6.《ネタバレ》 オープニングでその男はかつてその活躍が華やかに報じられていたメジャー団体のスーパースターだったことが分かる。それから20年が経過した今、スーパーでバイトをしながら何とか生計を立て、時には家賃も払えず、「客の入りが悪かった」とギャラを安くおさえられながらも週末の場末のリングに上がり続けるかつてのスーパースターの落ちぶれた厳しい現実、疲れた背中をこれでもかと見せ付ける。その男を演じるのはやはり年をとったなあと思わざるを得ないミッキー・ローク。そういえば彼の新作をみるのは久々だ。その姿は痛々しく、そしてリアルだ。ある試合後の心臓発作をきっかけに普通のおじさんに戻ろうと奮闘するが上手くいかず、リングに生きる決心をする。自暴自棄のようでもあるが、一度はリングを降りたが自分の生きる場所はやっぱりリングしかない。そんなラストのリング上のファンに語りかけるマイクパフォーマンスとファイトが感動的だった。幕切れはあっけないけれど、これでいいと納得のいい終わり方だった。ミッキー・ロークの見事なプロレスラーぶりには敬意を表したい。鍛え抜かれた体、流血のハードコアマッチ、場外乱闘、コーナーポスト上の姿、全てが絵になっていた。そしてミッキーがマリサ・トメイを見つめる目。確かに老けた。しかしその目と視線を見ていると彼が若かりし頃、共演女優を見つめる目と視線を思い出した。そこに年齢を重ねた男のいい味と貫禄を感じさせてくれた今後の彼のますますの活躍に期待したくなった。 【とらや】さん [映画館(字幕)] 8点(2009-06-17 20:38:51) (良:3票) |
5.《ネタバレ》 老レスラーの生き様を描いた作品ですが、プロレスの舞台でしか輝けず、生き甲斐を見出せなくなった一人の男の人生を描いているように見えました。決してプラスのベクトルのみでは表現されていません。いったん仲直りしかけた娘とのディナーの約束を、ナンパしたギャルとクスリやってあんなことやこんなことしてお泊まりして、挙げ句寝坊してすっぽかし、結局絶交。バカすぎます。マリサトメイ演じるストリッパーとも恋仲になりそうで、しかし一線は越えられず、最後は試合からも目を背けられてしまう。バイトはうまくいかずぶちキレて大暴れ。そんな現実の世界でうまく生きられない不幸な不器用さというものがこれでもか、というくらいに見せ付けられます。しかし、だからこそリング上での彼の輝きは尋常ではなく、会場に入るシーンなんかは思わず鳥肌が立つほどでした。闘いはかなり痛そうだったけど。ホッチキスはほんと痛そうだった。だいたいあんなちっちゃい針は観客から見えないと思う。 そして試合前に打ち合わせをする姿を見て「なーんだ、やっぱりやらせじゃん」と一旦は思わせて、リングでの闘いを克明に描くことによって打ち合わせ済みであるからこその真剣さというか、覚悟というものを観客は思い知ります。やらせだとかやらせじゃないとかプロレスはそういう次元で語るべきではないということです。自分の命を犠牲にしてまでプロレスに生きる、そんな可哀想な男ですが、結局夢の世界でしか生きられない彼を最後は一種の尊敬と憧れの目で見ることになるのです。かなり熱い映画です。熱すぎてちょっとついていけないかも、って思うくらいです。ミッキー・ロークとマリサ・トメイの演技は素晴らしいけど、良くも悪くもミッキーローク頼みの映画でした。よかったねミッキーが迫真の演技してくれて、っていう。 冗長にならず、すっきりまとめた脚本良かったです.そして音楽好きとしてもたまらない選曲達。Quiet Riot,AC/DCなどなど、かっこいい音楽が使われます。最後はブルーススプリングスティーンだし。 まぁまとめると、プロレスラーという題材からしてけっこう扱いづらかっただろうけど、それにしては巧くまとめたな、という印象です。現実とリングの対比が命、の構成でした。 【Balrog】さん [映画館(字幕)] 6点(2009-06-14 23:31:39) |
