15.だめ親父なんだけど、トラビスの気持ちがジーンと伝わってきた。8ミリ映画の場面と妻との背中越しの会話は、若くて二人の愛は永遠に続くと思っている連中には、到底理解できないんだろうけど、この歳になると、気持ちは痛いほど分かってしまう。息子を母親に会わせても、自分はその場に行けない気持ちは、愛、孤独、逃避、自由、敗北、それらに対するこだわりが、複雑に絡み合ったものに感じた。男は誰でも、ふと一瞬でも、こんな気持ちを持つことがある。このギターの響き。西部の乾いた、もの悲しい映像。Nキンスキーの美しさ。いつまでも浸っていたい。 【パセリセージ】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2006-03-06 22:29:30) (良:1票) |
14.ラストのトラヴィスの行動を見て、「バカなやつ…」と思ってしまう。でも心からの軽蔑をこめてそう思ったわけではなく、軽蔑と賞賛、同情と共感の入り混じった複雑な感情を込めての「バカ」なのです。 トラヴィスの行動はけっして褒められたものじゃない。弟夫婦の気持ちを無視しているし、息子を母親が一緒に生活しても幸福が保証されるとは限らない。しかし自分が一緒にいればまた二人を不幸にしてしまうかもしれないと知っているからこそ、あえてひとりで夜明けのハイウェイを行く彼の横顔を見ると思わず…。トラヴィスをかっこいいとは思わないけど、嫌いになることもできなかった。あの男はあの男なりに家族を愛していて、懸命に二人を幸福にしようと頑張ったのだから。人間の弱さや愛情というものの難しさについて、考え込まずにはいられない。 映像、音楽の美しさには驚いた。とりわけ映像については、個人的にはいままで観た映画のなかでももっとも美しいとさえ思った。全編にわたって圧倒的なクオリティ。「映像詩」という言葉はまさにこのような作品のためにあるんじゃないだろうか。 【no one】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2005-07-05 14:01:26) (良:1票) |
13.《ネタバレ》 映像、音楽は綺麗ですね、しかし・・・。やはり、弟夫婦の方にどうしても感情移入してしまいます。一体全体、ハンターをわが子と思い、慈しみ、大切に育ててきた4年間は何だったのか?しかも、エンディングの後、ハンターは本物の母親と幸せに暮らして行けるのだろうか??過去に一度放棄したというのに???・・・ハンターが弟夫婦のもとで不幸せに暮らしてでもしていたのなら、すんなり納得できようものだが、そのようなことは全くもってない。そんな状態で、素直に兄夫婦に共感など出来るはずも無い。・・・しかし、それらの事は全て意図した上で造っているのでしょうけど。あまりにも不快感が多かったので、点数は低めに。 【あさしお太郎】さん 3点(2004-08-21 23:04:47) (良:1票) |
12.茫漠と広がる砂漠のような虚無感。彼が旅したのは自らの心象風景の中だったか。しかし、失われたものを快復するために彼は目指す。自意識に根ざす心象風景は常に止め処ないが、そこに一筋の光を見出すことは不可能ではない。砂漠にも静かな雨が降ることがあるだろう。優しさという名の愛情が彼に希望をもたらすが、それはもう遅すぎたか? でも終わりは始まりともいう。大切なのは彼の心の在り様であり、快復であろう。柔らかに降り注ぐ雨は静かに地下へと水を湛え、やがて彼の人の水脈にも連なっていくだろう。彼に必要なのはその為の時間だけである。それが自然というものだろう。 【onomichi】さん 9点(2004-08-13 13:30:36) (良:1票) |
