《改行表示》 7.《ネタバレ》 ■冤罪はらしの骨格だけ追うと大したことはないように思うかもしれない。けど、細部までキチンと見てみるとこれは相当重い作品である。というより解釈が相当難しい作品である。以下思ったことを時系列的に ■とりあえず最後まで名前の出てこない「母」。彼女は「母」としてしか作品中で規定されていない。すなわち、自分個人としての価値が規定されず、ただ「トジュンの母」としてしか生きていないことが示されている。 ■母親とトジュンは近親相姦を思わせるような関係にある(夜の裸で寝るシーンなど)。警察でも「女と寝たことはあるか」「母親」と答える。トジュンの立ち小便を母親は必死に繕う。 ■衝撃の告白。トジュンは一度母親に殺されそうになっている。農薬を飲まされて無理心中させられそうになった。そのために今のような知能に障害を負っている。そしてそれを思い出した。母親は息子に忘れるための針を指そうとする。息子は「今度は母さんは針で殺そうとした」と叫ぶ。この辺は相当意味深。 ■携帯電話を見せられて、トジュンは目撃者のおじいさんをきちんと指摘する。なぜ???自分が犯人であることがわかってしまうかもしれないのに。もしかして、母親におじいさんを殺させようとたくらんだ???自分を殺そうとした母親に復讐? ■おじいさんの家。母が針を刺そうとする二度目。針は間違いなく何かを暗示してる。そしてその後実際にお爺さんは殺される。 ■トジュン釈放。しかし母は迎えにいかない。なぜか火事現場に立ち寄ろうと言い出すトジュン。深い意味はあるのか? ■家に帰るトジュン。母親に「なぜ死体を高く上げたんだろう」と聞く。自分が犯人なのに。そして恐らく自分が犯人だと母親が分かっているのを知ってるのに。この意味は?しかも「早く助けを呼ぶため」というえらく合理的な理由。 ■冤罪の息子を見に行って泣きだす母。ここにおいては、もはや「トジュンの母」ではなく一人の「普遍的な母」であるのではないか。 ■最後に針の箱を渡すトジュン。「忘れちゃだめじゃないか」というのはどこまで知ってのセリフなのか。 ■そして最後に針を刺して踊る母。針は忘れるためのもの。しかし彼女が忘れたのは、ただ息子が殺人したとかそういうのではなく、「自分が母であること」それ自体ではなかろうか。。。 【θ】さん [DVD(字幕)] 9点(2010-06-02 01:56:15) (良:2票) |
6.《ネタバレ》 キャラクター設定は秀逸だと思います。自分の指を切っても気づかないくらい子煩悩な母、ハンサムな知的障害のある息子、友達のようでいながら都合の悪いときは責任を押しつけるチンピラ青年。(この青年が中盤以降、母を手助けするのたびに金を取るところがリアルで良かった)シナリオも秀逸です。後半の、犯人と殺人の理由が明かされる場面には痺れました。 ●以下完全ネタバレです。● 母が、真犯人を知る人物を自分が殺した事より、息子がその事実となる証拠の品を持っていた事にショックを受けているように私には見えました。そこが面白かった。息子に知的障害があって正しくは理解していないとしても。この人は母なんだなぁと思いました。殺人より、息子にどう思われるかのほうが怖いんだ。あと、冤罪で息子の代わりに捕まった青年と面会して、母親がいるかどうか質問する場面はなくてはならないと思います。細かいところまでぬかりがないぜ、ボンジュノ。 【キュウリと蜂蜜】さん [映画館(字幕)] 9点(2010-01-11 23:36:31) (良:2票) |
《改行表示》 5.知的障害のある息子を溺愛する母が、息子の無実を証明してハッピーエンド! とはならない…一筋縄ではない作品。 想像の斜め上を行く展開。こうゆうパターンもあるか…と関心。 誰が監督かな?…ポンジュノかいっ!と更に驚き。 あの「ツボ」かホントに効果があるならば、いつか自分も使う日が来るかもしれない。。 【tonao】さん [インターネット(字幕)] 9点(2020-05-16 10:11:51) (良:1票) |
