタイミング。そして息子との約束「僕を怪物に殺させないで」。全ての状況が、彼に最後の決断を迫っているように思えます。死ぬしかないから死ぬ。自殺する人間の心境が分かりました。せめてもの慰めのため。でも霧は晴れました。決して晴れることはないと信じて疑わなかった霧が。霧がかかっていたのは自身の心であった事に気付かされます。今まで観た映画の中で一番恐ろしかった。もう観たいとは思いません。心が痛すぎる。辛過ぎる。でも絶望した時には、この映画のことを思い出そうと思います。 【目隠シスト】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2009-05-03 17:59:14) (良:4票) |
10.《ネタバレ》 あんな陳腐な怪獣を出しておきながら、「トホホなB級パニック」にならずそこそこ見ごたえのある人間ドラマに仕上げたというダラボンの手腕はさすが。 主役のトーマス・ジェーンという変な名前のスティーブン・セガール似のタフガイは、パトリシア・アークエットのダンナだそうだが、この起用にはとても疑問がある。…その理由はおいおい以下に。 煽動や群衆心理の恐ろしさとか運の問題とかいろいろあるが、私は隠されたテーマがあると思っているのでそれだけ書きたい。 息子のビリーの描き方は、ちょっとヘンじゃないか。7歳か8歳の男児にしてはまるで無力なペットのごときで「?」と思わざるを得ない。いくらなんでも、「意図的」なものを感じるわけです。 ドレイトンはNYなどで認められた芸術家のインテリで、ブルーカラーの地元民(たとえばジム)からはイヤミに思われている。選挙では必ず民主党に入れるようなリベラルな人物として描かれているわけです。その息子のビリーは親から「伝統的なマチズム」を求められていないし、そのように育てられていない。ドレイトンが息子に求めるのは「のびのびと」とか「個性」とかいうものだったでしょう。ですから、ドレイトンはセガール似のタフガイではイカんのです。 その教育の結果、有事にビリーは怯えることしかできない。この姿は、従来アメリカ人の男の子に求められてきた姿とはかけ離れているわけです。 そして、ラストの心中は、この「腰抜けのビリー少年」が引き起こしたものなのです。 ドレイトンは同乗者は行きがかり上殺したまでで、「決して怪物に僕を殺させないで」という息子との約束を守るために、「寝ている息子を」撃ち殺した、なのですから。 さて、「フツー程度にマッチョなアメリカ人の親父」に育てられた男の子なら、こんなふうにパパに頼んだでしょうか?そして、この有事に、恐怖のあまり寝てばかりいるでしょうか? もしもビリーがこれまでに怪物と闘うパパを励ましたり、「僕も手伝うよ」とか「必ず助かるよ」とか「まだ希望はあるよ」とか「ご飯が食べたい」とか、一言でも言っていたとしたら、ドレイトンは息子を撃ち殺したでしょうか? 私はそうは思わない。原作はどうなっているのか知らないが、息子を「腰抜け」に育てたのはドレイトン本人であり、リベラルが裏目に出た結果である、という皮肉な構造になっているのだと思います。 【パブロン中毒】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-12-04 18:05:51) (良:4票) |
9.《ネタバレ》 中盤で、カルト的ではあるにせよ”神の御心のままに”生きて、銃殺されたおばさん。
それに対して、殺人や自殺(自殺ほう助も含む?)を禁じたキリスト教の神の教えにそむき、大事な息子を早まって殺してしまい、打ちひしがれた主人公のおじさん。
映画のラストは、原作にはない内容だということで、このオチについては、監督らの考えが入っているとはいえ、原作者キングは絶賛したという。
ということは、キングは宗教というものを、心から信じているというよりは、客観的な見方で「信じすぎても、信じなさすぎても。どちらにしても、いい結果を生み出さないかもね」というドライな価値観を持っているのではないだろうか。
原作のラストは、ラジオから流れる放送を聴いてそこで語られていた避難所(安全かどうかは読者の想像次第)に向かうという場面で終わるそうで、その場所の名前は”HOPE(ホープ。希望)”。
でも当初は名前をはっきりつけておらず、ファンから抗議があって書き換えたそうで、どちらかというと、ファンが”希望”を抱かせるオチを望んでいたのでしかたなく合わせたということだったのかもしれない。
(「ショーシャンクの空に」もキーワードがhopeでしたからね)
そういえば「ミスト」の原作発表後に作られている
『危険な状況下でラジオ放送で語られる<安全地帯>は安全じゃない』
という法則をはじめて作ったのはひょっとしたら「ミスト」の原作かもしれませんね。
いずれにせよ私がこの後味の悪い映画を何度もついつい見てしまうのは、スーパーという閉ざされた場所で繰り広げられるシチュエーションスリラーとしての面白さにつきる。 【フィンセント】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2017-06-19 17:51:11) (良:3票) |
