4.《ネタバレ》 最後のほうになって、皮肉のように主人公は作家の言葉を見つける。・・・大切なのは愛する者を持ち、家族、そして隣人を愛すること・・・幸せは、誰かと分かち合わないと現実と感じられない・・・(うろ覚えです) ふつうに言えば陳腐な言葉に重みを持たせてくれた監督に、とても感謝する。本当なら親が子供を育てて行く課程で伝えなければならない、重要なことなのかもしれない。その機会を持てなかった彼は、自分でそれを獲得した。ひとりぼっちで死にむかいながら。そして、「冒険」ということばをもう一度新鮮に感じさせてもくれた。自分は冒険しているか、リスクを冒しているか。あまり経験を積まず無謀に大自然にいどんだ愚かさは否めないが、きっちりと「冒険」した彼の行動を、所謂「自分探しの旅」とかたづけてしまうことはできない気がした。ヘラジカが腐敗するシーン以降、死の気配がしのびよってくる感じがひしひしと怖い。ベルトの穴をひとつづつつめていくところとか。ピストルをつきつけられている人を見せられるよりも死を感じるのは私だけだろか。 【ETNA】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2009-09-07 14:08:05) (良:2票) |
3.《ネタバレ》 将来を約束された青年が全てを捨てて、ひたすら北へ向かっていくという驚きの実話だが、それを深いテーマのもとに美しく映像化した監督ショーン・ペンの演出にも驚かされた。家族間との関係、道中で出会う人々、クリスの人間性や思想といった描写を多くのエピソードで掘り下げることなく、会話や食事などでみせる印象的な行動で流れるように描く手腕は素晴らしい。無駄なシーンなど一つもない、ただリンゴを食べているシーンですらクリスの感情を読み取れるものとなっている。アラスカを目指す旅は一般人ではとうてい無理な話で、人一倍行動力のあるクリスだから成し得た荒技であるかもしれないが、旅に出る動機は非常に若者らしく、経験したという人も多いのではないかと思う(18の僕が言うのもなんだけど)。たしかにクリスの行動は自分勝手で無謀すぎで馬鹿げているかもしれない。しかし自分の人生なのに人の言うとおりになって、社会の目を気にし、自分を偽って生活していくことに、自分なりに折り合いをつけて前に進んでいかなければならいという中で、彼の場合はその決着の形が「旅」だったのだろう。色々と印象深いシーンが多い本作だが最も素晴らしいと感じたのがロンとクリスの岩山での対話シーンだ。ここでは年齢や経験、性格の全く違う二人の人間が同じ高さでお互いに説教を垂れあうのだが、深く考えさせられ感動した。人生ってなんだ、自分の人生って誰のものなんだ?確実に人生経験を積んで色々なことを見てきたからこそ辿りついた考え方と、若く無鉄砲であるが積極的な意見。それぞれの見解がいくつになってもお互いの成長の糧となり、人生に影響を与えうるという一言では言い切れない人生のおもしろさや深遠さを、そして人と人とのドラマの温かさを感じた。 【サムサッカー・サム】さん [映画館(字幕)] 9点(2008-10-02 01:10:18) (良:2票) |
《改行表示》 2.《ネタバレ》 インテリ馬鹿が荒野を行くロード・ムービー。 親の心子知らず、子の心母知らず、過去と現代が行きかう前章+5章構成。 写真、息子、主人公は家族を見捨てきれない、ちょくちょく映される葛藤、起きる母親、父親、雪道、電車、冬の旅路、手紙の文字だけが画面に浮かぶ。 画面を文字が横切る光景はイライラする、書き綴られる日記、雪原の隅から車がグングンと近づくもの、上空、荷物を抱えた男が長靴を受け取り、別れの挨拶、文字が題名となって消えていく冒頭。面白い。 切り立つ山々を一人突き進む。空を奔る雲。