11.《ネタバレ》 (良いことか、悪いことか、この映画には悪というものがほぼ存在していない ) 歯車が組合わさっただけの機械であるところの時計がいくら逆さに廻ろうとも、神の業であるが故に歳を重ねれば重ねるほどに肉体のみが若返ろうとも、時の流れだけは決して巻き戻らない、死者は蘇らない、死は待ってはくれないのだから、ならばそれまでは生きていくしかない、ならばどう生きるのか。これは死を考える映画ではなく、今を生きることを考える映画だ。 ベンジャミンが勉学で何かを学ぶシーンなどは一度も出てこない。街へ出て、友と語り合い、船に乗り身を削って働き、セックスを、酒を、友の死を、恋を、全て身を以て経験し、体験し、それが生きているということだと知る。 ひととひとというのは決して強い結びつきがあるわけではない。素晴らしい時間がいつまでも続くわけではない。はなればなれにならなければどうしようもないときもある。そしてひとはさすらい、またもどる。そこにはもどりたくなる理由があるからだ。 ベンジャミンが最期のときを迎える様などは素晴らしい。彼はますます若返り、認知症を抱えた少年へと老い、そしてひとりでは歩くことすらできない赤児となり、彼を抱き抱えるデイジーを思い出すも、何も、ひとことも言えることなく息をひきとる。そして本当に生まれたときそのままに、彼女はブランケットで彼をそっと包むのだ。 彼女はどうして彼が自分のことを思い出してくれたと言えたのだろうか。それはもしかすると彼女だけの思い違いかもしれない、彼女がそうであって欲しいと思っているだけかもしれない、ただあるいは彼のまなざしが、どんなに自分が老い彼が若返っていこうとも変わらず愛してくれた、あのまなざしと同じだったからかもしれない。 雷に7度打たれても生きていた男、ピアノを教えてくれた老婆、シェイクスピアが好きな男、ボタンを作った男、そして母親、そしてバレリーナ、皆、生きていた。どんな死を迎えたかなどは大した問題ではなく、どのように生きていたかというその瞬間だけが永遠なのだ。思い出そう、丁度人生も折り返しの頃、この瞬間をいつまでも記憶に留めておこうと、沈黙のままに鏡に向かい合うふたりを、あの瞬間が永遠なのだ。 【すぺるま】さん [映画館(字幕)] 8点(2009-05-16 01:24:44) (良:2票) |
10.《ネタバレ》 バレエ教室が終わり生徒が帰った後、一人踊るデイジー。 その様子を優しく見つめるベンジャミン。 やがて鏡の前に二人は並び、ベンジャミンは言う 「この二人を覚えておきたい・・・」 私はこの一連のシーンを一生忘れないだろう。 【たくわん】さん [映画館(字幕)] 8点(2009-05-12 17:43:53) (良:1票) |
9.《ネタバレ》 年を重ねるごとに若返るなんて、なんて羨ましいんだろう…と思っていたのは映画を見るまで。最愛の妻と娘から離れなくてはならなくなった悲哀は、胸を張り裂けんばかりばかりでした。人生について、年の取り方について、死について…色々考えさせられる映画であり、心に響くシーン・セリフが多々ありました。落ち着いた音楽も雰囲気を醸し出しており、安心して観ることのできる佳作だと思います。 【グングニル】さん [映画館(字幕)] 8点(2009-03-29 20:14:40) (良:1票) |
8.荒唐無稽な設定の主人公の人生を淡々と描いた、ありきたりともいえる3時間近い物語を飽きさせないフィンチャーの演出力に、まず拍手。 決して派手ではないが、絵画的なフィンチャーの映像は、この長くて静かな作品に非常に合っていたように思う。 主演ふたりの幅広い年齢の変化を、違和感無く見せたCG技術にも驚嘆したし、背中のシミやたるみで老いていくヒロインの姿を描くなんてのは、残酷だけど、うまいなぁと感じ入った。
お互いの人生の中で外見上最も自然にいられるほんの数年間を一緒に暮らし、今の自分たちの姿を目に焼き付けておきたいと鏡の前で寄り添うふたりの姿は、哀しいけれど「愛であれ、モノであれ、永遠はナイのだ」ということを知っている世代のわたしには、胸に迫るものがあった。
それにしても、ブラッド・ピットの若く美しい姿が少なすぎ。 無残な老人姿のブラピを眺めながら「ああ、早く若くなって~」と切望したのはわたしだけじゃなかったハズ(笑) 【poppo】さん [映画館(字幕)] 8点(2009-03-16 12:37:57) (良:1票) |
7.ファミリーでも楽しめる作品だと思います。暴力もアクションも過激なセックスシーンもありません。特殊効果がすばらしく違和感がありません。長い映画ですが集中して観ることが出来ました。 【くだごんべ】さん [映画館(字幕)] 8点(2009-02-23 09:43:36) |