8.《ネタバレ》 スティーブンキングの原作は2バージョンありますが、キングフアンの自分は事前に2バージョンとも読んだ事があり、ストーリーを把握した上での鑑賞でした。 そしてストーリーをあらあら知っていたからこそ、映画用に改変された最後のくだりは本当にすごいな、と感心してしまったわけです。 それなりに希望を感じる原作のラストを、よくまぁこんなひどい(残酷な、シニカルな)ラストに変更したものです。 好き嫌いは別れるでしょうが、少なくともこの映画を観たすべての人の印象に残る事は間違いないでしょう。 しかし、劇中で老人が言っていたように、最大限の努力を行いやるだけやった結果としてのあの選択ですから、それが「結果的に裏目に出た」だけであって、あの選択を行った事自体は絶対に間違っていないのです。 人間、生きていく上で常に大なり小なりの選択をしながら毎日を生きているわけで、誰しも「あのときこうしていれば」と思った事は1度や2度じゃないでしょう。 でも自分なりに最善を尽くして選択したものであれば、それが結果として悪手となったとしても、それは決して間違った選択ではないのです。 たとえそれがこの映画のように残酷な結果であったとしても。 【あばれて万歳】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-11-06 17:09:22) (良:2票) |
7.《ネタバレ》 125分間、ツッコミ満載で、スティーヴン・キング感が思いっきし満載だった上に、衝撃度も激震だった状態にてフルに楽しませてもらいました。(一部、クモのシーンだけは今後二度と目にしたくありませんが。さぶいぼです。><。) そして、その後のお楽しみとしまして、皆さんのレビューを全て読ませていただき、そこからまたさらに3時間ほど楽しませてもらった事になるんで、つまりは、ミストで計5時間ほどの時間を楽しませてもらった事になるんですが、そして、そこで感じた事、思ったことなんですが、今現在において、皆さんの投稿の中で 投げ捨てな意見が一個もないんです。なおかつ、茶化してハイ終わりというような投稿だって一個も見当たらないんです。(モンスターパニック映画なのにですよ。 な・の・に・ですよ。) ・・ いやあスゴイなと思いました。なんせ、ドリームチャッチャーの時とは大違い^^; それだけ今回の作品ではスティーヴン・キングの世界にどっぷり嵌りこんじゃって さらに衝撃度も高かったもんだから真面目にたくさんの方のご意見が飛び交ってしまったのでしょうかなあ。なんて思ったりいたしました。まあ、なんにしてもミスト面白かったです。 【3737】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-12-04 21:44:18) (良:2票) |
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6.《ネタバレ》 とにかく怖かった。得体の知れないモンスター達はもちろん怖い。人間どもが太刀打ち出来ないレベルの攻撃力を持つ様々なタイプのモンスター達(触手系、バッタ系、蜘蛛系、パラサイト系)からみたら人間は弱者でしかない。でもそのようなモンスター映画は数あれど、本作に至っては弱者であるところの人間が実は一番怖い。正義感、自己愛、宗教観、そこから来る究極の選択。これらの感情は人間ならではのエゴから来るもので、このエゴは殺意を伴う危険性をはらんでいる。つまり殺意を伴う人間のエゴ=モンスター という事であれぼ、モンスターパニックものを装った哲学宗教的ヒューマンドラマなのかなと。原作読みます。 【ちゃか】さん [映画館(字幕)] 8点(2015-02-28 23:35:57) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 おそらく、この映画のラストほど虚無感に襲われるエンディングはなかった。おそらく観た人の多くが、「ありえない」「酷い」と感じるはず。ぼくもなんとも言えない衝撃と後味の悪さを感じた。 でも、しばらく経つと、そういうわかりやすいエンディングは、逆に確信犯的なのではと思えて来た。だとしたら、ストレートに事象だけを受け止めるのではなく、先の見えない霧に包まれた状況(それは人生も同じようなもの)の中で、決して失ってはいけないものは「希望」なのだ、という逆説的なメッセージなのだと思う。“人間の愚かさ”などという言い表されたものではないのではないだろうか。それをB級然としたホラーでやってしまうのがダラボン監督のすごいところ。 見終わった後に映画に心が支配される。そういう意味では、本当に本当にすごい映画。 【月ひつじ】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2009-05-06 16:16:42) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 キング作品を映像化する時非常に難しいといわれているのが、原作ではスッと入ってくる設定も映像にしてしまうと非常にチープになってしまうところ。