ライフル片手に狩りをしながら生活していく生活に飛び込んでいく、捨てられた車両、探索、家作り 、男が何故旅を続けているのか・目的はなにか徐々に明かされていく。 自然や動物との出会い、一人遊び、親子を殺るほどの覚悟はまだない、二年前の過去へ。物語はしばしば現代と過去を幾度も行き来する。 飛び乗る者、空に放られるもの、ビデオカメラの映像、お祭り騒ぎで酒場に入っていく者たち、会話、強調される表情、窓から放られるもの、手紙、捨てられる写真、別れ、押入れに貼られた憧れは真っ二つに割れる。セルジオ・レオーネ「善玉・悪漢・無頼漢(続・夕陽のガンマン)」。 しがらみから解放されたい、自由気ままに走っていく、トラブルで奪われる「脚」、資金との決別、小川、河、砂漠、街、森、海、農場、滝、岩場、岩山、ヒッチハイク、トラック、貨物列車、旅人たちとの出会い、別れ、再会。フィルムが流れるようにスライド。 届かぬ思い、利用される思い、突然泳ぎだす二人は子供のようにじゃれ合う。黙って静かに見守り、許すのは成年への信頼の証、愛する男のもとへ真っ先に飛び込む、娘のよう、鳥、鳥、鳥、テントの灯りが消える瞬間に暗示されるもの。 リンゴに語り掛ける、自己暗示、季節、雪解け、資金稼ぎのための職業体験、バイト、様々なものから学び直す旅。 恩人を連れ去るもの、両親の真実は映像では語れらない、偽りの家族、電話しながら話し相手にもなる大変さ、親切、買い物かごに積まれた船、激流下り、手の込んだ自殺、雄大な河、イカレ野郎にイカレカップル、マスカラより先に胸隠して下さい、出会うのは夫婦だのカップルばかり。 小銭は電話が必要な人にだけあげる、刺激を求めるが故に自ら金を捨てる、馬と一緒に走ったり、待てませんでした、旅をするにもルールに縛られたくない、線路から穴倉を抜けた先に待つもの、初めて政治家と意見が合った瞬間、見知らぬ街・国、格差社会、思い出される過去の自分。 鉄道を守る男たちからの“ご挨拶”。「北国の帝王」みたいにゃいかないね。 徐々に血にまみれるようになり、過去の喧嘩が明かされることでスリルを増す旅。苦い記憶、黙って見守るしかなかったもの。 孤独な狩りは野生及び死への接近、獲物が倒される瞬間は映されない、獲物をかっきる、生きるために血肉を生々しく貪り、たかる虫、メモ、保存、独り言、家族の会話。 ヘラジカ「俺の生涯でもっとも悲しい出来事だったよ」 虫や獣が匂いに惹かれてやってくる。 家族(になる前にヤルること)、匂いから逃れるために水に裸で泳ぐ、ズボンを脱ぐことで誘う、それを抑えるための筋トレが逆に惹かれさせる。 メガネは学ぶ人としての自分、時折入るスローモーション演出は俺の腹筋に襲い掛かる、木や草を掴む生への執着。 ヌーディストビーチ、オーマイゴッド温泉まさかの実在、良識(国境を無許可で超える)、横から捉えられる斜面は一般人と彼の境界線のようだ。 ベルトに刻まれる思い出、、岩山での挑発と緊張、変化、なにもないはずの場所で談笑、なんでもありそうな大自然で「なんもねえぞ!」と乱射、炭には御用心、手放せない知識、誤る判断、馬鹿やっちまったと後悔、銃が枕代わりに、のたれ死ぬ自由、みな自由に生きようとする彼に惹かれてしまう。 親も味わう苦痛、震えは恐怖か歓喜か、手紙。 運動を止めたバスの中で、彼は空の彼方で今も旅を続けているのだろうか。空を移動し続ける雲のように…。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 9点(2016-08-26 06:48:00) (良:1票) |
1.この映画を「コイツ、バカだな~」と思って見られる人は、きっと幸せ。 【Junker】さん [DVD(字幕)] 9点(2011-06-25 16:59:16) (良:1票) |