6.山田洋次ワールド、というよりは彼は一つの理想、いやむしろ本来のあるべき姿を提示してくれているのだと思います。この作品では理想の”先生”と理想の”生徒”が出てきます。山田監督は、”学校”というものは、誠意を持って教えようとする”先生”がいて、心から学びたいと思う”生徒”がいれば成り立つものだ、と言っています。逆にどちらかが欠けると”学校”は成立しません。この作品の黒井先生とその生徒たちはまさにその”先生”と”生徒”であります。勉強しようと思って夜間の中学校に入学した生徒たち、そしてそんな彼らに精一杯の気持ちで答えようとする黒ちゃん。今の学校から失われつつある、教師と生徒の密接な信頼関係をまざまざと見せつけてくれました。この作品は、すべての日本人に見失いつつある学校の本来の姿を見詰め直そう、なぜ学ぶのかを再考しよう、という呼びかけを、皮肉にも社会では低レベルとレッテルを貼られている夜間中学の観点から、発してくれています。僕の中のベストワンです。 【まさやん】さん 10点(2001-07-10 15:15:19) (良:2票) |
《改行表示》 5.《ネタバレ》 「学校」といえば田中邦衛がオグリキャップを熱く語る印象しかなかったけど、 年とともに見方が変わる典型だろうか、BSでなんとなく観始めたら席を立てなかった。 午後の学校に西田敏行が出勤する風景から引き込まれるものがあった。 情景描写はその場の雰囲気で決めると監督は言うが、映像作家としてもはや単なる匠を超えた 巨匠の域なんだろうと思う。夜の病院の待合室から見える東北の雪とかも印象的だった。 そして内容もお涙頂戴的な印象だったのが、今見るともう落語の世界。 田中邦衛の役は悲劇の標本みたいな役だけど、演者が達者なだけに 滑稽さがにじみ出て笑いがうまれる。西田敏行の授業なんてもう高座でしょ。 人間くささゆえの人情味とぞっとするほどのシニカルな視線がある。 萩原聖人に「イノさんから競馬を取れば何が残るんだよ」と言わせたり そんな萩原聖人へ「話が合わない」と言わせる中江有里のセリフの凄さ。 字を書けることと同じように人は幸せになるのが当たり前という風潮の時代で 幸福について考えること。あの場面は蛇足だったと思う。 楽しいことも悲しいことも長くは続かないし日常は変化していくものだと思う。 その日常のヒトコマに幸せがあって、何気ない放課後の風景だとか、砂の城だとか、 郵便ポストの下で声をかけてもらうこと、オグリキャップのラストランを生で観戦、 答えはすでに出てたはず。 【michell】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2018-11-30 20:04:15) (良:1票) |
4.以前NHKで夜間中学の特集をやっていました。そこで夜間中学の先生が一人の生徒について語っていました。その生徒はもういいおじさんなんだけど読み書き計算ができるようになりたくて夜間中学を志望しました。でもはじめて行く時はとてもシラフでは無理で酒飲んで奥さんに引っ張られて来たそうです。その人は学校で学んだ宮沢賢治の「無報酬の報酬」という言葉に感銘を受け、学校の運動会で一位になるために何日も前から特訓し、徒競争で一着になったエピソードを作文にしていました。夜間中学の先生は「こんなに学ぶことに喜びを持っている人がどこにいますか」と言ってないてました。この生徒はまさにこの映画に出てくるような人間が実際にいるということをしめしています。夜間中学は何らかの事情で今まで勉強することができなかった人たちが自分の意思で学校に通い、本当に学びたいと思いながら勉強する人がほとんどです。この映画はそんな人たちを見事に描写していると思います。現在の日本は大学まで進学しておきながら学ぶ喜びを知っている人がとても少ないような気がします。多くの人がこの映画を見て学ぶことの喜びを知れば少しはいい世の中になるのではと思います。 【もん】さん [DVD(字幕)] 10点(2007-11-22 02:06:11) (良:1票) |
3.話は淡々としてるし、泣かせようとしまくりだし、同じ展開の繰り返しだし、最後への持っていきかたは強引だし、テーマみたいな伝えたいことは言葉で言っちゃってるし、最後はもろ青春映画みたいでくさすぎるんだけど・・・なんかいいんだよなぁ。こういう雰囲気って日本映画でしか出せないんだろうなぁ・・・ 【野次られLOW】さん 7点(2004-02-01 16:54:08) (良:1票) |
2.夜間中学を舞台にした感動の作品だと思う。人間模様が、よく描かれていたねこれは、現代の中学生に見て欲しいね。 【XXX】さん 8点(2003-06-04 15:23:05) (良:1票) |
1.亡き淀川さんは惜しい映画だという意味で「小学生の作文みたいな映画」と言われました。淀川さんは、山田監督の意図を尊重した上でこう言われたのでしょう。山田監督は、まさに「小学生の作文のような映画」を目指したのでしょう。原作にあたる「学校」というルポルタージュを読んだけど、様々な年齢層の生徒が書く字、文章は、まさに小学生並のレベル、でもそこに彼等の喜び、怒り、悲しみが凝縮されている。彼らがノートをベコベコにして懸命に書いた作文を映画にしたのが、この作品だと思います。贅肉をとことん削ぎ落とした脚本は骨組みだけみたいにシンプル。山田作品は、けっこう賛否がなかばするんですが、この映画ほど、それが極端な作品はないのでは?確かに意地悪に見ようと思えば、いくらでも突っ込めるんですよ。かなりひどい罵倒も読んだ事があります。でも、この映画は、それに対して何の言い訳もしない。今井正、山本薩夫などが撮る話もあったらしいけど、やはりこれ山田洋次監督でないと撮れない映画だと思います。確かにバランスのとれた傑作とは言えないかも知れないけど。「教育」というものがいまのままの問題を抱えてる限り、古臭いこの映画は、いつまでも古くて新しい映画として、常に賞賛と批判の中で生きていくんだろうなと思います。この映画を見て「わたしはこの映画に感動しなかった。だって、これは私たちの映画だから」と逆説的にこの映画への感動を語った登校拒否の女子生徒の言葉が一番胸を打ったコメントでした。 【ひろみつ】さん 8点(2003-04-11 00:06:27) (良:1票) |