《改行表示》 4.《ネタバレ》 こんなに心を鷲づかみにされたオープニングは初めてだ。「母」としか紹介されないキム・ヘジャが○○○場面。観てほしい。そこから美しいタイトル画面。このオープニングはこの後映画の二つの場面につながる。母としか紹介されないひたすらに息子を愛し慈しむ母の魂の叫びがこの場面になっている。母性だけではなく、女性として、一人の生きる人間としての精一杯の躍動をこんな形で映像にする監督の才能は恐ろしいほどである。ここにかかるシャンソンのようなクラシックギターの調べ。あまりの美しさに何度も何度も観かえしてしまった。 知的障害のある息子の冤罪を晴らすべく必死に事件の新たなる証拠を探す母。結果は皮肉という言葉ではあらわすことができないほどのものに。母なる証明。久しぶりに納得の邦題。母、とか母親、という題名ではあらわしきれないものがこの映画にはある。母なる証明とは「母によって何かが証明される」ではなく、「この母にしてこの息子あり。間違いなくこの息子の母はあなただと証明された」といった感じ。 ハリウッドリメイクは不可能な韓国の韓国ならではのスペシャルな映画。 自分で自分のツボを刺す映画。 【JF】さん [DVD(吹替)] 9点(2015-06-25 16:12:27) (良:1票) |
《改行表示》 3.《ネタバレ》 犯人探しに関しては読めてしまう人もいることと思いますが、この映画の核心はさらにその先にありました。捕まった男との面会を強く望み、母親がいるかどうかを確認するトジュンの母。いないという答えを聞くと、この男を犠牲にする事を決意する。モラルや良心から・・・という言葉では軽く感じてしまうかな? 罪悪感、どうしようもない自責の念が頭の中をめぐって涙が止まらないのだった。人間の本質、愚かさ、恐ろしさに迫った圧巻のサスペンスドラマ。10点をつけない理由はこの監督よりちょっとだけ人間を信じてるからかな。 【リーム555】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2010-10-21 17:30:19) (良:1票) |
《改行表示》 2.《ネタバレ》 オープニング・・・けったいなオバハンの踊りに=??? 前半・・・溺愛母子の関係に=嫌悪感 同じ布団で寝るな~! 中盤・・・燃える母さん刑事に=拍手 あなたは中村玉緒(流石姫子)か! 後半・・・真犯人判明と急展開に=驚愕 嫌な予感はしてたが、このオチかぁ!!! エンディング・・・安息の訪れた母子に=嗚咽 母さん、もっと踊りなさい。。。 非常に、非情に、疲れる素晴らしい映画です。 【つむじ風】さん [映画館(字幕)] 9点(2009-11-11 02:24:20) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 ポン・ジュノ監督お得意の、社会の下層の人々が、ただ足掻き続ける物語。英雄願望という点でも見事なまでに従来作から一貫しております。母は正義を貫いているつもりだった、そしてその姿は冴えないオバさんながらカッコいいとすら言える状態だった、でも、真実が明らかになった時に、何もかもひっくり返ってしまい、映画を捉える視点すらも変わり・・・。いや、正直なところ、真実の線はワリと予測されてはいたのですが、そこが重要ではなくてね、『ほえる犬は噛まない』あたりにもあった、価値観がコロリと転じる突き放した感じ、容易な感動を与えてたまるかとばかりにひっくり返すシニカルな感じに苦笑しつつ、今回もまた妙に感心せざるを得ないワケで。毎度の事ながら、その容赦のなさ加減に「監督、またキッツイわぁ」と。「覆水盆に返らず」とばかりに劇中何度もこぼれ、流れ出す液体、そして繰り返される、それを無駄に隠そうとする母の姿が切なく憐れです。息子の心の真実までも見えなくなって孤立したラストの残酷さ、救いのなさ、それがああいう明るい動のカタチとして表現されるあたり、この監督のアクの強い才に魅了されないワケにはいきません。ポン・ジュノこそは今や世界にも数少ない「戦う映画監督」、そこがとても魅力的です。 【あにやん🌈】さん [映画館(字幕)] 9点(2009-11-02 20:17:11) (良:1票) |