《改行表示》 6.《ネタバレ》 ポップス/ロック好き魂をゆさぶる楽しい佳作、と云いたいところだけれども、ロック好きだけに気になってしまった箇所がいくつか。 まずその一、この点はファンタジーとしてみれば、見逃して楽しめばいいのだけれども、かかる音楽と時代設定が合わない。この映画の時制で考えればジミヘンはまだデビューしていないし、ストーンズの「Jumpin' Jack Flash」もまだリリースされていない。 その二、これは趣味の問題だけれども、単純に登場人物の名前のついた曲を選ぶだけの、安直な選曲が多い。ダスティー・スプリングフィールドの「この胸のときめきを」の選曲が最高だっただけに、ああいう(ストーリー展開に合わせた)選曲をもう少しやってほしかった。 その三、これはわたしがいちばん訴えたいことがら。劇中で船が沈みそうになり、ダサい時代遅れのDJと皆からみなされているボブが脱出するとき、一枚のアルバムが他のスタッフに「ダサい」と捨てられてしまう。このアルバムは実はわたしのいちばんの愛聴盤であり、ここで波間に沈んで行くジャケットを見ながら、わたしの心も沈んでしまう。アーティストはThe Incredible String Band、アルバムタイトルは「The 5000 Spirits or the Layers of the Onion」という。さらに説明が必要なのだけれども、この映画の中で「最高にヒップな伝説のDJ」と紹介されるリス・エヴァンス演じるギャヴィンには、実在のロック史を動かしたJohn Peelというモデルが存在する。そのJohn Peelが、この1967年に海賊放送で実際にへヴィーローテーションでかけていたアルバムこそが、この捨てられたアルバムなのである。この件は英語版のWikipediaにはっきり書いてある事柄。つまり、この当時、ここで捨てられたLPこそ、最高にヒップな音楽とみなされていたのだ。このことは、この映画を見る人に是非とも知っておいて見ていただきたいことで、大げさに言えば、この点で、この映画は事実を彎曲して(正反対に)描いているのですよ。大事なのは、実際には、この映画でたくさん流されているポップ・チューンの方こそ、当時は「ダサい」とみなされていた方なのだ、ということです。時代は巡って、そんな「ダサい曲」こそ、当時を懐かしんでノスタルジックに聴かれるようになってしまった。まあそういう映画です。 ビル・ナイはかっこよくって、見惚れましたが。 【keiji】さん [映画館(字幕)] 3点(2010-01-17 23:13:48) (良:2票) |
《改行表示》 5.《ネタバレ》 非常にセンスのある作品に仕上がっている。 ミュージック、ファッション、作風・世界観いずれにも見応えがあり、アメリカ作品とは異なるイギリス作品らしいユーモアセンスも抜群だ。 下ネタがかなり多いが、下品になっておらず、こちらも絶妙なユーモアとセンスで上手く調理されている。 「板垣死すとも自由は死せず」という有名な言葉があるが、「海賊ラジオ死すとも、ロックは死せず」ということだろうか。 ロックを語れるほど、ロックに傾倒しているわけではないが、その自分にも「ロック魂」「ロック愛」のようなものが十分伝わってきた。 政府に禁止されようとも、船が沈没しようとも、最後の最後までロックを流し続ける、ラジオを流し続ける“魂”が熱い。 当時の人々が熱狂したかもしれないという理由が分かる気がする。 見ているうちに次第に、個性のあるイカれた野郎どもと1人の女性コックが愛おしく感じてくる。 自分もこの船の乗客になったかのように、アットホームで仲間内な雰囲気に飲み込まれていく。 それぞれの個性は強烈であり、キャラクターも生きているとは思う。 しかし、何度か見れば、当然感想も変わると思うが、初見では乗員それぞれの内面というものまでもは完全には伝わりきれていない。 ただ、それぞれのキャラクターに変なエピソードを設け過ぎると、その世界観や映画としての個性が崩れる可能性があるので、難しいところだ。 ロックを愛する訳の分からない連中が騒いでいるだけの映画でも、本作にとってはよいのかもしれない。 長所でも短所でもあるのが、この“ユルさ”である。 バカバカしいようなところでも、そのユルさによって、バカバカしくは感じさせない。 しかし、前半はその独特な世界観にハマるが、ストーリーらしいストーリーがなくキャラクター及び世界観依存型の映画なので、中盤は多少ダレてくるところがあったような気がする。 個人的には、船の沈没間近でも革パンを履いてくるところや、命よりも大事そうなレコードを「これはクソだ」と放り投げるようなところが気に入った。 『それぞれのキャラクターの内面が伝わらない』とは書いたが、このようなどうでもいいシーン一つ一つに、各キャラクターの余裕と生き様を感じられるので、何度も見て深く堪能して、それぞれのキャラクターの内面を感じ取っていく作品かもしれない。 【六本木ソルジャー】さん [映画館(字幕)] 7点(2009-10-25 23:46:57) (良:2票) |