11.トラヴィスのような奴が本当に自分の親だったら嫌だ。でも、その身勝手さや心に葛藤を抱えながらも最後は振り向かずに去って行くラストは、男の孤独や悲しさ・人生の不可逆さみたいなものを感じて、ど~しようもないくらいダメな奴なんだけど、この男くささっつ~もんに私は無性に惹かれるもんがあって、無性にかっこ良くも感じてしまった。もしかしたら、私の求めてた男の理想像ってのはこんな奴なのかも知れない。ダメ人間だけど…。にしても、皆の中にも「パリ、テキサス」のような生まれ直すことの出来る唯一の場所ってのはもしかしたら、きっと、あるのかも知れない。 |
《改行表示》 10.砂漠と群青の空…鮮やかなコントラストにひたすらと歩き続ける男があった。その不器用さ故、ただ歩き続け、「パリ」と言う名の目的地を漠然と追う。そして、男は眠らない..何も得られない現の夢を彼は彷徨う。 塀の上に整然と並んだ靴…一つ、また一つと“家族”が持ってゆく。出来た隙間を詰める姿は、必死に記憶と時間の空白を埋め合わせようと藻掻いている様にも感じられる。 …再び近づく親子の心..それは、嵌める事の出来ないパズルの1ピース。スペースを見付けても、周囲と交わる事は叶わない..それこそ4年の歳月が彼に気付かせた新しいピース。 弟夫婦の哀しみは、灯りが鏤められたLAの宵闇の様に重く、胸を刺す。 彼にとっては、約束の地「パリ」は架空の安息でしかないだろう。母子が映る窓をひっそりと眺めて、再び向かうのはやはり、砂漠にポツリと存在する『夢』だろうか..。 【MAZE】さん 9点(2004-05-22 17:52:13) (良:1票) |
《改行表示》 9.《ネタバレ》 今日は良い子の日、としょうもない事を書こうとしましたが、そんな遊び心は吹っ飛んでしまいました。私にはこの子が、たいそう 良い子、でもあり、残酷な子、にも映りました。 この4年が過去の3年に勝てない、、、愚かだとは思うけど、どうしても私は養母の視線で観てしまった、のでショックです。(他のレビュワーさんとは違って私は)子供部屋の養母に泣けた。とは言え、鏡の中でキンスキーの表情が変わっていく場面にも堪えきれないものもありますが。。人間の弱さと情けなさを集約したようなこの映画、ラストのトラヴィスの表情には愕然ときました。。 これは観る人の性別・未婚既婚・親か否か、によってかなり感情移入の仕方が違うでしょうね。でもやっぱり屁理屈こねても、労働と子育ては大事だってことです。平たすぎる感想ですみません。 【かーすけ】さん 8点(2004-04-15 15:51:03) (良:1票) |
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8.《ネタバレ》 心に大きな傷を持つ鬱病患者が、自分を癒すために他人の人生をひっかきまわす不愉快な話。傷の原因は自分たちが自己に執着しすぎたために起こった悲劇なのに、何も反省が無い。最期は自己満足の表情で終わり。ふざけんな。学校からの車道をはさんだ帰り道は非常に良かったけど、帳消しになるほどイヤなラスト。 【ラーション】さん 6点(2004-03-29 02:30:55) (良:1票) |
7.砂漠と都会という二つの対称的な映像が美しい。しかし、BGMが耳障りで辛かった。気だるい。最初は、ルイージが毒キノコを食べたのかと思った。それにしてもこのルイージは自己中過ぎる。弟夫婦がかわいそう。子供もかわいそう。奥さんは、あんまりかわいそうじゃないけど。いまいち好きになれないストーリーだ。 【ぷりんぐるしゅ】さん 5点(2004-03-28 14:42:17) (笑:1票) |
