9.《ネタバレ》 ナチと連合軍の争いを描いたハリウッド映画で、「正義」のイデオロギーがまったく感じられないのは珍しい。狂気と復讐の殺戮のみが展開していく。レジスタンスはあっさり密告し、仲間を裏切らないナチはバットであっさり撲殺される。今までのドラマだと助かる立場の人、子どもが生まれた兵や心の呵責を覚える狙撃兵も、仲間を裏切らなかったナチと同じく猶予されない。この「あっさり」感が、この人の持ち味(かつてのタランティーノだと、ブラピも中盤であっさり死ぬ筈なんだけど)。善悪を判断する余地がない狂騒の場に観客は拉致される。多言語が行き交うのも、その善悪が渾然としている状況にふさわしい。言葉のなまりや、映画が通じないことなどが、次に続く殺戮のステップになっている。とりわけいいのは、地下酒場のシーン、ここにこの監督のエッセンスが詰まっていた。作られた笑顔の中でじわじわと高まっていく緊張、殺意と殺意とが寄りかかって固まっている状況。このキングコングを当てるナチ役の俳優もよかった、この映画でおそらくユダヤ・ハンターの次に記憶に残る、笑顔の不気味な二人だろう。ここのところタランティーノ監督、映画中毒者のための映画遊びにのめり込んでいた印象で不満だったんだけど、私でも楽しめる世界へ戻ってきてくれたようだ。 【なんのかんの】さん [DVD(字幕)] 7点(2010-08-29 09:45:50) (良:2票) |
8.《ネタバレ》 緊張感のある場面の連続で最後まで集中して見れた。ただ、あれだけ引っ張っておいてラストがちょっと物足りないかな。存在感MAXのランダ大佐と一応主人公のブラピ(印象薄くて役名忘れた)の壮絶な対決を期待していたのにあっけなく降伏するし…まあクライマックスで期待を裏切るのはタランティーノの得意技だわ。あと、ショシャナの復讐にしても偶然に頼りすぎてる。あんなフィルムの山だけで全員を殺せたとは到底思えない。 いっそショシャナを主人公にして彼女の壮絶な復讐物語にしてしまえば良かったのに。彼女のパートになると急にキルビルで使われた曲がかかるあたり、完全にブライドを意識したキャラ設定だよね。だけどそこはやはりハリウッド映画。米軍を主人公にしないとならないんでしょうね。米軍がナチを壊滅させるところを見たいわけだ(アメリカの観客は)。だからこそ興行的にも成功したのだろう。 【ヴレア】さん [ブルーレイ(字幕)] 7点(2013-10-15 21:08:56) (良:1票) |
7.《ネタバレ》 いきなり序盤からの「緊張感」がハンパないね。そんなピリピリした雰囲気の中心にいるクリストフ・ヴァルツ演じるランダ大佐がお見事。ナチス(ゲシュタポやSS)の恐ろしさを的確に演じていましたね。長ーい台詞や効果的なカメラワークなど、タランティーノらしさの中に漂う戦争の匂い。史実はひとまず置いといて(笑)の明解な娯楽としての展開の割に、しっかりドイツ語・フランス語・英語・若干イタリア語と各国の言語をしっかり喋らせる生真面目さ。ドイツ人が英語を話しちゃう某作品よりよっぽど好感度○。長い作品の割にチャプター構成になってるのもいいよね。強いていえば、ブラピwithバスターズがあんまり絡んでこなかったことがちょっと残念。はっちゃけたブラピを期待してた人には空振り感はあるかも。ということで主役はランダ大佐でしたね(笑)。賞受賞も納得でゴザイマシタ 【Kaname】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-12-03 10:12:35) (良:1票) |
6.とても見ごたえがあった。キャスティングが良い。ヒトラーを暗殺するアイディアが面白い。場面場面が綿密かつ丁寧に作られている。特に感じるのは、単に残酷な場面を見せるのではなく、そこへ至るまでの緊張感の盛り上げ方が素晴らしい。ただ、ストーリーに一本筋の通ったものが見当たらないのが残念。どの場面も面白いのだが、全てを見ると散らかりっぱなし。木を見て森を見なければ、文句なしの傑作。 【Gang10】さん [映画館(字幕)] 7点(2011-05-29 10:15:50) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 まあ確かにタランティーノじゃなきゃこんなに狂ったストーリーは考えつかないだろうし、また彼だからこそ狂った脚本をここまで楽しめる映画に仕上げることができたとも言えましょう。ウンチク王タランティーノが言語についてここまでこだわりがあったとは意外でした。ドイツ語、フランス語、英語、イタリア語と、全編にわたって言語の違いがサスペンスを生む展開は脱帽です。 ブラピにあそこまでアホ丸出しな演技をさせるとは、タランティーノも人が悪いですな。監督の要求に素直に従ったブラピも人がいいんですね。おかげでクリストフ・ヴァルツが余計に上手く見えて、オスカー獲るのにナイス・アシストだった様な気がします。 そして『キルビル』にも出ていたジュリー・ドレフュス、『キルビル』に続いて劇中悲惨な扱いを受けてたような気がしますけど…。タランティーノって彼女が嫌いなのかな、など思わず勘ぐってしまいます。自分はNHK『フランス語講座』以来の彼女のファンなのですがねえ。 【S&S】さん [DVD(字幕)] 7点(2010-09-21 00:24:39) (良:1票) |
4.ヴァルツの為の映画。ブラピなんて刺身のツマにもなってないし。 【Junker】さん [DVD(字幕)] 7点(2010-07-15 18:30:25) (笑:1票) |