4.《ネタバレ》 ■いろいろ見てると、プロレスファンにはたまらない内容、との評が多いようだったが、往年のHR/HMファンにもたまらない内容であることも忘れてはならない。ロークとトメイに「80年代は最高、90年代は最低、カート・コバーンが全てをぶち壊した」みたいなことを、RATTをBGMに語らせてるけど、これって当時『BURRN!』やら『METAL GEAR』やらの愛読者だった連中の本音だったりする。ロックだけに、ぶち壊したモン勝ちであることは百も承知なのだけれど、だからこその悔しさや嫉妬がどうしても口を突いてしまう。いっそのこと、本作のヘビメタ版みたいなのも作ったらいいかもしれない。モデルとなるミュージシャンなら、ごまんといるだろう。 ■「ロークのカムバック作!」という評、というかキャッチコピーには、多少の違和感がある。今世紀に入ってから、徐々にではあるが独特の存在感を発揮することに成功しつつあったからだ。それは確かに昔のような「唯一の主演」級ではないにせよ、「ミッキー・ロークがそこでその役を演じている」ことが、その作品の一つのファクターとなっているケースを、僕らはいくつも目撃している。だから、巷の印象のように、本作でゼロから100へのカムバックをしたのではなくて、60か70ぐらいから100になった、というのが僕の印象だ。ローク自身、「ゼロから100へ」の一作として本作を位置付けるような発言を繰り返してはいるが、だからそれは、「キャッチコピー」に準じてあえてそう発言してるんじゃないか、と、穿ってしまうのである。確かに本作は唐突に数多くの映画賞を彼にもたらしたが、仮に本作が無かったとしても、『シン・シティ』辺りの存在感でもって、「その昔ブイブイ言わせてたこともある、濃ゆい味わいの性格俳優」として十二分に活躍できてたはずだ。 ■かつてミッキー・ロークを「セクシー俳優」として祭り上げたムーブメントがあったが、僕等も、そして本人も、そこで勘違いしてしまったようだ。いざ、あのセクシー面をはがし、セクシー声を消してみると、アクターズ・スタジオ仕込みなのかどうかは知らないけれど、「真っ当な演技派」と言うに相応しいロークの実力が浮かび上がってくる。本作で僕が堪能したのはまさにそこだった。『バーフライ』でも『フランチェスコ』でも、「セクシー俳優」イメージがバイアスとなってイマイチ堪能し切れなかった「実力」が、本作では遺憾なく発揮されている。 【麦酒男爵】さん [映画館(字幕)] 8点(2009-06-14 22:09:51) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 ミッキー・ロークの不器用で心優しいレスラーを見事に演じていました。 長年のファイトで全身ボロボロの上に身体にステロイドを打ちまくり、客を沸かすために事前の対戦相手との試合の段取り・・もうこれでもかとプロレスラーの生々しい姿を描かれていました。そしてリングから離れると家賃滞納、スーパーのアルバイトと過去の英雄が老い共に迎える現実の姿。試合後に見せる疲れた後姿と咳の一つ一つが痛ましく胸が締め付けられます。中盤で心臓発作を起こしたのがきっかけで疎遠の娘と子持ちのストリッパーとの仲も進んで、レスラーとして区切りを打ってスーパー勤務に専念して、ようやく普通の人生が送れるかと思いきや・・すべて崩壊・・この時の主人公の姿は中盤の凶器使用の血まみれファィトの痛々しさは比較にならないくらいでした。そして自暴自棄になり遂に自分はプロレスしかないと・・心臓に爆弾を抱えながらリングへ・・。花道を渡ると彼に声援を送る、現実世界とは比べ物にならない華やかさと熱さが伝わって、主人公も満たされた笑顔になる所は『ああっ彼はここでしか輝けないだなぁ・・』とグッときました。そしてラストでまさに自分の全人生をかけたコーナーからの飛翔でスパッと画面を黒くしてエンドロール。無駄なその後のドラマを一切流さず潔く終わらせたのは素晴らしかったと思います。あと、この映画を観た前日、2009年6月13日に亡くなったプロレスラー三沢光晴選手の満身創痍で挑んだリングで亡くなってしまった訃報を知った後だったので、どうしてもその姿と重なってしまい、ちょっと冷静に見れなくなっていたかもしれませんが素晴らしい映画である事は間違いないと思います。 【まりん】さん [映画館(字幕)] 9点(2009-06-14 17:29:30) (良:1票) |
2.主人公も、主人公を演じた俳優も、私も同年代。よれよれになりながらもがんばりましょう。試合のシーンはリアルなだけ痛々しい。良い子のお友達が見る映画じゃない(R15)ですが、心に残る映画となるでしょう。 |
1.《ネタバレ》 ミッキー・ロークの体当たり演技に加え、C・イーストウッド手法を思わせる映画作り。たしかに嘗ての色男風情は激減したものの、じわじわと凄みがにじみ出る役者になってて感動。人間、自分が吹っ切れた時に「花と散る」ことで人生のピリオドが打てれば、もう最高ですね。 |