7.二時間以上もあって、しかも淡々とした物語。普通はめちゃくちゃ苦手なんやけど、これは別格やった。なんでやろ。たぶん、この監督、小技がうまい。並べられた靴、帰り道の距離、トランシーバー、マジックミラー。「ミリオンダラーホテル」や「都会のアリス」もそーやったけど、グッとくる演出が映画の中に散りばめられてる。あざといとも言えるけど、俺は単純にグッときてまう。この監督と波長あうんかも(でもベルリン天使の詩は退屈やったけど)後、この監督の子供描き方がいい。子供に結構するどい事言わせたりなんかもする(と言っても他に都会のアリスくらいしか知らんけど)そこがまた好き。ストーリーは賛否両論あると思う。トラヴィスがムカついたら、最後までムカつくと思う。俺は、誰も彼もハッピーにさせない人生の一部を切り取った中途半端なとこが、この映画に関しては好きやけど。これはダメ人間トラヴィスの身勝手な物語。自己愛と男女の愛と親子の愛と兄弟の愛と本当の愛がかみ合わない話かな。でも観ててジワッときて観た後にジワッときて、思い出してジワッとくる。不思議と。多分、この監督、ダメ人間とか孤独とかよく理解してると思う。そして愛をもって描いてる。と身勝手に俺は思う。 【なにわ君】さん 10点(2004-05-18 18:04:44) (良:6票) |
6.昔、15分だけ観て、ああ、これはとんでもない作品だな、と、何だか怖くなって観るのをやめてしまった。数年越しで最後まで観切った時、あの時の予感は当たっていたのだと分かった。ネガティブで逆説的に言うならば、人間は生まれた時から緩慢に死に向かっている。あえて下手な希望や欺瞞などなしに言えば、人間はある意味においては、磨耗し、亡失しながら生きているんだと思う。色々な場所に、触れた所に、触れた人に、触れる度に、自分の欠片をちょっとずつ置いて来ながら生きているんだと思う。天文学的な程の数の微小な欠片をちょっとずつ失いながら。磨耗しながら。亡失しながら。大人になり生きて行くということは、ある意味においてはそういうことなのだ。そしてきっとある分水嶺を超えてしまったら、人間はもうどこにも戻れなくなるんだと思う。亡失と、磨耗と、夢の残滓と、まだ見ない対象への希望の転嫁。“ここではないどこか”=“パリ、テキサス”。求めた地に着いてなお、その地を知らず。そんな物語だと思った。身勝手で汚く、どうしようもなく不毛な物語。でもだからこそ、悔しいくらいに綺麗だ。 【ひのと】さん 10点(2004-08-30 22:47:22) (良:5票) |
5.家族って不思議。家族だと思ったら家族だし、家族じゃないと思ったら家族じゃない。一緒に住んでるから家族なんだという人もあれば、一緒に住んでなくても家族だともいえる。愛しているから一緒に住むという論理もあれば、愛してるから一緒に住まないという論理もある。「家族らしい家族」やら「愛らしい愛」なんて幻想なんだなぁ。幻想を糧にする奇妙な生き物=人間。ヴェンダース監督はうまく掴まえていると思う。ナスターシャ・キンスキーの美しさ、父と息子の旅、学校に息子を迎えにいくトラヴィス、トラヴィスのひげ、トランシーバー。静かなトーンなのに、強烈な印象のシーンが多かった。素晴らしい映画だと思う。 |
4.《ネタバレ》 家族を捨て放浪の旅に出ていたトラヴィス。弟夫婦、息子との再会、そして別れた妻とのミラー越しの会話・・・不器用にしか生きられない男と女、、好きになればなる程相手を傷つけてしまう、結局愛が崩壊し家庭を捨てる。再会しても息子は母親に預け、自分は又旅に出てゆく、、しかしその気持ちには愛が詰まっているし、そして男の哀愁が漂う。又一緒に暮らし始めても男は同じ事を繰り返し、傷つけてしまう事を悟ったのでしょうか、、。子供にとっての4年間というのはとても大きい。子役の彼が最初戸惑いを見せ、父親を受け入れようとする、そして母親との再会、、あまりに上手くて涙が出て仕方なかった。8mm映画の中には家族が一緒に暮らしてた頃の思い出がギッシリ詰まっててそこだけ時間が止まっているかのようだった。物語と一緒に出てくる風景、そして流れるライ・クーダーの音楽にどんどん引き込まれていった、そして自分の心の中に深く深くしみわたっていった、、。 【fujico】さん 10点(2004-02-11 12:54:58) (良:2票) |
