《改行表示》 4.《ネタバレ》 これはまたガツンと来る映画でした。リドリー・スコットの面目躍如といった感じでしょうか。ストーリーはほぼ1本に収斂されており、単調と言えないことも無いのですが、骨太なストーリー展開がそれを補って余りあります。主役の2人+マーク・ストロングがいい演技をするものだから、映画に文字通り引き込まれました。 話の内容はさておき、この映画で最も面白かったのは、やはり上記の三者の関係性でしょう。会社で言えば、本社と現場と取引先でしょうか。この三者の虚々実々のやり取りにはシビれました。あくまでも正論をふりかざす本社、誠実さを要求する取引先、間で苦慮するのは現場なんですねえ。普通のビジネスと違うのは、バランスの取り方で死ぬか生きるかが決まるということ。ストーリーの内容よりも、ヒリつくような緊張感をもった三者の関係性こそが、この映画のキモではないかと感じました。 強烈な印象を残す!というわけではありませんが、高いエンタテイメント性を保ちつつ、リアリティとフィクションの絶妙な隙間を描ききった佳作と言えるでしょう。 ラストのディカプリオの眼の演技もいい!ちょっと偉そうかもしれませんが、何て言うか、いい俳優になったなあと感動しました。 【枕流】さん [映画館(字幕)] 8点(2009-01-17 22:33:36) (良:3票) |
《改行表示》 3.《ネタバレ》 やはり、リドリー・スコット監督は本物の監督だ。久々に“映画”を観たという充実感を味わうことができた。リアリティがあり、迫力があり、緊張感があり、全く先が読めないストーリーには引き込まされる。 ストーリーが面白いと感じさせるのは、フェリスとそれぞれの登場人物との関係が一蓮托生ではなくて、極めて脆い側面をもつ点だ。 まず、フェリスとホフマンの関係が面白く描かれている。現場を知らない上に傲慢なホフマンが、まさに「アメリカ」を体現しているかのようだ。上から目線で、ヨルダン情報局のハニに対して彼のスパイを独占したいという強欲さを押し出している。現場の作戦や風習を無視して、自己の都合と自己の利益のために勝手に動くことによって、全てを乱している原因になっているということに気付いていない。ホフマンの強引さに、フェリスが振り回されており、その挙句にフェリスを助けることもできていないというところが皮肉的だ。 そして、フェリスとハニとの関係も非常に微妙に描かれている。お互いに信頼関係を重視しているが、“嘘”というほころびがラストの悲劇的な展開を生んでしまっている。また、フェリスのアメリカ的ではない“正直さ”もまた一つの衝撃的なラストを生んでいる。彼らの関係が、アメリカと中東との関係の微妙さをそのまま描かれている。 最後に、フェリスと看護師との関係にも見所がある。周囲からは奇異な目で見られている二人であり、結局は結ばれることはなかった。アメリカと中東の国々が仲良くしたいのだが、それが簡単には上手くいかない。環境がそれを困難にしていることを描いているようだ。 さらに、CIAとテロリストグループとの間で、荒唐無稽で非現実的な化かし合いが繰り広げられるのではないという点も面白い。フェリスが仕掛ける“嘘”も、ラストの“嘘”もリアリティが保たれたものであり、極めてシンプルなものとなっている。 派手さはないものの、この丁寧で絶妙なリアリティが実に心地よい。フェリスの嘘も、ホフマンの嘘も通じず、誰の嘘が勝ったのかを考えると、なかなか痛快な作りとなっている。 中東においてはアメリカ的な手法や、近代的な装置や設備が通じないということを明らかにすることによって、アメリカという国ややり方を皮肉っているようだ。 アメリカ万歳映画ならばヒットしただろうが、この内容ならば、アメリカ人が本作を無視したというのも分かる。 【六本木ソルジャー】さん [映画館(字幕)] 8点(2008-12-22 00:56:58) (良:2票) |
《改行表示》 2.《ネタバレ》 冒頭の凄まじいアクションでグっと掴みながらも、後は中々骨太で社会派なテロサスペンス。キレモノで行動派のCIAディカプリオ、その上司で冷酷な机上の嘘つきで太っちょのラッセル、そして嘘が嫌いな食わせ者で男前なヨルダン情報局長の三者三様の動きが面白く、役者には文句なし。まったく無実の人間を巻きこんだり、テロをでっちあげたりととんでもない嘘が飛び交う戦争のフィクションでありながら、ストーリーやキャラクターがおざなりになっておらず、難しそうだが意外と分かりやすく、一歩先も読めない脚本も申し分なし。アメリカはこのぐらいのことやってそうだもん。 面白く、スケール感のある娯楽作でありながら、リアリティがあり、真実に対して誠実で問題提起がしっかりしているという、映画のお手本みたいな映画。と言ったら褒めすぎでしょうか。 それにしても無能な上司はもちたくないっすねー。事件は現場でおこってるんだ! 【すべから】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-05-10 00:17:44) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 リドリー・スコット監督の演出の力強さには恐れ入る。彼こそ現代における真のフィルム・メーカーだと感じさせられた。「エイリアン」、「ブレードランナー」では独創性、「グラディエーター」、「ブラックホーク・ダウン」では圧倒的な映像、「アメリカン・ギャングスター」や本作ではダイナミックに展開する迫力と真実味のある人間ドラマを描き出すなど、歳を重ねていっても新たな領域に挑戦して行き、観客を楽しませてくれる。「どっちの嘘が、世界を救うのか。」「世界を救う嘘がある。」「嘘vs嘘」などのキャッチ・コピーからは娯楽要素の強いサスペンスを予想していたが、本作は重厚な社会派映画である。中東で命を賭けて任務を遂行する工作員と支持を送る上司、そして現地のやり方に従う局員達の脆く危険な関係が、アメリカの行うテロリスト殲滅における、傲慢さや皮肉を匂わせつつ描かれていく。もちろんディカプリオ、ラッセルを配した的確な人物描写でドラマ面はスリリングだし、アクションシーンも迫力があって、映画としてのエンタテイメント性を十分兼ね備えており、退屈な社会のお勉強になっていない。また役者の演技によって醸し出される緊迫感も極上のものであり、見所の多い本作は本当の「映画」と呼びたい作品だ。 【サムサッカー・サム】さん [映画館(字幕)] 8点(2009-01-03 17:48:39) (良:1票) |