5.ポール・ハギス監督は以前から注目していたが、本作は、軍の陰謀が絡んだりする安易な反戦モノの印象があり、今までスルーしていた。知ってはいけないイラク戦争の秘密を知った米軍兵士の若者が殺され、彼の父親がその事件の背後には軍が絡んでいることをかぎつけて組織の闇を暴く!みたいな。そもそも邦題が酷い。イラク戦争関連で「告発」と言う言葉を安易に使われたら、誰だってそう思う。でも、この映画には告発など無い。あるのは息子を失った夫婦の深い悲しみとその死にまつわる衝撃的な事実だけだ。間違いなくこの映画は反戦映画なのだが、その伝え方が非常に巧みであり、僕の心に響いた。 この映画を観て、戦争に行くと言うことは、会社で仕事をするとか、結婚するとか離婚するとかと全く同じレベルの事象であり、ただその心理的ストレスが半端なレベルじゃないという点だけしか異なっていないんだということを痛切に感じた。そして、同じ職場で同じ上司の下で同じパワハラを受けながら仕事をしても、一方はメンタルを病み、一方は平然と仕事を続けるように、戦争に行って、ある者は脱落し、ある者は耐え抜く。ただ、そのストレスに耐え抜いた者は「殺人」や「暴力」に対する感度が確実に下がり、その影響が顕著に現れる者もいるのだろう。 「戦争」が非日常ではなく日常であることの怖さを、この映画はリアルに映し出している。ラストシーンも主人公の心象風景を表すにはあまりにもぴったりで、監督の手腕を感じた。 【枕流】さん [DVD(字幕)] 9点(2010-06-05 19:19:02) (良:4票) |
4.トミー・リー・ジョーンズの武骨な顔に、抑えた表情。これがいいのです。感情をぶちまけることなく抑えているからこそ、さらに抑制された「無表情な言葉」で語られる真相が、ショッキングなものとなります。真相そのものは、ミステリとして捉えるならば実にストレート、ある意味平凡なものかも知れませんが、同時にこの上もなく残酷なものでもあります。そして、映画で繰り返される、息子との電話での会話、断片的な動画、そして道端の何かを捉えた写真、といったものが、最後に明らかになった真相とともに、強烈な意味をもって迫ってくる、その衝撃。悲惨な戦場と猥雑なアメリカとをつなぐのは、「息子」たちの無意味な死であった、ということ。やはり「息子」の母親である女性刑事を配置するなど、人物設定も上手く、見事な作品でした。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-11-03 23:36:58) (良:1票) |
3.内容は重いがミステリーとしてはショボイ。 【ベルガー】さん [DVD(字幕)] 5点(2012-03-23 00:50:28) (良:1票) |
2.なんだか哲学チックでカッコつけた映画だなー、というのが率直な印象。兵士が「戦争のせいで精神病んじゃいました」系のアメリカ映画を見る度に思うのは「アメリカって学習しねぇ国だな」ってこと。何十年やってんだよ、と。もういいって。・・・と思うなら見なきゃいいんだけど、一応話題作だから見ちゃう私は小市民。おまけにへそ曲がりなので、思うのは、こういう社会派告発シリアス映画を撮って、この監督は、果たして何がしたかったのかしらん、ということ。本当の軸足は「反戦」「告発」じゃないんじゃない? アカデミー賞とか視野に入れた名誉欲じゃ? なーんてね。『クラッシュ』では感じなかったんだけど。イラク戦争がアメリカの暴走そのものだからかなあ。自分で切った腹を「痛い痛い」って言いながら自分で縫っている感じ。一方的にやられているイラクの人のことはどーなのさ、と。そういう描写もチラリとあるけど、なんかすごーく偽善ぽい。まあ、でもそんなアメリカに100%依存しなきゃ生きていけない日本国民であることが、ひときわ身に染みる映画でもありました。 【すねこすり】さん [DVD(字幕)] 5点(2009-06-04 14:11:20) (良:1票) |
1.淡々と良い映画だった。いろいろな人々が少しずつ謎を解き明かす欠片をもっていて、そのピースから明らかになる真実は、あまりにありきたりで、そしてやるせない。「タクシードライバー」の頃から変わっていないアメリカの現実は、私たちには遠く思えるが、決して無関係ではないことを自覚したい。 【豆治】さん [映画館(字幕)] 7点(2008-07-13 00:12:25) (良:1票) |