3.往年の「レザボア・ドッグス」や「パルプ・フィクション」の切れ味の鋭さはないが、懐かしいタランティーノ節は健在だった。しょうもない会話の中でじりじりと高まっていく緊張感は冒頭の場面から堪能できるし、完全にイッちゃってるキャラクター造形も気持ちがいい。特にナチスの将校であるランダ大佐のキャラクターは、演じる俳優の演技力も相俟って本当に素晴らしく、実質上の主役と言っても良いくらいの存在感を見せていた。こういう屈折したキャラは大好きだ。
シリアスな場面の中にコミカルな要素を入れたり、逆にコミカルな場面の中にシリアスな要素を入れてくるのもうまい。普通なら余計に見えることが彼が演出すると余計じゃなくなってしまう。中でも悲喜劇が入り混じる怒涛のラストが凄い。これはタランティーノじゃないと出来ないと思う。正直、まさかこんなふうに来るとは思っておらず、度肝を抜かれた。
ただし、キャストについて言えば、ブラッド・ピットがミスキャストではないかと感じた。そもそもアパッチの末裔に見えないし、ちょっとコミカルな演技が浮いちゃっている感じがして痛々しい場面もあった。あとは、冗長な場面が多すぎることも気になった。冗長な会話を緊迫した場面に挟むのは彼の十八番で、それはそれで良いのだが、そもそも必要ないのでは?と感じるシーンもあった。
グロシーンが多いので、万人にはお勧めできないが、期待を裏切らない作品だったと思う。 【枕流】さん [映画館(字幕)] 7点(2009-11-28 23:42:33) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 タランティーノ監督作品だけあり、さすがに万人受けする映画ではなさそうだ。自分もタランティーノの感性には完全にマッチングさせることはできなかった。ただ、心の底から楽しめたということはなかったが、自分なりの感性で楽しむことはできた。 元ネタを知らないので、小ネタやオマージュの類は一切分からない。その辺りの面白さは一般人には分からないが、あまりそういったことは気にならないようには製作されている。 ブラッド・ピットが率いる“バスターズ”がとんでもないヒトラー暗殺計画を企てるという、ありきたりなストーリーとは真逆の映画に仕上げていることが凄いことだ。 また、主役と脇役、善と悪、史実と妄想、男も女も国籍も関係なく、英語もドイツ語もフランス語も何もかもごちゃ混ぜにして、徹底的に“自由”に弾きまくっている点が特徴となっている。 タランティーノのやりたいことは、ブラッド・ピットの最後の行動に全てが集約されているのではないか。「(投降?)そんなの関係ねえ。俺はやりたいことをやりたいだけやるんだ!」ということだろうか。ブラッド・ピット同様に、タランティーノも映画の常識、文法、ルール全てを無視、登場する者はとりあえずぶっ殺していき、『史実?そんなの知らねえ』と突っ走るだけ突っ走っている。それがタランティーノのやりたかったことだろうか。何事にもとらわれずに、自由に自分の感性を爆発させるということはなかなかできないことだ。 ラストの締めくくりも、他の映画ではみられない“俺流”といえる。 “俺流”に徹することが果たして映画にとって良いのかどうかは判断の難しいところだが、奇をてらうことだけが目的にならなければよいだろう。 自分の好みは、どの章かは忘れたが、地下の居酒屋のシーンだ。 本題とは大きくハズれて、脱線してなかなか本線には戻ってこないというイライラ感が逆に次第に面白く感じてくる。 本題を忘れたころに、状況を一変させる辺りが上手い。 第一章のオヤジ二人の会話からも分かるように、どうでもいい会話を展開させて脱線していきながら、いいタイミングで本線に戻すというところはタランティーノの天才的なところだ。 主役の割には、放置される場面が多かったブラッド・ピットがノリノリで演じているのも救いとなっている。 画面の後ろの方で、表情を作っている姿をみると、自分の役割をよく分かっているなという印象をもつ。 【六本木ソルジャー】さん [映画館(字幕)] 7点(2009-11-23 22:14:13) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 タラちゃん映画がいつもそうであるように、今回もまた映画についての映画。それなりに長尺ですが、一切時間を気にする事なく映画に没頭できたので、よく出来ていたのでしょう。1シーンで延々と対話が続いた上でバン!って来るタラちゃんパターンも、今回は一方向にベクトルが統一されているので緊張感を持って見ていられます。プロパガンダに映画を利用した者と、殺人に映画を利用した者、そのどちらにも罰が与えられるという展開は、大変に真っ当な展開とも言えます。だけどねぇ、マトモ過ぎるんですよ。ホラーだのヤクザだのカンフーだのでなくて、ドイツ、フランス、そして戦争についての映画ってのを題材に選んだ時に、ごくごく良識的映画に走ってしまうってのはタラちゃんの限界なんですかねぇ? そりゃ、頭の皮だのバットだのハーケンクロイツの刻印だのには、ザラッとした異物感が漂ってます。だけど、創作のセオリーを逸脱したところで得られる快楽のようなモノは、今回あまり感じませんでした。確かに歴史は変えた(少なくとも『ワルキューレ』なんぞよりは数百倍面白いです)、だけど歴史を大きく変えるには、あまりに歴史の現実は重過ぎたってところでしょうか。毎回、結局は映画の殻の中で遊ぶにしても、映画についてひと言うるさいだけのジジィになるにゃ、まだまだ早いんでないかなぁ。 【あにやん🌈】さん [映画館(字幕)] 7点(2009-11-20 19:53:17) (良:1票) |