6.《ネタバレ》 ミュージカルが苦手な私を「凄い!」と唸らせたミュージカル。まず冒頭、マンハッタンを上空から撮った映像に、従来のミュージカルのような夢物語ではないことを予感させる。『ロミオとジュリエット』という古典をベースに、アメリカの抱える移民問題を大胆に描く。従来の全編セットのミュージカルでは成し得なかった現実感、シリアス感が存在する。もちろんミュージカルの醍醐味である歌と音楽とダンスも素晴らしい。中でも圧巻は、決闘に向かうジェット団とシャーク団、そしてマリアを想うトニー、ベルナルドを心待ちにするアニタ、兄を案じながらもトニーを愛するマリアの五重奏。ひとりスタンディングオベーションを送りたいシーンである。そして私が”ミュージカルは苦手”というのを忘れる瞬間である。ラストはここからどう強引にハッピーエンドにもっていくのだろうと思ったら、もっていかなかった(そりゃ、そうだ)。ミュージカルの概念をぶっ壊しながらのこの存在感、この完成度。傑作でしょう。 【R&A】さん 8点(2004-04-15 12:32:31) (良:4票) |
5.《ネタバレ》 想像するにミュージカルの既成概念を打ち破った作品ではないだろうか。それまでのミュージカルといえば、お気軽に楽しく歌って踊って、ハッピーエンドの愛と夢と希望の物語で、シリアスなものは少なく、童話や空想物語に近いものだった。本作品は全編に溢れる若さと躍動感が特徴で、斬新な俯瞰カットやクローズアップや多カット編集により、汗の匂いが嗅げるほど役者に肉薄している。そして暴力抗争の末、少年ギャングの三人が亡くなるという悲劇。シリアス、暴力、ギャング、バッド・エンド、悲劇、これらはミュージカルにふさわしくない題材だ。「フレンチ・コネクション」「LAコンフィデンシャル」「ゴッドファーザー」「地獄の黙示録」等のミュージカルは想像しにくい。素材と形式が合わないからだ。一方で「アウトサイダー」「理由なき反抗」等はミュージカルにしてもおかしくない。理由は登場人物が未成年だから。未成年者はその存在自体があやふやでどこか危なげ、童話や空想物語の人物めいた所がある。青春物語にすれば例え暴力や悲劇を扱ってもミュージカルになる。それの嚆矢が本作品だろう。スタジオを出て町に飛び出したのも特筆すべきこと。しいて命名すればストリート・ミュージカルの誕生。埃にまみれた昼の街の薄汚なさと混雑ぶり、露に濡れた夜の街の不気味な暗闇、それらの中に入り込むことにより、真実味が増し、演技と悲劇に重みが出た。もう一つ言えば芸術性だろう。綻びひとつ見えない完璧なシンクロ・ダンス、オーケストレーションの凝った編曲と演奏力の高さ、楽曲の素晴らしさは云うまでもない。シリアス加減のバランスも抜群で、例えば刑事やキャンディ屋のじいさんが「けんかはやめて~」と歌い出していたら台無しになっていただろう。昔のミュージカルでファッションも題材も古めかしいのに、どこか斬新さを感じさせるのはこれらの為だろう。物語は民族差別、恵まれない環境、若さの暴発、敵味方に別れた恋人、憎悪の連鎖、復讐殺人と盛りだくさん。あんな小さなナイフじゃ死なない、何故救急車を呼ばないのか、死体の処理や葬式はどうした、兄を殺した相手とその日に寝るのか、遅れると何故待ち合わせ場所に電話をかけないのか等、ツッコミどころはある。喧嘩に明け暮れるギャング団はアホだが、主人公二人は違うので感情移入できる。その設定の上手さ。上階の窓から投げつけたられた瓶は世間の冷淡視の象徴だ。 【よしのぶ】さん [DVD(字幕)] 8点(2012-12-24 23:53:53) (良:1票) |