6.完璧に統制された見事な構図、そつの無い正攻法の演出、よく練られた無駄の無い脚本、場面ごとに温度の変化まで伝えるカメラ。10点満点ほぼ間違いなしの傑作だと思いながら見ていたが、ラストで失速した。マジックミラー越しの長い会話は完成度を落とし、作品の方向性まで迷走させてしまった。ストレートに「人生は旅だ」という方向で良かったのに……。終盤は致命的な失敗だが、主人公がベランダで弟の嫁と話し合うシーンの赤いライトの使い方や、主人公が弟に連れられて入ったモーテル(?)で鏡を見てみすぼらしい自分に驚くシーンと金持ち風の服を新調して鏡に向かうときの誇らしげな顔との対比など、あまりに素晴らしい演出がいくつかあるので9点献上。 【藤村】さん 9点(2004-02-12 22:29:41) (良:1票) |
5.ヴェンダース監督一世一代の傑作でしょう。『ベルリン、天使の詩』よりも数倍優れています。記憶を映像化する最良の方法のひとつが旅として描き出すことです。時間も空間も流れていく。そして奇跡的にどこかで再度クロスする。手垢にまみれた言葉ですが「哀愁」を感じましたね。小津的な感性を、それとは知れず、もっとも巧みに嫌味なく描きえた作品ではないでしょうか。 【バッテリ】さん 9点(2004-02-12 19:33:46) (良:1票) |
4.『バグダット・カフェ』と同じく私が挫折して、また後に見直した映画の一つ。なんでこんないい映画を挫折したんだ~~と自分に言いたい。ライ・クーダーの音楽とマッチしすぎてる冒頭の砂漠のシーンが最高にいい。なんであんなオッサンがキンスキーみたいな美人と結婚できるんだ~~しゃべりも上手そうじゃなしし・・・架空の話なのに俺って何言ってるんですかね・・・ |
《改行表示》 3.ここで言うパリは、テキサス州内の小さな町のこと。でも、その名がゆえのエピソードが結構重要な意味をなしてもいる。 ある事件のショックで放心状態のまま2年も放浪を続けた主人公が数年ぶりに弟夫婦の元に帰ってくる。 弟夫婦に我が子同然に育てられ、父のこともほとんど忘れてしまった主人公の幼い息子。 この父と息子の不器用な交流。別れた妻、その幻想を探す旅。 多面体であり、奥行きがあり、時とともに移ろう人の心。一時たりとも同じ姿のままとどまっていてはくれない。そんな現実の中で、私たちが愛しているのは、その人そのものなのか、それともその人に対する自分の中のイメージなのか。 「あなたは変わった」という、ありがちな別れる理由について、ちょっと考えながら遠くを眺めてしまう。 【よしの】さん 7点(2003-11-22 15:21:23) (良:1票) |
2.なんと言えばいいのでしょう。この何とも言えない観終わったあとの気持ち。人生いろいろなことがあり、道を外すこともあるけど、みんなさまざまな思いを抱えて生きてる。。。深い映画でした。でもさ、ハンターは、弟夫婦のところで息子として暮らす方が幸せだと思うんだけどなあ。。。ちょっと弟夫婦が可哀相だったな。 【カルーア】さん 8点(2003-11-16 13:31:54) (良:1票) |
1.とてつもなく地味で退屈な娯楽性のかけらもない映画。だが、しかしそんなことが何だというのだろうか。不覚にもたった一本の映画で4回も涙が出てきてしまった。昔のビデオを見終わったあと初めてハンターがトラビスをおとうさんと呼ぶ場面。ママを探すためにトラビスと家を出たハンターが養母に電話する場面。話の様子からトラビスだと気付いたジェーンが初めてトラビスと呼ぶ場面。せっかくジェーンを見つけたのに帰るか、もう一度会うか迷っているトラビスに左に曲がる様にハンターが言う場面。これ見よがしのあざとさが全く感じられず(逆にそこがあざといのか?)淡々とストーリーが進んで行くだけなのに、いつの間にか見る者を深い感動へと導いて行ってくれる。ヴェンダースの力量をまざまざと見せつけられた感じがする。それからジェーンに会ってきた筈のトラビスを、ハンターはどうして質問責めにしないのだろうか?聞きたい事が山ほどある筈なのに、なんて健気なんだろう。それとも真実を知る事がこわかったのかな?それにしても可愛い子だ。出来ればウチの子にしたい。 |