4.《ネタバレ》 ヒモの干渉を嫌ったコッポラが、私費を投じて製作したという。…すると、コッポラ作への出演を熱望していたティム・ロスを起用した意味がわかるような気がしてくる。…たっぷりギャラが払えるならば、ティム・ロスを使わなかったと思うのだ。 なにやら難解に思えるお話だが、若き日のドミニクが追求していた「言語の起源」「人間の意識」「時間の概念」というテーマを、1938年以降のドミニクの人生にそのまんま絡めていったようなストーリー。夢オチか?という期待は、ラストのホテルフロントの電話とパスポートの中味を見せることで否定される。わざわざ。そう、わざわざ否定することによって、この作品についてはどこらへんが夢でどこらへんが現実だったのか、とか、チマチマ考えても意味がない、ということにもなります。事実の整合性を保つことは目的とされていません。謎解きをする映画ではないです。 そこで、謎解き以外に映画としての魅力は何になるのか、と考えてみるに、これはもう、ドミニク役の役者さんにホレるしかありません。いろんな意味で、ドミニクにホレるしか。ドミニクと共に泣き、ドミニクと共に不安に震え、ドミニクと共に不可思議な物語を歩む。 ところが、主役は誰だ。ティム・ロスだ。 観客はティム・ロスに2時間も恋ができますか。 身長とか体格のことを言っているのではなくて、基本的に主役を張る俳優さんではないと思う。カレは「2時間恋ができるか」という条件を満たさないんだから。 で、私はドミニクをスティーブ・ブシェーミにやって欲しかったと思うのです。 なんとなくキャラがかぶっている感じでロスのライバルであるブシェーミ、彼なら2時間は長くなかった。ラウラ=ヴェロニカ役の女優が無名であっても、ブシェーミなら私は泣けたかもしれない。 主役選びを間違えてはいけないという見本のような映画です。〝主役に恋する〟は〝上手い〟かどうかと関係ないんです(ブシェーミはもちろん上手いですけど)。 〝みんなが心配している問題〟とは〝人類の叡智を善悪のどちらに使うか〟ですね。 【パブロン中毒】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-05-24 13:24:47) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 一瞬リンチかっ?と思うような、時間や意識が混沌とした世界・・・「老い」とは?・・を中心に、時間、言語、哲学などさまざまな根本的テーマが絡んで、かなり大風呂敷にひろげられています。SFとかファンタジーとかくくれない感じで、今までにないものを追求し、創りだそうというアーティストとしての姿勢が、さすがコッポラと感じました。わかりにくいところもありますが、不思議が不思議のまま進んでいく感じは、幻想文学のようで嫌いじゃないです。浦島太朗的なラスト・・・しかし偽造パスポートはそこにありました。3つめの薔薇にはどんな意味がこめられているのでしょうか? 【ETNA】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-11-07 19:59:09) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 「レイン・メーカー」以来10年ぶりとなるコッポラ監督の最新作ということで、私も期待と不安を抱きながらも興味深く拝見していたのですが、、、、。どうなんでしょう。鑑賞しながら思った事は、これは果たして「円熟」なのかそれとも「衰退」なのか、ということ。いろいろ考えていたんですけど、おそらく、コッポラ監督は一人の人間としては円熟したのだろうが、映画監督としては衰退したんじゃないだろうか。それと一人の作家として、「過去と同じことをやっても意味がない」という思いもおそらくあったんだろうと思います。ただ、多くのコッポラファンは、こういうものは求めていないんじゃないだろうか、、、、。やたらと形而上学的な難解さが付きまとった作品で解釈するのがなかなか難しいんですけど、それでもなお一言で言い表そうとするなら、おそらく「愛は永遠なり」ということじゃないかな。肉体とか歴史とか言語といったものは俗世的で可変的なものですけど、言語学者の主人公が追い求める「言語の起源の追求」というのは、いわば永遠なるもの、不変的なものを知りたいという欲求なんじゃなかろうか。俗世的なもの可変的なものを用いることで永遠なるもの、不変的なものを知ろうとする。その永遠なるものは何かと言ったら、やはり愛だったんじゃなかろうか。 【あろえりーな】さん [DVD(字幕)] 6点(2009-03-29 00:55:03) (良:1票) |
1.一風変わった感じのする幻想的な世界が投影されており、その辺りはいかにも〝映画〟なのですが、コッポラ監督が一体何を言いたいのかいまいち良く分からなかったですし(夢幻世界の時点でもはやそこに明確なメッセージ性など存在しないのかもしれませんが)、また夢の世界では天地を逆転させていることなども面白い事とは思えません。例えば、ティム・ロスが夜道でナチス軍の研究医?に襲われるシーンなどはフィルム・ノワールを彷彿させるような雰囲気がある上に、青白い光が不気味ながらに美しく神秘的でなかなか良いのですが…そもそもお話自体が妙に哲学的で退屈であり、幻想譚の映像美が全体的にはいささか面白味に欠けているように思えます。ただ、最近のハリウッド映画などの作風とは明らかに一線を画しており何となく後に残る感じはします。特に印象的なのは、異世界のように鏡を使ったティム・ロスの分裂と彼の吸う限りなく短いタバコの煙が幻のような感じをさせるシーンと、ナチスの女との情事、それにやたら美しく見えたヴェロニカです。特に彼女の初登場の時、ティムにかけた声の鮮烈さは素晴らしく夢見心地のボンヤリ感から目覚めさせてくれます。 【ミスター・グレイ】さん [映画館(字幕)] 7点(2008-09-17 18:18:37) (良:1票) |