6.《ネタバレ》 『ミスティック・リバー』のデニス・ルヘインらしい暗~い原作を映画化したベン・アフレックの監督としての力量にまず脱帽。幼女誘拐事件を捜査する私立探偵の姿を追ったミステリーの体裁を取りながら、観る者に強く訴えかけるテーマ性を孕んでおり、イーストウッド作品にも引けを取らない重厚な作品となっている。結論から言って、犯人たちは誘拐という手段を取らなくても娘を救う方法はあったと思うが、母親が逃亡を図っていたという緊急性から止むを得なく犯行に手を染めたのだろう。彼らの行動の正否はまた、男児の誘拐殺害犯を義憤から射殺した主人公の決断の正否にも関わってきて、果たして「子供の未来」や「法」や「正義」とは何なのか?何が正しく何が間違っているのか?といった、恐らく答えなど出ないような問題を我々に真摯に突き詰めてくる。「赤ちゃんポスト」や幼児虐待などのニュースを見ると、子供のいない我が家では、「どうしてあんな家庭に子供が授かるのか?」「自分たちなら愛情をもって子供を育てられるのに」といった話が必ず出るし、ましてや子供を殺めるような人間は皆死ねばいいと本気で思っている。だから犯人たちの行動は理解できるし、その一方で、主人公の正論(子供は母親の元に…)もまた間違っているとは思えない。我々は、犯人たちや主人公同様、ただただあの娘の幸せを願うことしかできないのだ。 【フライボーイ】さん [DVD(字幕)] 8点(2010-01-06 20:42:12) (良:2票) |
《改行表示》 5.《ネタバレ》 アメリカで評価されていた通りの良作に仕上がっている。題材の良さを活かしており、監督・脚本家として才能の高さを示したといえる。事件モノ、ミステリー、ヒューマンドラマ、社会派映画といった複雑な顔を持ち、見ている者に色々と考えさせられる深い映画に仕上がっている点は評価できる。「何が正しくて、何が間違っているのか」が見えてこない難しいテーマに対して、スムーズな問題提起がなされている。主人公が果たして正しいことをしたのかどうかを考えざるを得ないだろう。主人公が行った「7歳の男の子を殺した犯人のアタマをぶち抜いたこと」と彼らが行った「少女の将来のために誘拐すること」は果たしてどちらが正義でどちらが悪なのかが分からない。ラストの選択については、人の親でもなく、女性でもない主人公だからこそ、あのような行動を取ることができたのではないか。娘が大切にしている人形の名前を間違えるような母親でもアマンダにとっては幸せなのかもしれないと考えたくなる気持ちも分かる。 一方、「実の娘を亡くした者」「不妊症に悩む妻を持つ者」「子どもが犠牲者になる姿を見たくないパートナー」、どのキャラクターも子どもに対して深い思い入れを抱える者である。子どもの明るい将来のため、子どもが確実に不幸せにならないために、法律を超えた行動を取ろうとする気持ちがよく伝わってくる。どちらの考えもよく分かり、この問いに対する明確な“答え”は存在しないだろう。 エンディングシーンも心に響くような仕上がりとなっている。 娘が実の母親の元に戻ったのだから、形式上はハッピーエンドであるのは間違いない。 しかし、これほど素直に喜べないハッピーエンドで締めくくったアフレックは凄い。 バッドエンドと考える者もいるだろう。 冒頭にも触れられていた「街」というキーワードも大事にされていたと思う。車の運転中に飛び出してきた子どもから暴言を吐かれるような「街」の姿が描かれている。子ども達が悪いのではなくて、そういう「街」で育ったことが起因となっているだろう。暴力や銃やドラッグが溢れていれば、大人たちがおかしくなり、子どもも徐々に汚染されていく。そういう子どもが大人になり、親となれば、彼らの子どももまた不幸になる。 そういった連鎖を断ち切らなくてはいけないということを「街」というキーワードを用いて、アフレックは一応の「答え」としているのではないか。 【六本木ソルジャー】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-06-28 11:24:04) (良:2票) |
