4.仕掛けに凝っているところは分からないでもない、終盤のシーンも。でも何だろう、この現実感の無さは。 まどろっこしい感じが拭えないのは惜しい。 【simple】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2021-11-23 20:11:16) (良:1票) |
3.初冬、久しぶりのヒッチコック映画を鑑賞。
列車に乗り合わせた厚かましいくらいにフレンドリーな男が、徐々にその異常な本性を現していく様が怖い。 序盤のシークエンスのみでは、列車内で初めて顔を合わした二人の男のどちらが、この映画の主導権を握っていくのか判別が付きづらい。 というのも、私生活においてトラブルを抱え、明確な「殺意」を表すのは、フレンドリーな“見知らぬ乗客”の方ではなく、主人公のテニスプレイヤーの方であり、彼が激情のあまり殺人を犯してしまうのかとミスリードされる。
しかし、次の展開では、見知らぬ男の方の狂気が、不気味に、淡々と映し出され、主人公と同様に、我々観客も戦慄させられる。
このあたりのストーリーテリングのテンポや間の取り具合が、1950年代の映画としては非常にサスペンスフルで洗練されていると思う。 殺人の舞台となる夜の遊園地や、犯行の瞬間をメガネのレンズ越しに映し出す演出など、流石はアルフレッド・ヒッチコックだと思わせる映画術がしっかりと冴え渡っている。
序盤は「交換殺人」というキーワードを主軸にしたサスペンス映画の様相だったが、男(見知らぬ乗客)の本性が現れてからは、この男がストーカー的に主人公の前に出没し続け、殺人を強要していくスリラー映画として、映画作品自体がその“本性”を現す。 その映画的な塩梅も、古い映画世界に相反するようになかなかフレッシュだった。
テニス会場のラリーの応酬に対して一斉に左右に首を振る観客席の中で、一人微動だにせずこちらを見つめてくる男の不気味さや、ラストの“超高速回転木馬”のスペクタクルに至るまで、終始観客の心理を鷲掴みにして離さないヒッチコック監督の映画づくりを堪能することができた。 そしてその“ラリーの応酬”や、ちょっと“廻りすぎなメリーゴーラウンド”は、映画の中で対峙する二人の男の「運命」を象徴させているようで、そういう隠喩表現も巧みだ。
キャストの中では、サイコパスな殺人者を演じたロバート・ウォーカーがやはり印象的。 非常に真に迫った名演だと思えたのに、名前を聞いたことが無いことを不思議に思ったが、この映画の後に32歳の若さで急死したとのこと。 どうやら少年時代から心に傷を追った生い立ちだったらしく、俳優になった後も妻の不倫やアルコール依存等が重なり、精神的な不安と混乱を抱え続けていたようだ。
そんな彼にとって、この作品の役どころはある意味まさに「適役」だったのだろうが、俳優本人の人生の不遇を思うと複雑な思いにかられた。 【鉄腕麗人】さん [インターネット(字幕)] 7点(2020-12-05 00:58:55) (良:1票) |
2.ヒッチコックは観客をじりじりさせるのが本当に上手く、ほとんどサディスティックですらある。おまけにただ単に緊迫感を盛り上げるだけでなく、どことなく洒落てる。遊園地やテニスの試合場といった場所の使い方、ボクサー犬(?)やライターといったアイテムのセレクトがかっこいいのだ。そしてなんといってもメリーゴーランドでの最後の対決シーンが最高! むしろ主人公や悪役よりも一場面一場面の強烈な絵が脳裏に焼きついている。なんというセンスの良さだろうか。 ところでブルーノが排水溝に落ちたライターに必死で手を伸ばすシーン、何かに似てるなと思ったら、なんと『ウルトラマン』でハヤト隊員が変身用の道具をつかもうとするシーンにそっくりだ。円谷さんはこんなところから影響を…? どんな分野の人間でも、ヒッチコックの才能に触れてしまったら影響を受けずにはいられないのかもしれない。だって、かっこいいもんなあ。 【no one】さん [DVD(字幕)] 7点(2005-12-24 02:48:40) (良:1票) |
1.死ぬほどとか、殺すぞなんて言葉が比喩でなく、現実になっていく恐さ。この映画の恐さは、私見ですが、『ミザリー』のキャシーベイツの恐さと似た感覚があるような気がします。クレイジーな雰囲気がなんとなく似ていて、心理的に何か近いインパクトがあるのではないでしょうか。編集技法もヒッチ監督の独自の技法が確立された作品と評されるだけあって、観るべきものが多いです。これについてはInVincibleさんが仰られている通りで、靴や眼鏡などの小道具の使い方はもちろんですが、特にガイのテニスの試合と、ブルーノが落としたライターを拾おうとする場面のカットバックが素晴らしい。それを追っていく警官までを含めて、遊園地のメリーゴーランドに集結していく3者が平行してモンタージュされていく編集は、まさにサスペンス技法の教科書と言えるでしょう。遊園地に流れる明るい効果音が対位法となって緊張感を盛り上げているもの見逃せません。ところで、最後のメリーゴーランド暴走を止めるシーンでは、本物のメリーゴーランドの下に潜っての撮影だったんですよね。ヒッチ監督も、よくあんな事ができたものだと、後年に回想しているそうで、「おれに任せろ」と言って老人が潜っていく姿を観るとついそんなことを思いだして目を凝らして観てしまいます。 【スロウボート】さん 9点(2004-02-01 22:32:57) (良:1票) |