5.完璧な映画化などといったものは存在しない。 完璧な絶望が存在しないようにね。 映画化の噂を聞いたとき、僕はそんなふうに自分を言い聞かせるようにした。 なにしろ僕はノルウェイの森という小説が大好きだったものだから、いささか辛い想いをすることになったとしても、これは見ておくべきだろうと思ったのだ。 結果から言うと、僕の予想通りいささか辛い133分となってしまったのだけれど、それは最初からわかっていたことなので、しかたないことなのかもしれない。 村上春樹の良さは、深いテーマを軽くて読みやすい文章と独特の言い回しで綴るあたりにあると思うのだけれど、ストーリーや台詞だけを忠実に映像化してしまうと、こんなにもつまらないものになってしまうのかと、僕は唖然とした。 小説と映画の違いは、単純に言うと主人公であり、あるいは視点とも表現できる。 小説のそれが一人称の僕なのに対して、映画のそれはワタナベなのだ。 なんだ同じじゃないかと言う人もいるかもしれないけれど、僕にはそれが深刻な問題だった。 僕はワタナベたちの物語を覗き見するよりも、一人称の僕を通して、共感したり、後悔したり、混乱したりしたかったのだろう。 でもそれは僕が思うだけで、誰もが感じることではないのかもしれないので、見ない方がいいとまでは言えないのである。 少なくとも害があるほどの問題でもあるまい。 僕はそう思うことにして、本来付けるつもりだった点数を1点甘くした。 【もとや】さん [DVD(邦画)] 4点(2011-07-12 19:44:53) (良:2票) |
4.直子役に菊地凛子が決まった時点で原作と異にする作品なのだろうと思った。そして実際、映画の直子は原作の直子のように静かに狂ってゆかず、ひたすら生々しく、そう、まさに生きている人間の悲しみと苛立ちに満ちた狂い方を見せてゆく。トラン・アン・ユンが与えた息吹は原作から解き放たれた独自の世界を作ろうとする。しかし、、しかしだ。他方、松山ケンイチと水原希子はあの魅力的な村上春樹の世界を再現してしまっているではないか(言いすぎか?)。匂わない汗。香らない食事。どんなに激しいセックス描写があってもそれは文章でしかないという無機質な感覚。映画には向かなそうな、文章でしかない世界。それが村上春樹の世界なのだと私は思う。それを非現実的な響きを持つ、まるで読むように響く二人の声によって実に見事に春樹ワールドを作り上げている。監督もやられたクチなのだろう。この世界観に。だから独自を貫けずに二つの世界を中途半端に発生させてしまった。現実の世界と非現実の世界を右往左往する主人公というのはそれはそれで面白いのだが、現実の直子と非現実の緑というあべこべの構図にちぐはぐさを感じる。 【R&A】さん [映画館(字幕)] 6点(2011-04-19 15:32:03) (良:1票) |
3.原作を読んでない人は絶対に見てはならない作品に仕上がっている。話題性と松ケン目当てで間違って見てしまうとどうなるか。三人のエロ女と優柔不断な男の話でしかないではないか。そのような印象を与えてしまいかねないのは、本当に怖い、としか言いようがない。もちろん、尺や版権などの関係で原作どおりに行かない事は理解するし、必ずしも原作どおりに作ることを目的としそれに成功した作品が良作とは限らない事も分かっている。更に「ノルウェイの森」には読者それぞれのイメージ、思い入れ、好きなセリフ、心に残るシーンがあるわけだから、それを映画化(映像化)したときに、正解なんて無いのも当たり前。読者1000万人の頭の中に、雲のように漠然と浮遊した映像を、かき集め、くっ付けたり剥がしたりしながら作り上げた作品なのだろう。だからなのか、切り張りしたようなカットの羅列は、何の脈絡も持たない身勝手な登場人物の行動発言になってしまっているではないか。原作の全てを表現してくれとは言わないが、きゅうりのシーンと、ギターでお葬式のシーンは入れてほしかった(ギターのヘッドがチラッと見えてるだけに終わっていた)。「ノルウェイの森」を題材にした、セリフ付の美しい写真集といった感じか。叙情的かつ叙景的な原作の、叙情の部分を削り、極力叙景的に表現したのは、正解なのか、否か。 【ちゃか】さん [映画館(邦画)] 5点(2010-12-27 16:15:41) (良:1票) |
2.原作をほぼ忘れかけている状態で鑑賞したのが良かったのかもしれない。緑の演技の下手さに最初は辟易としたが、段々馴染んできて気にならなくなった。トランアンユンの技巧(意図的に斜めにするシーンなどなど)や映像の透明度、瑞々しさは素晴らしいと思った。大衆向け娯楽純愛映画ではなく、その点にまずほっとし、監督がこの物語をどう解釈したかが理解できた気がした。あの時代を切り取って、そして生きていくこと、成長していくことを主眼にしているのではないだろうか。直子の誕生日の時の台詞と、最後の台詞を考えれば分かりやすい。18と19の間を行き来すればいいのに、という直子と、死者はずっと17、21のままで遠くへ行ってしまう、というワタナベは明らかに異なっている。誰もが自らの「ノルウェイの森」観を基準にするが、監督の解釈を受け入れる余地は十分にあるだろう。原作を読んで5年後に観ることをおすすめしたい映画だ。まぁそれにしてもセックスシーンは中途半端過ぎて話にならない。村上春樹の生々しさが表現されておらず、口だけで濡れるだの勃起だの言ったところで下品なだけで生々しくない。そこは大いに不満だった。 【Balrog】さん [映画館(邦画)] 6点(2010-12-19 17:52:45) (良:1票) |
1.原作未読。ただの官能映画にしか見えなかったというのが率直な感想。まぁ官能映画に分類するとそれはそれで物足りないんだけど。原作を読んでないので分からないんですが、恐らく登場人物の心理描写を画にできてない、もしくは原作から抜粋するシーンを間違えたか。時々??になるシーンがありました。きっと小説では著者の巧みな文章で上手く表現出来てて、スッと理解できるんでしょう。正直この映画だけを見ると小説「ノルウェイの森」はつまらない読み物なんだろうなと思ってしまいました。 【関白宣言】さん [映画館(邦画)] 2点(2010-12-15 00:35:35) (良:1票) |