4.こりゃポルノだな。昭和時代、場末のポルノ小屋に入場するとよくこんな映画をやっていた。どっ暗い、人が普段眼にしたくない現実の一面を撮って何か意味のあることをやっている気になるというあのエッセンス。人によるだろうが、私は共感しない。生理的にダメ。途中から「もうわかったから早く終わってくれ」と願うばかりであった。 エンドロールを見て原作があの自虐の人だと知り納得。やだよ。 こんな話にはもったいないほどの映像の質の高さには唸りっぱなしだったけどね。 【アンギラス】さん [映画館(邦画)] 5点(2009-10-01 19:55:19) (良:2票) |
3.え?ダッチワイフが心を持って動き出す?しかもビデオ屋で働きはじめてそこで恋に落ちる?いきなりの超展開に空いた口が塞がりませんでした。ここまで完全にコメディだと早とちりした私はゲラゲラ笑いながら観てました。 だが、この映画はそのままゆる~いコメディ映画では終わらない。板尾に正体がバレたあたりから急にサスペンスホラーになりだして、これは一体どうなるんだ?と、完全に物語に引き込まれている自分が居た。 岩松了が人形とヤル場面でまたコメディに引き戻され、人形に空気を入れたり抜いたりする場面はシュールすぎてどん引きと、なんとも忙しい展開が繰り広げられたが、要するにこれはペ・ドゥナを観るための映画である。と言い切ってしまっても良い。そのぐらい彼女なくしては成立しない映画である。 そして、これまでのシュールな展開が嘘のように美しい映像と、せつない余韻を残すラストはさすがの是枝監督作品と唸らされた。 【ヴレア】さん [DVD(邦画)] 8点(2013-11-04 18:16:03) (良:1票) |
2.この映画は表現が多角的であり、色々な受け止め方ができると思う。 淡白ながらも静かで美しいBGMと映像が、じっくりと腰を落ち着けさせ、考えさせてくれる。本作の人々は生々しい姿を見せながらも、誰も声を荒げて感情表現しないし、誰も他人に悪意を向けたりしない。でも、善人というわけでもなく、どこか空っぽ。 淋しくて、苦しい彼らにとっては、心なんてない方が楽だったかもしれない。でも、ギリギリのところでとりあえず日々を生きるしかないのだ。 「あなたの代わりはどこにもいない」と、いつかそんな風に言われたい、思われたい、そして誰かを満たしたいと願いながら。
鑑賞後、ジワジワ来る。 【すべから】さん [映画館(邦画)] 9点(2010-02-19 10:41:05) (良:1票) |
1.「人形に心が宿る」という設定に対して、勝手にファンタジックであたたかな映画を想像してしまっていた。 これが是枝裕和の監督作品であるということを、忘れていたようだ。辛辣で生々しいテーマを独特のドキュメンタリー的手法で描き出してきた彼の作品が、そのような“癒し系”映画であるはずはなかった。 確かに、ファンタジックで心温まる部分もあるにはある。ただし、そういった部分は、淫靡で禍々しい物語の深淵によって覆い尽くされる。
恐らく、この映画の主演は日本の女優が表現するには、生々し過ぎて難しかったと思う。 そこに韓国人女優のペ・ドゥナを配したことで、彼女独特の愛らしさと、併せ持つつかみ所の無い空虚感が、まさに“空気人形”そのものであり、素晴らしかった。 これは女優としての優劣がどうということではなく、キャラクターに対しての国や文化を越えた「適正」の問題だったと思う。 そういう部分を見抜いて、奇跡的なキャスティングをみせた監督の力量は流石だ。
この映画における「救い」は、なんだったのだろうか。 “空気人形”が得た束の間の「生」か。誰しもが空虚を孕み、微かな部分でそれぞれが繋がっているという現実か。
穏やかな空気感の中で描かれる“実態”は、どこまでも禍々しくて遠慮がない。 正直、「好き」と断言できる作品ではない。 でも、この映画の世界観は、紛れもなく新しく、尚かつ世界の「本質」を捉えている。 「存在」すべき映画であることは、間違いない。 【鉄腕麗人】さん [映画館(邦画)] 8点(2009-11-30 10:49:10) (良:1票) |