この作品も例に漏れず、原作をみながら本気で恐怖した部分がなんともいえない雰囲気に。ただパニック映画としては非常に良い出来で、極限状態に置かれた時の人間の醜さと怖さがコレでもかコレでもかと描かれています。特に「いけにえ」を捧げるシーンでは寒気がしました。あと、私は原作のラストシーン(主人公達のその後が曖昧なまま終わるので賛否両論あるかもしれません)が好き派なので、映画版のラストシーンはかなり辛かったです。 【なな9】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-12-04 05:41:58) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 「キングのファンとしては、割と原作のイメージに忠実であるというだけで嬉しかった。タコ足の登場シーンでは普通なら失笑してると思うけど、「うわ、懐かしー」と喜んでしまった。そうそう、数あるキングの小説のなかでも『霧』は飛び抜けてB級風味が強いんだよね。
ラストの賛否が分かれるのは当たり前。ただ正直な話、原作のぼやけた幕切れよりは数段ましだと思う。微かな希望を暗示する結末ではあったが、はっきりいってお茶を濁して終わった印象だった。キング本人が映画版の結末を認めたのも、あの中篇の最大の欠点がそこにあると自覚していたからじゃないだろうか。
このラストはあざといといえばそれまでだが、作品のコンセプトが明快になったのも確かだと思う。つまりは、ときには災難それ自体よりも人の恐怖心やパニック、絶望のほうが命取りになり得る、ということ。誰も指摘しないのが不思議だけれど、この作品の状況設定はスーパーマーケットに閉じ込められる『ゾンビ』によく似ている。『ゾンビ』の方は人間同士の悪意によって自滅するのに対し、こちらは精神的な脆さに焦点がある。仮に異次元の怪物ではなく大規模な自然災害を題材に選んだとしても、似たようなストーリーが成立したはずだ。
冷静に振り返れば、実は人々が冷静、かつ用心深くさえいれば、死傷者は半減しただろう。怪我人が霧中に危険があると証言した時点で、そこに留まって警察や軍隊の救援を待つというごく当たり前の判断をしていればよかったのだ。遭難したときに下手に動かずレスキューを待つのが賢いのと一緒で。ところが恐怖という感情は厄介なことに、伝染する。スーパーから逃げ出すはめになったのは恐怖心に支配された群衆のせいだが、逃避行に最悪の形で終止符を打ったのは、自分たちの恐怖心のせいだ。そもそも冷静に考えれば、工夫次第でさらに生き延びることができたはずではないか? 最後に再登場するあの母親が、もう一歩で助かり得たのだという冷厳な事実を突きつける。
ところでこの狂信者の女、アメリカ人からするとどれだけリアリティが感じられるキャラクターなのか、気になるところだ。日本人からすればこいつに惑わされるなんて絶対ありえないように思うが……いや、細木数子みたいなのがいれば数人は騙されるのか? 【no one】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-09-26 11:56:27) (良:1票) |
2.予備知識ゼロで鑑賞。ラストは賛否両論あるでしょうが撮り方がとても上手い。 人にこの映画は薦めないけど、映画としてとても良くできた作品だと思う。 【虎王】さん [映画館(字幕)] 8点(2008-06-01 00:00:41) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 原作未読。クリーチャーの造形からしてクトゥルー神話かと思いました。 軍の実験で異次元世界と繋がり、その世界の生物が霧の中から現れ人々は不安と恐怖でパニックに陥る。 忠告を無視し危険を顧みず子供を助けるため直ぐに外に出て行く母親。続々と現れる異次元の生物を前に現状を打破しようとする者。自分の理解を超えた存在を否定し出て行く者。なにもせず諦めてる者など十人十色。 そんな中、常日頃から妄言を吐き散らして嘲笑の的でしかなかった狂信的な女性は神の言葉を聞く事のできる預言者扱いを受ける。普段なら戯言で済ませるモノも、妄言(聖書の引用)が当ってしまうあの状況では縋りたくもなるか。まぁしかし心神喪失な人々を陽動してカルトですなぁ。 極限に置かれた人間模様、パニック連鎖は巧みに凝らされていて嫌になるほど。 世界は霧に包囲され異形の生物が闊歩し、まさに世も末状態。絶望して自ら命を絶つのも理解できるわ。最後の主人公の選択は究極でしたが、霧の中の生物の足音や鳴き声が霧が晴れていくと共に戦車や車の音に変わり、生物が軍に掃討されていくという衝撃度はお見事過ぎる。最初に出ていった母親も無事に子供と一緒に保護されていて、しかも来た道から軍が来るというのがまた無情。 【ロカホリ】さん [映画館(字幕)] 8点(2008-05-13 18:18:35) (良:1票) |