4.名作とか芸術作とか、そういう呼び方をするのは(個人的に)違和感がありまして。だってこれはバカ映画の範疇に入るでしょ?(ミュージカルは大抵バカ映画という話も?)。ただ~し。コレは、とにかく念の入ったバカ映画、見ごたえある、壮大なバカ映画です。いわば、登場人物がことごとく竹中直人・渡辺えり子ペア、とでも言いますかね、観ててとりあえずは唖然とします。さらに映画後半では「おいおい、歌ってる場合じゃないだろー」と言いたくなるシーン続出。一方乱闘シーンなんかは実に手際よくてホノボノとしています。でもいいんだナ。ちゃんと映画の世界に引き込んでくれますからね。バルコニーのシーン(に相当するシーン)なんかも、実に印象的に迫ってきます。音楽は、いいです。今更言う事もないか(笑)。別にわたしゃバーンスタインの指揮はそんなに好きじゃなくてCDも殆ど持ってない。まして純音楽作品の作曲家としては、本人は自作を生前よく演奏してたけど、どうだろう、果たして音楽史に残るかどうか? でも、本作の音楽は、ウマイ!こういうのは確かにウマイね。聴かせます。 【鱗歌】さん 8点(2004-04-11 02:34:33) (笑:1票) |
3.《ネタバレ》 作品としては音楽も踊りも好きですが、後半のマリアの行動は納得がいかないことだらけ。
彼女は最後に演説をぶちます。「あなた方の憎しみがこの結果を招いたのだ」と。
一理ありますが、止めることができない、止める必要もない喧嘩の仲裁に、中立じゃない Tony を行かせた Maria が悲劇を招いたとも思えます。 あえて仲裁するのならマイケル・ジャクソンに頼むべきだった。そうすれば皆ハッピーに踊ることが出来たのに(笑)。
それにどういう神経で、Maria は自分の兄を殺した Tony とベットをともにできるのでしょうか?
彼女は彼に警察への出頭を促すべきでした。前の晩に出あった恋人の方が、兄よりも大事なんだな。自分の妹にはこうはなって欲しくないと願います。
更に、警察が事情聴取に来たことで Tony との待ち合わせに遅れることを、恋人が殺されたばかりの Anita に頼むと言うのは余りに無神経... ただ何も言わずにちょっと遅れりゃいいだけのことです。完全に自分達のことしか考えてないのだ。
二人が出会った体育館のダンスシーンで、周りの風景が完全にぼやけて二人にだけピントがあっていた。丁度あんな感じで二人だけの世界を作り上げてしまったのだろう。 【マイケル】さん 8点(2004-03-12 15:26:28) (良:1票) |
2.とある日曜の夜、何気なく見ていたテレビで「N響アワー」が始まった。その日はバーンスタイン特集で、私はオーケストラメンバーが楽器片手に「マンボ、ウッ」と言っているのを目撃してしまった・・・。この映画の命はダンスだ。歌も音楽も確かに良いが、 あの躍動感溢れるダンスのシーンがあって、はじめて血が通う。 貧しさ極める生活の中にいる若者たちが、対立グループ相手に虚勢を張りながら、ジャンプし足を踏み鳴らす迫力あってこその「マンボ!」の掛け声なのだ。しかし主人公二人はちっともダンスに絡んでこないし、ストーリーも言わずと知れた「ロミオとジュリエット」の現代版で目新しいわけでは無いので、ひとつの作品としては点は辛くなる。しかし、それを補ってなお余りあるダンスのすごさ。CG技術の無かった時代の生身のエンターテイメントは一見の価値あり。 【のはら】さん [映画館(字幕)] 8点(2004-01-21 18:31:30) (良:1票) |
1. 2003年1月現在、ミュージカル映画は絶滅種と言ってもいい位に皆無。なので、絶滅寸前の60年代に敢えて復権を賭けたその意気込みに8点!因みにロバート・ワイズはミュージカル初体験だったため、実質的な現場指導は振り付けのジェローム・ロビンスに任せっ放しだったとか。その分、フィルム編集に手腕を発揮したのはワイズ本人だったりする。元・エディターだからねぇ。シェークスピアの引用については…「ロミオ&ジュリエット」なんかよりゃ遙かにセンス有ると思うけどな。 【へちょちょ】さん 8点(2003-01-02 06:29:39) (良:1票) |