4.《ネタバレ》 海賊ロック放送に夢中になっている英国庶民の姿を見ていると、米軍放送FENに夢中だった昔の自分を思い出してしまいました。ケイシー・ケイサムの“アメリカン・トップ40”なんか懐かしいよね。 キンクスで始まりデヴィッド・ボウイで終わる(ちょっと時代がずれてますけど)ヒット曲の数々は、選曲と使い方はセンスが良いので満足なんですが、なぜかビートルズが一曲もかからないのはどうしたわけでしょう。版権がとれなかったのかしら? 脚本にキレがなくエピソードの積み上げ方も下手くそで全体に冗漫な出来なのは残念です。船が沈没するシークエンスも『タイタニック』のパロディになっているんですけど、あまりにだらだらしてしまって逆効果です。悪辣な政治家を嬉々として演じているケネス・ブラナーと、ぶっ飛んでいるお母さん役でカメオ出演したエマ・トンプソンのかつてのカップルの怪演はなかなかのものでした。トンプソンなんか、彼女だと気づく人いないんじゃないかと思えるほどです。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2012-07-13 23:46:19) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 「パイレーツロック」?海賊映画とロック映画のコラボって、タイトルを聞いただけだと何だか駄作になりそうな雰囲気も、予告編を見て、面白そうだとやっと私の住んでる所でも公開となったので見てきました。ロックを愛する者、それはDJもリスナーも皆、気持ちは同じであるということが解りすぎるぐらいに描かれている。その画き方に問題点も多かったり、下品な言葉も飛び交ったり、出てくる女が嫌な女がいたり、そんな女に利用されている(騙されている)男も男でアホだったりと、それなのに嫌な気持ちにはならない上手さがこの映画にはあるから見ていても不愉快な気持ちにはならない。イギリス国民の希望であるロックというジャンル、それを楽しむ人達(DJとラジオリスナー)の気持ちを考えない政府のやり方を見事に打ち砕くシーンで終わっていてくれたらもっと良かったのにという気持ちを残しつつ、その後のパニック映画のような展開はちょっと長過ぎるし、そんな中、臆病者と言われながら一人、最後まで沈没した船の中でDJとしての仕事を全うする船長の男としてのかっこ良さ、沢山の船で皆を助けに来るリスナーやら他の仲間達やら、あのラストの「ロックンロール」て叫びこそがこの映画の一番の良さを物語っていると言っていいぐらいこの映画はロック魂と仲間の大切さ、けして、裏切ったりはしない真の友情、そういうものがきちんと描かれている映画として評価したいと思います。 【青観】さん [映画館(字幕)] 7点(2010-01-25 21:30:55) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 お世辞にも品のいい映画とは言えない。そして終盤までは政府の動きと放送局の動きがリンクすることが無く、それぞれが好き勝手にやっているといった印象が強い。では、不満だったのかと言われればそうではない。登場人物は多いし色々な人物がこの船と関わり、かなり個性的なキャラクター揃いなのですが、この船のリーダー、兄貴分、カリスマDJ、ちょっと気弱な奴に真面目系ニュース担当にちょっとワケありのROCKオタクおじさん等、それぞれの役割分担や個性のバランスも上手くいっていたと思う。更に皆が陽気でカラッとしていて、ベタなんですが命懸けでROCKを愛する気のいい連中揃いなので、品は無いものの観ていて実に気持ちがいい。そして何よりも洋楽好きにはやっぱり堪らない映画です。特に僕の大好きなナンバー、プロコル・ハルムの「青い影」をいい場面で使ってくれていたのが嬉しい。最後の“ザ・カウント”の「ロックンロ~ル!」とビル・ナイの最後のイカした姿のカッコ良さに鑑賞後の気分も実に爽快な作品でした。 【とらや】さん [映画館(字幕)] 7点(2009-10-30 20:38:15) (良:1票) |
《改行表示》 1.《ネタバレ》 面白かったー。冒頭でいきなりキンクスの名曲「All Day and All of the Night」がかけられて、いきなりテンション上がりまくりです。60年代のロックンロール、ソウルミュージックは、ポップスとして市民権を得ていて、今でも新旧問わずそんな音楽が愛されている英国が羨ましいです。 しかし、だからといってその時代の名曲をセンス良く流すだけじゃ映画は面白くなりません。曲が良いだけで、退屈な音楽映画の多いこと多いこと。 海賊ラジオ放送局の乗組員、DJ達のキャラクターがとにかく濃い。登場人物は結構多いのに皆に愛着をもてました。黙ってるだけでカッコいいDJも、DJやってなけりゃただのデブ、みたいなヤツも最高にイカしてます。爺さんもビシっと決まっててカッコいいです。 そんな面々が下ネタ満載でワイワイやってるだけで、非常に楽しい。 女性キャラクターはビッチばかりですが、それでも愛嬌のある女優さんばかり。 ちまちました感じで終わらず、後半は映画らしいスペクタクルを見せてくれて盛り上げてくれるのも嬉しい。他に取り柄もなく、音楽と心中しようとする男たちに共感し、胸が熱くなります。船が沈み行く中でビーチボーイズをかけちゃうとこなんか憎いなー。 物語自体はフィクションらしいですが、実際に存在したという海賊ラジオ局というおいしすぎる題材が今まで使われてなかったことが不思議です。 しかし、序盤から登場する政府側との直接対峙がないのは、もったいなさすぎるぞ! 劇中のBGMとキャストをおさらいしたくて、久しぶりにパンフレット買っちゃいました。 【すべから】さん [映画館(字幕)] 9点(2009-10-29 12:37:49) (良:1票) |