5.《ネタバレ》 ストーリーだけを見てしまうと、いまいち煮え切らないサスペンスもどき、というコトになってしまいそうなこの映画、しかし、撮影ロケーションの素晴らしさによって、充分な魅力を放つ作品となってます。観てると何となく、ブアマン監督が「この岩の形が素晴らしい! よしここで撮影だ!」とか嬉しそうに言ってる光景が目に浮かぶよう。「この急流を滑り降りる撮影をしよう! せいぜい岩に頭を打たないように気を付けたまえ!」とか言って4人の俳優の顔が青ざめている光景が目に浮かぶよう。おそらくは実際、過酷な撮影であったのでしょうなあ。ヒゲのないバート・レイノルズに、ヒゲのあるジョン・ヴォイト。野性味あふれるレイノルズに対し、ジョン・ヴォイト演じるエドは、普通の家庭の父親であり、理性的な人間。しかしその彼が、異常な事態の中で、タガが外れていく姿がこの映画では描かれますが、最後には、ダムの底に消えゆく自然とともに、すべての「異常」は水底に葬られることとなり、各々が心なり体なりに傷をかかえつつ、日常に戻っていく。ラスト近くで保安官と交わす会話が印象的なんですが、このイイ味出してる保安官を演じているのが実は原作者というのも、またさらに意味深。また、エドの息子役はブアマン監督の息子ですが、本作の“ダム建設で消えゆく自然”というテーマは、息子ごと『エメラルド・フォレスト』に引き継がれます。父親であるエドのパッとしない態度にご不満の方は、コチラの作品もどうぞ。 ・・・ところでキミは、財津一郎の“キビシーッ”のポーズで死ねるか? 【鱗歌】さん [DVD(字幕)] 8点(2011-10-01 16:42:46) (笑:2票) |
《改行表示》 4.《ネタバレ》 ド田舎には、常識の通用しない土人同然の集落があるのかもしれない。狭い国土の日本でもこの感覚は多少ありますが、広大な国土を抱えるアメリカともなれば、それは大きな恐怖でもあります。本作は、アメリカ人が潜在的に抱えるそうした恐怖を映像化した作品であり、根強い人気を誇るテキサスものの源流ともなった映画史上の重要作なのです。 世間知らずの頑固者っぽい地元住民と、田舎を小バカにした主人公グループが接触し、いつ爆発するかもしれない緊張感を孕んだ冒頭から、イヤ~な汗をかかされます。そんな中、ギターが得意なドリューと、バンジョーを持った地元少年が即興でセッションし、両者とも素晴らしい腕前を披露して場の緊張感を和らげます。通常であれば心温まる一幕となるはずの場面ですが、その少年が近親相姦を連想させる奇形チックな顔立ちなので、観客に残るのはむしろ不気味さだったりします。 本筋に入るとヴィルモス・ジグモントによる素晴らしい撮影によりアメリカの美しい自然が映し出されるのですが、その合間にも不吉な前兆がいくつも挿入され、またしてもイヤな気分にさせられます。アナルレイプとその反撃後には、人を殺した罪悪感と、田舎者に復讐されるかもしれないという不安感からグループは精神的に追い込まれていきますが、ここからの畳み掛けは最高でした。 ドリューが川に投げ出されたが、その理由は分からない。そのうち、「ドリューが撃たれるのを見た」と言い出すメンバーが現れ、見えない襲撃者との戦いが始まります。彼らは、近くにいたもうひとりの田舎者を襲撃者であると考えて殺害しますが、そいつがアナルレイプに加担した歯抜け男かどうかは分からないし、グループの命を狙っていたのか、それともたまたまそこに居ただけなのかも分かりません。 命からがら襲撃者(と思われる人物)を撃退したグループはドリューの遺体を発見しますが、そこに銃傷はなく、狙撃説は間違いだったことが明かされます。さらに、川下りのゴール地点へ行くと彼らの車が無傷で届けられており、田舎者が結託して襲ってきたという物語は、彼らの幻想だったことが判明します。極度の緊張と情報不足により、彼らには現実とは異なるものが見えてしまい、その幻想からさらに不安が増幅していくという悪循環に陥っていたのです。そのすべてを見透かした保安官による締めくくりも素晴らしく、70年代らしい含蓄ある作品となっています。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(吹替)] 8点(2015-08-06 16:03:30) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 なんでわざわざこんな話を作るかね、と思わなくもない理不尽と不運と激流にもみくちゃにされる男たち。きれいにオチに着地させることもないし、怪しい山の住民たちの説明も無い、ぶっきらぼうな作品だけど、大自然の圧倒的な大きさと川下りの迫力には引きこまれる。人物それぞれの人柄、関係の描写も上手い。特にJ・ヴォイトとB・レイノルズ。野生児ぶっていたレイノルズが実はけっこうな小心ぶりを見せ、ビビりのあまり狙撃手を見たなどと周囲をパニクらせる。そのあたりからJ・ヴォイトと役割が転換してゆく人間関係はなかなかにリアル。平凡な勤め人のヴォイト、腹をくくって難所をしのぎました。ダムが無事にできて事無く過ぎると良いですね。(良いのか?) 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2014-09-02 00:27:12) (良:1票) |
《改行表示》 2.信じられる? これをデート・ムービーにしちゃった人がいるってこと。それもさ、初デートだったのよ。これを実際に見た人だったら信じられないよね、おそらく。 あ~、はずかし! 【おばちゃん】さん 7点(2004-05-28 23:15:31) (笑:1票) |
1. 何とも奇妙な味わいのジョン・ブアマン監督によるサバイバル・サスペンス映画。冒頭から中盤までは都会の喧噪を離れ自然に親しむべく、カヌーでの渓流下りに挑む4人の男達が「シティ・スリッカーズ」的まったりムードの中で描かれており、特に渓流下りシーンのダイナミックさは実に素晴らしい。中盤までリーダー的存在として映画を引っ張るのが若きバート・レイノルズ扮するルイス。「ブギーナイツ」とか「素顔のままで」での彼しか知らない方は必見のセクシーな男っぷりを発揮している。本作で一躍ブレイクしたのもナットク。後半からジョン・ボイト扮するエドに主役はシフトするが、正直言って、最後までレイノルズで押し通して欲しかったナァ…。崖をよじ登るアクションなんて正にレイノルズの為にあるような感じがして仕方なかった。アーチェリーを引き絞るカッコよさもボイトのヘタレっぷりとは好対照。コレと「ロンゲスト・ヤード」での彼は個人的に気に入った!!唯一の犠牲者ドリュー役は本作がデビューとなったロニー・コックス。「ロボコップ」や「トータル・リコール」での悪役しか知らない方は、彼のカントリー風ギター演奏をどうぞ。尚、作品自体は…かなーり重苦しくて後味も余りよろしくないので、誰にでもオススメとは言えないかな。渓流下りの迫力に…7点! 【へちょちょ】さん 7点(2003-02-06 01:33:49) (良:1票) |