4.《ネタバレ》 これは凄い。まさしく「噂に違わぬ」という映画でした。重厚な物語を、優しく柔らかい音楽と、ところどころに配されるユーモラスな演出で中和して見せてくれていますけど、やはり内容は非常にシリアスですね。トリックを凝らした脚本もよく出来ていますが、何といっても圧巻なのは、ハリーライムという極悪人をめぐる3人の心情を描いた人間表現の凄さ。こんな展開になるんですねえ…。予備知識をもたずに見たので、ラストシーンでは、思わず感嘆の声をあげてしまいました。直後に2度目を見ましたが、非常に緻密な作りになっているのをあらためて再認識。ヨーロッパ映画の実力を見せつけられました。ちなみに、HollyとHarryの名前が対比されてますが、何か意味があるんでしょうか?また、55年になってヒッチコックが“ハリーの死体”をめぐる喜劇を作っていますけど、これも何か影響関係があるのかしら? それから蛇足ですが、私がレンタルしたart stationというメーカーのDVDでは、字幕の翻訳ミスならぬ「タイプミス」と思えるような箇所がいくつかあり、ちょっと雑な仕事だなぁという印象をもちました。もちろん、作品の評価とは関係ありません。 【まいか】さん [DVD(字幕)] 9点(2011-06-13 00:24:41) (良:2票) |
3.《ネタバレ》 サスペンス物としては、今や色褪せた感のある死は偽装であるプロットは、本作では、繰り広げられる人間ドラマの序章に過ぎません。ドラマの根幹をなす『客観的に見て絶対的な悪行をどう受け止めるか』を名優が見せてくれます。確信犯のハリー、少佐にとっては許せぬ悪、アンナにとっては愛するという事はその人が行う事も含めて愛する、と三者は一貫した立場を貫き、ホリーのみが三者のはざまで二転三転苦しみます。この苦悩振りに感情移入させられるのです。加えて本作を忘れ得ぬものとさせてくれるのが数々の虚無感漂う美しい映像です。白眉は言葉ではなく画が語りかけてくるラストシーンで、映画って素敵だなとしみじみ思わされます。ホリーの下した決断についてどう思うか、10年くらい後にまた観てみたいです。 |
2. これこそ脚本の腕ありきといった映画。 CGやミーハーな役者でごまかそうとしない面白さが発見できる。 因みに、このDVDは現在、様々なメーカーから発売されているが、最悪なのは「アイ・ヴィー・シー」。値段が高い上に、冒頭で淀川長治がラストまで全て語っている。この解説は早送りしない限り、自動的に再生されてしまうので、鑑賞するときは要注意! お勧めのメーカーは、マックスターで、日本語吹き替えがついている。このメーカーの吹き替えは、素人が字幕を棒読みしているような代物ではなく、無名かもしれないが、ちゃんとした声優がこなしている(字幕とセリフは完全に違う)。 オークションで購入すればレンタルより安い。 この時代の白黒映画はリマスターしたところで、画質の違いに差はほとんどないので不安なしに鑑賞できる。 【クロエ】さん [DVD(吹替)] 9点(2008-12-22 01:05:07) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 この映画をレンタルしたのは、英国映画協会にベスト1作品として選ばれていたのと、↓【なにわ君】さんのレビューが面白くてよけい興味をそそられたから(笑)。期待どおり、まさに「古き良き映画」という感じでした。光と影のコントラスト、アングル、音楽の使い方が秀逸で、モノクロならではの緊迫感がある。オーソン・ウェルズの初登場(暗闇に浮かび上がるところ)&最期の表情、そして哀愁たっぷりのラストシーンはいつまでも心に残ります。最近の映画にはこういう、情感あふれるシーンってないよなあ。最新技術を駆使して大金つぎこんで作った映画ほど、いつまでも人の心に残って語り継がれる名シーンという物が少ないような気がする。こういう映画って貴重。それにしても、正しいことをしたホリーに対して蔑むようなアンナの視線(最後は視線すらくれない)、ほんとうに痛々しい。犠牲者を見れば、どう考えてもハリーが極悪人なのに。…でも、追い詰められるとうまく逃げ切ってほしくなる、言ってることについ納得してしまいそうになる、そんなハリーの魅力をかもし出せるオーソン・ウェルズってやっぱりすごい!ジョセフ・コットンの、どんくさいけど実直なキャラも演技とは思えないほど自然。ワルがモテるのが世の常だけど、できればこういう人が報われる世の中であってほしい。 【ROMY】さん 9点(2004-07-04 23:51:55) (良:1票) |