《改行表示》 4.疲れ切ったお盆休み前の日。精神的な疲れを除きたい時にふさわしい映画だったと思う。 暑さを避けて、山荘での日々をジャージで過ごす父子には、それぞれ悩むところがあって、“避けて”きたのは、本当は暑さではなく、人生の中で生じる疲弊感みたいなものなのだろう。 でも、久しぶりに会った父子は、そういったもろもろの諸事情を敢えて話そうとはしない。ただただ、山荘でのスローな日々を繰り返していく。 その何でもない情景とか、父親と息子の絶妙な距離感が、とても染み渡ってくる。 それは決して特別なものではなくて、世の中の父子、特に父親と息子の関係性の中に普遍的に存在する“つながり”を感じるからだと思う。 敢えて言葉にしなくても、敢えて伝えなくても、「解消」するものはきっとあって、それを果たしてくれるのは、時間であったり、自然であったり、自分にとってベーシックな人とのつながりなのだと思う。 映画としては、なんと言っても堺雅人と鮎川誠の「息子-父親」関係の“妙”が素晴らしかった。二人の絶妙な間合いが、そのまま映画自体の間合いとなって、独特の空気感を生み出していると思う。 質の高い映画ということでは決してないけれど、理屈ではなく、観る者の気分を軽くする映画だ。そういう映画も確実に必要だと思う。 【鉄腕麗人】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-08-14 01:35:23) (良:3票) |
3.「サイドカーに犬」も本作も、原作は未読。ただ同じ原作者というのがわかると納得した。どちらもストーリーはとりとめもなく、しばらく経つと思い出せない感じ。ただ、作品として「良かったなあ」という印象だけは結構残る。この作品、私は父子水入らずで過ごすシーン(ジャージの二人)が好きで、妻や娘がいる状態(ジャージの三人)は何となく気分がざわついた。そのあたりはジャージの仲間はずれエピソードで意図されているのかな。やっぱりいい年の男二人、避暑地のぼろい家でのんびり過ごすというむさくるしさが味なので。本業・ロッカーの鮎川氏は格好いいけどどことなくとぼけていて、プロの役者じゃないからこそ出せるであろうぎこちなさが、作品における父親像に絶妙にマッチしていた。堺雅人は言うまでもなし。ジャージ着ててもハンサムな男たちは可笑しくて、でもやっぱり素敵。 【よーちー】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-07-10 21:33:14) (良:2票) |
《改行表示》 2.《ネタバレ》 原作が好きだったのもあってちょっと敬遠していたのだけれども、ちゃんと面白かった。筋書きを忠実に辿るだけだけでなく、原作に漂う独特の空気感までもがきちんと再現されている。これは案外難しいことだと思う。二人の俳優の力、気を使われているが凝り過ぎてはいない映像、どこを取っても絶妙の匙加減だ。 真横で暮らしていても人のことはわからない。しかしまったくの孤独というわけでもなく、緩やかに繋がっている。各々で好き勝手しつつ、縛り合うわけではないが、たまになんとなく歩調を合わせてみたり。濃密で親しい間柄よりも、これぐらい緩い方が心地良く、自然なのかもしれない。 特定の場所に行って妙ちくりんなポーズでも取らない限り着信しない携帯電話、あれがこの作品を象徴しているように思う。しかし『二人』が『三人』になっただけでちょっとがちゃがちゃしてしまうのだから、人間関係というのはどうにも煩わしいものだ。『一人』でも割かし居心地が良い。だからこそ『二人』にも成れる。 心配が的中して地味なわけですが(笑)、大満足です。長嶋ファンである分贔屓目に見ているかもしれないけれど、それにしてもよくできていると思う。 【no one】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-08-17 21:10:31) (良:1票) |
《改行表示》 1.《ネタバレ》 原作者のファンで期待と不安半々で観ましたが、原作のイメージを損なうことなくうまく仕上がっていました。 なによりもキャストのイメージが原作にピッタリでした。 とくに父親役の鮎川誠は、バッチリでした。 長嶋有の小説は特に展開がある訳ではなく映画化は不安でしたけれど「サイドカーに犬」よりも原作のイメージをうまく表現していたと思います。 こういう話では主人公に自分の内面を安直に語りをいれて表現することもなく淡々と丁寧に撮られていて感心しました。 原作者のファンの方にオススメの映画です。 【じみへん1968】さん [映画館(字幕)] 8点(2008-09-03 17:06:20) (良:1票) |