3.若いころ、ロス~ガルベストンをひとりで、クルマでおよそ5日で往復、旅した。 1日、千キロ以上走った。この映画はそのときの体験、そのまんまだ。この映画のすべての風景が大好きだ。片岡義男ロンサムカーボウイだ。昔のWAVE,写真集UNCOMMON PLACESそうゆう雰囲気に満々ている。映画というよりも、非常に典型的な、しかし私から観ると非常にあこがれるアメリカの生活、風景に満ちている。また男としては、作品のなかのキンスキーのような最高の女と、手っ取り早く言うと”やりたい”。いっしょに生活をしたいという男の欲望を非常に喚起している。そして、物語はというと実は、まったく大したことはない。普通の男の身勝手なハナシ。というか、どうみても、簡単に言うと”ファッション””かっこいい”だけである。もちろん、ラストのトラヴィスの悲劇が、もし自分だったらと考えると、とっても切ないというか。むなしい。でもそれだけだ。監督は主人公とキンスキーの鏡向こうの超長い対話シーンで映画に深みを持たせる効果をねらっているようだが、全く見せかけ。実はそんなことではなく、単に、美しいキンスキーを長く、効果的に映したかっただけ。我々は映画館のイスに深く腰掛け、タダタダこの映画の気持ちイイ雰囲気にひたるだけだ。渋い音楽。きれいな景色。いい女。いい写真。渋い写真。荒野の写真。精神の流れ者。主人公の自由な生活。うらやましくみえるアメリカでの普通の生活。くらし。”男と女”にならぶ、これぞDVD永久保存版。人生一生、世界中を旅して暮らせれば、家族はいらないかも。でもそのうちかならず、旅にもアートにも飽きるのだ!アート!さて、”ベルリン”はだめで、なぜ、この作品が普遍的によいのか。ずばり!言い当てましょう。それは、旅行だからです。美しい写真、きれいな風景、たそがれの、退廃、アメリカ一般サバービアだからです。観てて、気分いいわけよ。慣れると、きっと飽きるんだろうなあ。”風景写真がなければ、魅力半減の作品” ラスト、暗黒の精神と風景のなか、ハンドルを握る主人公は、ふたたび、オープニングの精神の荒野にかえってゆく。 ”絶望のラスト!” 【男ザンパノ】さん [映画館(字幕)] 10点(2006-08-19 23:47:18) (良:1票) |
2.だめ親父なんだけど、トラビスの気持ちがジーンと伝わってきた。8ミリ映画の場面と妻との背中越しの会話は、若くて二人の愛は永遠に続くと思っている連中には、到底理解できないんだろうけど、この歳になると、気持ちは痛いほど分かってしまう。息子を母親に会わせても、自分はその場に行けない気持ちは、愛、孤独、逃避、自由、敗北、それらに対するこだわりが、複雑に絡み合ったものに感じた。男は誰でも、ふと一瞬でも、こんな気持ちを持つことがある。このギターの響き。西部の乾いた、もの悲しい映像。Nキンスキーの美しさ。いつまでも浸っていたい。 【パセリセージ】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2006-03-06 22:29:30) (良:1票) |
1.とてつもなく地味で退屈な娯楽性のかけらもない映画。だが、しかしそんなことが何だというのだろうか。不覚にもたった一本の映画で4回も涙が出てきてしまった。昔のビデオを見終わったあと初めてハンターがトラビスをおとうさんと呼ぶ場面。ママを探すためにトラビスと家を出たハンターが養母に電話する場面。話の様子からトラビスだと気付いたジェーンが初めてトラビスと呼ぶ場面。せっかくジェーンを見つけたのに帰るか、もう一度会うか迷っているトラビスに左に曲がる様にハンターが言う場面。これ見よがしのあざとさが全く感じられず(逆にそこがあざといのか?)淡々とストーリーが進んで行くだけなのに、いつの間にか見る者を深い感動へと導いて行ってくれる。ヴェンダースの力量をまざまざと見せつけられた感じがする。それからジェーンに会ってきた筈のトラビスを、ハンターはどうして質問責めにしないのだろうか?聞きたい事が山ほどある筈なのに、なんて健気なんだろう。それとも真実を知る事がこわかったのかな?それにしても可愛い子だ。出来ればウチの子にしたい。 |