《改行表示》 4.《ネタバレ》 ドイル引退および郊外の一軒屋で妻と抱き合うのシーンを見たらば、ああ、アマンダはここにいるんだなあ、ということはわかってしまう。 なので、謎解きとしては食い足りないのだが、全体としてはなかなかの秀作に仕上がっているかと。 「2」という数字は何かとトラブルの種になるので困りもの。 「1」があったために、「2」を回避しようという動機が大きく働いてしまう場合は、特に困りもの。 私は「失敗」のことを言っているのだが、「1」がなければ、「2」は成立しなかったので、逆に言えば「1」が無かったと仮定したならば、パトリックは「同じ決断」をしただろうか、というと、それは不確定、むしろ逆だったかもしれない、と言えると思う。 「1」については完全に「失敗」だったので、あんなことをしておきながら刑務所を免れているという設定にも大きく無理があるのだなあ。 あの小児性愛者は放っておいてもアメリカの法律では一生刑務所から出てこられないのだから、殺すことはなかったのだし、彼には殺す権利もなかったのだし、あの処刑は衝動殺人以外のなにものでもない。たまたま銃を手に持っていて、たまたま「カッ」としてしまったから。それだけ。 他人がどう誉めてくれようと、「1」は完全なる間違い。 「パトリックの思う神様」は、それを許さないだろう。 …で彼はカトリックだと思われるので、そして「神様が許すかどうか」だけを気にしているので、こういう場合は教会に行って懺悔をするのが通常の展開のはずだがなぜだかそうはならないところもちょっとヘンである。 「1」の決断が間違いであったからこそ、「2回間違えたくない」という思いばかりが強くなって、「2」が発生したということである。2は1とセットだ。1回目は、明らかに神様が許さないことをしでかし、2回目は、自分の神様が良いと言ってくれると思うことを彼はした。 …個人的には、パトリックがドイルとの会話を終えたあとの段階でフェイドアウトして終わったほうがよかったのではないかと思う。原作はどうあれ、その後の展開を謎のままにして観客に任せてしまったほうが、完成度は高くなったように思われる。そうなってくれていれば、努力賞をあげてもよかった。 【パブロン中毒】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2011-06-15 01:32:15) (良:1票) |
3.イーストウッドの強い影響を感じた。 【Balrog】さん [DVD(字幕)] 8点(2011-04-04 23:04:50) (良:1票) |
《改行表示》 2.ネタバレしないためには多くを語ることはできないのですが、扱っている問題が非常に微妙であり、賛否両論あるという意味ではとても面白い映画でした。テーマは全く異なりますが、考えさせられる映画という意味で、ちょっと「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」を思い出しました。あれほど強烈ではないのが、僕としては逆に良かったです。 子供にとっての「幸せ」とは?最後のパトリックの選択はとても興味深く、権利を尊重するという意味でアメリカ的だと感じました。「敢えてそこを映すか?」とも言いたくなる甘さの無いラストシーンも良い。エイミー・ライアンはうまいですね。 それにしても日本未公開(!)のこの映画に出会えたのもこのサイトとレビュワーの方のおかげ。本当に感謝しています。 【枕流】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-07-05 18:13:59) (良:1票) |
《改行表示》 1.《ネタバレ》 よく見かけるんだけど、主演でもあまりパッとしないイメージがあったベン・アフレックの監督デビュー作。初監督ということもあり、地味な演出ながら奇をてらわず脚本で勝負してきたのが今作の完成度を高めているようです。スタッフはベテランを揃えているようで、撮影は陰影のつけ方が非常に美しく、俳優陣もモーガン・フリーマン、エド・ハリスら演技派で固めてくれています。主演のケイシーも俳優としての才能は兄ベンを超えているとみた。今後の活躍に期待します。それと、ジョン・アシュトンを「ミッドナイト・ラン」以来見かけていなかったので、こちらの出演も嬉しいです。 やや突飛な設定ですが、パトリック、アンジーをはじめ、人物の心情描写が巧く、物語はよく練られているように思いました。重厚なミステリーであり、ラストで簡単に答えられない問題提起をしてくるので、後々まで心に残る。どちらが正しいとは一概には言い切れない。アマンダは警部の元にいた方が良かったかもしれない。しかしパトリックの訴えも理解できる。ヘリーンを信じてみたい、何よりも後悔はしたくはない、と。そして彼が下した決断。おそらく彼自身も悔いてるだろう。あの虚無的な表情がそれを物語っているように思う。相変わらずアマンダのことは眼中にないヘリーン。彼女は娘の愛用している人形の名前すらも覚えていなかった。それに気付いた時のパトリックの空しい表情がいい。 ストーリー以上に、考えさせられるテーマを含んだ中々深い作品です。 【Sgt.Angel】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-10-15 23:35:09) (良:1票) |