4.《ネタバレ》 これはなかなかすごい恋愛映画ですね。パリジェンヌ、ポレットに憧れる田舎の貧しい少年ミシェル。彼女に十字架を貢ぎまくる彼の姿は一途過ぎて悲しいです。教会で2人が見つめ合うシーンがありますけど、相手は子供なのに(子供だから?)とても綺麗で思わずドキッとした人は多いと思います。 この映画でポレットは死んだ母親の頬を不思議そうに撫でた後、痙攣を起こした犬だけを抱いて、歩き出してしまいます。母親と同じ柄のお揃いの服を着ていることからも、仲のいい親子だったことは明白で、ここからポレットは現実を受け入れられず、非現実の世界に入ったと思われます。グリム童話のように森を彷徨い、ミシェルと出会ってドレ一家に置いてもらった夜、彼女はうなされ、悲鳴を上げて目を覚まします。翌日からポレットは「村長」のいる水車小屋でミシェルと墓を作り、十字架をかけ、祈りを捧げる作業に没頭します。その後、彼女はうなされません。子供なりに犬の墓作りから彼女が必死に喪の儀式に取り組んでいることが分かります。でも肉親の死は犬の葬儀だけで収まるわけもなく、エスカレートしていきます。最後に優しかったドレ一家に見放され、ミシェルと引き離された駅の雑踏の中で、ポレットは唐突に非現実の世界から現実に引き戻されます。両親の死後、初めて「ママ・・・」と涙ぐむのです。こうなると、ああ、やっぱりこれは反戦映画なんだと思います。ミシェルはポレットのネックレスと秘密を100年預かってくれと梟に渡しました。墓穴に落ちても喧嘩をやめない、隣人同士の滑稽で醜い争い。あっさりとミシェルとの約束を破った大人たちの狡さや、子供たちの無邪気で残酷な処世術。そして、いまだに止まない戦争。叡智の象徴の梟の目に、これらはどう映るのか。梟はただ静かに黙って見ているだけです。きっと今も。 【くなくな】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-09-12 23:56:31) (良:2票) |
3. 子役をアクセントに使う映画は多いが、完全にメインに据えてココまで重い主題を展開する映画はチョット他に類を見ない。しょーもないキッズ・ムービーとかなら山のようにあるけどね。名匠ルネ・クレマンの冴え渡るディレクションは1940~50年代では無敵モードといった感じの天衣無縫さで殆ど反則!!戦争をダイレクトに描いているのは序盤の機銃掃射シーンのみ。後は南仏の農村を舞台に幼い少女ポーレットと少年ミシェルの無邪気な、それでいて戦慄を禁じ得ない”十字架遊び”が淡々と綴られるだけなんだが、「死」というモノを特異な形でココまで活写するとは…。フランソワ・ボワイエの原作小説に忠実に映画化したから原作のお陰なのかというと、決してそうでは無い。映像の持つ迫力を活かし切ったクレマン演出なくして名画のステイタスは獲得できなかったであろうし、何より子役二人が巧まざる上手さ!!加えて名手ナルシソ・イエペスの奏でるギターの哀愁を帯びた旋律が観る者の涙腺を無節操に刺激してくる。特にラストシーンは明らかにやり過ぎ!!「ミシェル、ミシェル!」「ママ、ママ!!」雑踏に消えるポーレットの姿にいつしか滂沱の涙、涙…。クッ、しまった!クレマン監督に見事してやられたぜ。滅多に泣かない天邪鬼な私を泣かせるとは…天晴れな僅か87分の珠玉の反戦映画に9点。ちょっと悔しいので、イエペスに逆恨みして1点マイナス! 【へちょちょ】さん 9点(2003-03-06 12:47:07) (良:2票) |
2.《ネタバレ》 大昔見たときは、いくら善悪の判断がおぼつかない子供たちとはいえ、十字架を盗む、お墓をいじるという行為に少なからず抵抗があった。しかしその後何度も映画を見てからは、それも許せるようになった。それだけ私自身が成長したのかもしれない。 この映画では「反戦」という言葉は使わなくても、それが十分に伝わってくる。どんなに相手が悪いことをしても、最終的には大きな心で許すということ、それが反戦、平和に繫がってくるのかもしれない。 この映画の幼い二人の演技は、演技であることをまったく感じさせない。人はそれを「神かがり的名演技」と言う、他に言葉が見つからないのだ。 私は大学の頃、クラシックギターを弾いていたが、この曲のテーマ「愛のロマンス」を何度も何度も弾いたのは言うまでもない。 【ESPERANZA】さん [映画館(字幕)] 9点(2011-05-01 18:37:01) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 何度観ても上手く感想が言葉にならない、様々な思いが胸をつく映画です。世界中で戦死した兵士や巻き添えになった市民の十字架や墓が世界中でどれほど作られた事か。空襲で両親を亡くした少女ポーレットとミシェルが死んだ犬たちのために十字架を集めて墓地を作るという子供たちの「禁じられた遊び」を通して悲しくも痛烈なメッセージが込められた反戦映画の傑作です。上手く演じようとか素晴らしく見せようといった打算が一切感じられないブリジット・フォッセーの姿と、そこに重なるナルシソ・イエペスのギターがより一層悲しさを感じさせますが、ポーレットがミシェルと出会って以降は終始ルネ・クレマンという人の優しさが感じられる作品でもあります。 【とらや】さん [DVD(字幕)] 9点(2010-02-28 17:08:38) (良:1票) |