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6.《ネタバレ》 年齢を重ねていくと女性に限らず老いを嫌い若さを求めるものだが、大切な人と同じ時間を過ごし同じ年齢を重ねていくことに人生の楽しみがあることを教わった。 テンポ良く話が進みとても面白かったが誰かに「どんな映画?」と聞かれたら「タイタニックのような始まり方でフォレストガンプのような映画」と答えるだろう。 【かのっさ】さん [映画館(吹替)] 8点(2009-02-18 13:50:13) |
5.ブラッド・ピット出演の作品の中では1,2を争うできだと思います。単純に観終わった後、おもしろかったと言える映画です。ブラピかっこよすぎw 【映画】さん [映画館(字幕)] 8点(2009-02-16 03:20:46) |
4.老人の老いた肉体を持って生まれた男の人生をたどる物語です。陳腐なメイクや演出がストーリー展開を壊しているのではないか?という危惧があり、当初はこの点を気にして見るのを止めようかと思ったほどでしたが、それはまったく余計な心配でした。特殊メイクやCGの出来が良く、ブラピが違和感なく老人から青年へと若返ります。そしてその違和感のなさによって『若返りという無茶な設定を成立させる事』に成功しています。さて肝心の内容についてですが、ゆったりと流れる時間の中を若返って行く主演男優と老いて行く主演女優の人生に、いつしか自分自身の人生を重ね合わせてしまう方も多いのではないでしょうか?それは誰しもが老いて行く過程において経験する『在りし日の自分を顧みる事』にも似ており、心の奥底に眠っている遠い記憶に触れてしまったような少し切ない余韻が残ります。若さは罪ではありませんが、もし自分が人生経験の短い頃にこの映画を見ていたら平凡な伝記小説を読んだ程度の感想しか持たなかったかもしれません。この映画は、出会いと別れや喜びと悲しみを幾重にも重ねた『人生を振り返る余裕の出来た年齢の方』に是非お勧め致します。 それと追記として、作品の扱うテーマが繊細だという事と字数制限で仕方がなかったということを理解したうえであえてなのですが、もう少し字幕のニュアンスをがんばって欲しかったと思った事を付け加えさせて頂きます、おそらく観客に伝わっていない事が多いと思います。 【はいぷ】さん [映画館(字幕)] 8点(2009-02-15 10:17:17) (良:1票) |
3.ある意味、全然「数奇」じゃない普通の人生でした。そこが良かった。 【よしふみ】さん [映画館(字幕)] 8点(2009-02-12 08:22:20) |
2.《ネタバレ》 男は永遠に子供であり、女は永遠に母である。 【つむじ風】さん [映画館(字幕)] 8点(2009-02-11 02:12:45) |
1.《ネタバレ》 特に印象に残ったのが、冒頭の盲目の時計職人のエピソード。 この映画後半はベンジャミンとデイジーの恋愛に時間が割かれるけど、 テーマは恋愛というより、どういう風に人生を生きるかというものじゃないかな。 何かを失った時に人は時が逆巻いたらともがき苦しむ。 しかし「もし」で時は戻ったりしない、それは人生ではない。 何かを遣り残してきたのならそれは遣り直せばいい。 不幸なのは失うことではなく、目を背け逃げてしまうこと。 特異な運命の人がいて、それを包み込む人がいる。 孤独に生きた人がいて、その人のことをずっと忘れない人がいる。 誰かと別れることもある、だけどまた出会うこともある。
人生に無駄なものなんてあるのだろうか。 時間が流れ老いていくのは不幸なことだろうか。 一人も悪役が出てこないこの作品。 アイロニーな寓話に託した人生賛歌と私は感じました。
……しかし、私、ティルダ・スウィルトンって黒目の大きさ以外 ケイト・ブランシェットにすごく似てるって日々思っているのですが、 まさか共演、しかも一人の恋愛霹靂で共演するとは!! 好みが実にわかりやすいよベンジャミン!! しかし一方は 「美人ではないが魅かれた」 でもう一方は 「美しい」「完璧」「素晴らしい」 になるんだから凄いなベンジャミン!!
あと、雷に打たれたひとの映像は面白かった……。 ピアノレッスンの時も思ったけど、外人てそんな雷打たれるもんなの? 背が高くて肉をよく食べて広い自宅持ってるから打たれるの? 屋根の上ならいいけど柵に持たれてて打たれたら相当イヤだよね! 【kiryu】さん [映画館(字幕)] 8点(2009-02-08 01:23:42) (良:1票)(笑:1票) |