5.《ネタバレ》 私はこの映画を戦時における美談モノとしては価値を見出していない。それよりも「非常時において普通の人間はどのように変貌し得るか」というテーマを描いたものとしてみるときにこそこの映画は輝いて見えるような気がするのだ。 実業家オスカー・シンドラーと収容所長アモン・ゲート。二人はこのような非常時でなければ多分極普通の人間としてその生を全うしたのかもしれない。むしろ怪しげな山師的性格のシンドラーよりもゲートのほうがきっと真面目で世間により認められる人間になったとしてもそれは別におかしくもなんともないことだったろう。 だが、この狂気の時代にゲートはその気分で人間をあやめても平気な悪魔になり、山師シンドラーはその財(もともとユダヤ人を助ける羽目になったそもそもの目的)すらも投げ打ってユダヤ人を助けるのに奔走するようになる。この展開は本人すら思ってもみなかったことであったろうに。 悪魔のようなゲートにすら良心の呵責がまるでなかったわけでもなかろう。確かゲートがシンドラーにこんなふうに尋ねるシーンがあった。 「どうして君はそんなに満ち足りていられるのか?」 「それは赦しているからだよ、君にも出来るだろう?」 ・・・君にも出来るだろう?だがそれを実行しようとゲートは試みるも、挫折し、またも些細な失敗をした囚人を虫けらのように殺してしまう。結局はその「赦している自分」に「今更そんなことをしたところで遅い」という悪魔の声がささやいたのかもしれない。今更!オレはもうとりかえしのつかないところまできてしまっているというのに!そんなことをしてどうなるというのだ?!と・・・ 狂気の時代は、平凡な人生を送るはずだった人々を悪魔のような大悪人にもし、その反対に信じられないような善行を積むきっかけを与えたりする。もしも、もしも私がそのような時代に不運にも生きなければならないことになったら、そしてもしも普通の凡人の道を踏み外さねばならない事態になったとしたら、どうか悪のほうではなく善のほうに足を踏み出せるように・・・その勇気がひとかけらでも私の中にありますように・・・と、そんなことを考えさせてくれたのがこの映画。偽善的・あからさまな賞狙いなどいろいろな批判もある中、確かに私にとってはそれ以上のものがあったと、私自身は確信している作品である。 【ぞふぃ】さん [映画館(字幕)] 7点(2007-10-15 17:23:05) (良:4票) |
4.「ET」以降のスピルバーグは全然面白くないのでこの映画もずっと敬遠してたんだけど、素直に感銘(「感動」とはちょっと違う)を受けましたね。「カラーパープル」や「プライベート・ライアン」にはしらけたけど、本作には彼なりの魂がこもってたと感じました。どの辺にって言われても説明できないんだけど。劇中でシンドラーが「アーモンだって戦争中でなかったら普通の男だ。戦争は人間の一番悪い部分を引き出す。」って言ってたのが印象深かったです。特別な人間でなくても、人は環境によってあそこまで残忍になれてしまうんだなぁ。決して他人事では無いと思いますよ。自分自身の良心に「それは果たして自分の意見か?」と問い続けなければ、今の世の中簡単にマスコミやらなにならにマインドコントロールを受けてしまうんですから。そしてシンドラーが行った「偽善?」は悪い事?もしそうなら彼はどうすべきだったのでしょう?「一人の命を救うものが世界を救う」というのは素晴らしい言葉です。まさにイラク情勢に関してなんか「多少の犠牲はしかたない」って姿勢が米国だけでなく日本にもあるように感じますし。そう考えると、この映画では特に崇高な志を持った人ではなくシンドラーという金儲け主義の普通の人間が主人公であることに大きな意味があると思います。 【黒猫クロマティ】さん 7点(2004-09-02 11:42:01) (良:3票) |
3.主人公が成金狙いのうさんくさい男ってとこに味がある。たくみに軍に取り入っていくあたりのとこ、リーアム・ニーソン、いい。それでもラスト近くのヒロイックな描かれかたには、やや抵抗が残るが、たとえば間違ってアウシュビッツに送られてきたのの扱い、彼はやはり「自分の」ユダヤ人たちを救おうとする。ここらへん、彼も「選別」しているわけで、ちょっと引っかかったんだけど、ああそうか、そこがポイントなのかも知れないな。抽象的な正義感よりも、自分の家族のように顔を知っている・名前を知っている人々を救いたいって気持ちのほうが強くなれるわけで、そういう具体的な顔や名前に足場を求めないと、狂った抽象的な理想に対抗する正義ってのは発揮できないんだ。ゲットー解体シーンはやはり迫力。ほんのささいな分かれ道で、生き延びられるものと生き延びられないものと違ってくる。音楽はまたJ・ウィリアムズ、ユダヤ人作曲家マーラーの交響曲8番に似たモチーフの部分があるんだけど、偶然だろう。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 7点(2011-01-05 20:11:48) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 三時間半を超える長い尺で描き出されるユダヤ人虐殺の悲劇。だがその印象としては、本作を「ユダヤ人に起こった悲劇についてのドキュメンタリー・記録」として見るならば一級品だと思うが、「シンドラーという一人の男の物語」として見るならば失敗作だと思う。
■ユダヤ人がどのように迫害され虐殺されていくか。本作の大半の時間は、タイトルから予想されるシンドラーという人間についてではなく、名もなきユダヤ人たちの悲劇の描写に費やされる。遊び半分で殺されていく収容所のユダヤ人たち。あの、ついさっきまでは命があったのに、撃たれた瞬間にパタッと倒れる描写は相当リアルだ。カラーの服の女の子の使い方も巧妙。シャワー室の伏線を張りながらあっち側に落とすのも憎いやり方。そしてラストの石を置いていくシーンで物語の真実さを浮き彫りにする。
■だが、シンドラーの描き方は相当ひどい。前半で金もうけのためとしてユダヤ人を使っているのはいいのだが、そこから後半の人格者への変化のプロセスがほとんど描かれていないのはあまりに問題。それに「ユダヤ人を助けるための執念と努力のさま」が金以外の形ではほとんど描かれていないのも大きくマイナス。結局シンドラーの内心がまったく見えてこないというのでは、本作をアカデミー賞作品賞をとるような「映画」として見た場合には、高い評価は与えられない。
■しかし最後のテロップで、戦後にシンドラーは事業も結婚も失敗したということを知ったが、運命というのは決して報われるようにできているわけではないんだなぁとつくづく思った。ユダヤ人の運命が不条理だとすれば、シンドラーの運命も相当不条理なものだろう。
■本作が賞狙いという批判もあるようだが、賞狙いだとすればナチスによるユダヤ人虐殺をあれほどまでに描いた(それを世界に知らしめた)方であって、シンドラーの描写の方ではないと思う。というかあのような掘り下げない人物描写で賞狙いだったら驚愕せざるを得ない。 【θ】さん [DVD(字幕)] 7点(2011-01-02 01:03:50) (良:1票) |
1.1回目。友人たちと見に行った。帰りは誰も一言も口をきけなかった。2回目。家族とビデオで見た。泣いた。 【あでりー】さん 7点(2003-04-14 21:31:11) (良:1票) |