《改行表示》 4.《ネタバレ》 「狼男?今更?」 という第一印象を持ち、その今更感たっぷりの作品に、ベニ・チオ・デルトロとアンソニー・ホプキンスの濃ゆ過ぎるキャスティングの意味と価値は何なのか?という疑問を持った。 そんな疑問符だらけの印象だったので、映画館で観るつもりはなかった。 しかし、所用で早起きした日曜日の午前中、ぽっかりと空いた時間に映画館に行くと、観たかったアカデミー賞絡みの作品はことごとく午後からの上映スケジュールとなっていて、唯一時間が合ったのが今作だった。 「まあ、これも巡り合わせか」と思い、諦めて鑑賞に至った。 (ただし、その反面「もしかすると……」という淡い期待が無かったわけではない) 映画は、予定調和に終始した。 薄暗いオールドイングランド、妖しく荒れ果てた大屋敷、尊大で謎を秘めた領主、満月の夜の惨劇、闇夜を疾走する怪物、主人公に訪れる悲劇…………。 ベニ・チオ・デルトロの疑心暗鬼な表情から、アンソニー・ホプキンスの溢れる異常性まで、すべてがいわゆる”お約束”の中で展開される。 そのベタベタな展開に対して冒頭は呆れる。しかし、次第にその展開の性質は、突き詰められた「王道」に対する美学へと転じていく。 用意されたストーリーに衝撃性はまったく無いと言っていい。ただ恐怖シーンでは約束通りに恐怖感が煽り立てられ、感情が揺さぶられる。 つまりは、観ている者の恐怖感や驚きまでもが、予定調和の中にしっかりと組み込まれているということだと思う。 「狼男」の映画として、「良い意味で裏切られた」なんて思う部分は一切無い。「まさに狼男の映画だ」と言うべき映画だ。 よくよく考えてみれば、「今更狼男?」と思う反面、実際はまともに「狼男映画」なんて観たことがないということに気づいた。 この映画は、「狼男」という大定番のモンスターの本質をしっかりと描き、“ゴシック・ホラー”を見事に蘇らせた意外な程に堅実な良作だと思う。 P.S.見所はやっぱり“変身”シーン。 単に毛深くなったり、爪や牙が伸びるといった安直なものではなく、「骨格」が生々しく転じていく様がインパクトがあって良い。 タダでさえ濃いデルトロやホプキンスがそうなるので、衝撃は殊更。 ストーリーに驚きがない分、逆に何度も観たくなる。そういう面白味に溢れた作品だ。 【鉄腕麗人】さん [映画館(字幕)] 8点(2010-04-26 23:55:26) (良:2票) |
3.《ネタバレ》 デル・トロ。実は彼が登場したとき「ああ、最初っから狼男なのね」と思ってしまった。それほど、この人には人間離れした雰囲気がある。狼男になってからの彼の方が内面の弱みを見せたりして、登場してきたときより人間らしく見えた。レクターさんは元々噛み付くことが大好きな人(笑)なので、怪しいと睨んでいたらビンゴでしたね。過去の狼男映画の主演なんて覚えていないけど、この二人はさすがに存在感がありました。だから尚更、起伏や捻りが少ない、というより感じられないストーリーが惜しい気がします。純粋な狼男映画を観たのは80年代初頭の「ハウリング」や「狼男アメリカン」以来だろうか。当時は狼男への変身シーンがリアルということで話題になっていた。その特殊メークを担当したリック・ベイカー氏は今作にもクレジットされているのだが、この狼男は変身後に全身が見えてしまうと、まるで着ぐるみ。狼男というより、クマさん男。あれに一瞬でも笑ってしまうと、緊迫感が30%くらいは削がれますね。 【アンドレ・タカシ】さん [映画館(字幕)] 5点(2010-05-03 19:00:03) (笑:1票) |
《改行表示》 2.《ネタバレ》 一言でいうともったいない映画。題材や雰囲気は良く、キャスティング、メイクアップ、音楽は一流を揃えているのに、上手く活かし切れていない。名前は耳にするメイクアップの達人リック・ベイカーによる変身シーンだけは評価できるが、あのシーンも完全に活かし切れているかといえば疑問も残る。一部はもちろんCGだろうが、CGではないメリットを活かしたいのに、CGっぽい仕上がりになっているような気がする。本物の手作業のレベルの高さをアピールして、昨今のCG映画とは違うということを示して、本作を何故今リメイクするのかという理由を浮き彫りにできないものか。 結局、スピードと音で誤魔化すという“逃げ”に打って出るしかなかったようだ。 ストーリーは盛り上がりに欠け、全体的に“深み”が欠ける点が問題だろうか。ホラー映画とはいえ、やはりキャラクターの内面が充実しないといけない。本作の展開ならば、『父と息子の関係』と『主人公とヒロインの関係』に重厚さを加えないと映画に“深み”が増さないだろう。 『父と息子の関係』については父親の歪んだ愛情のようなものが描かれてしかるべきではないか。母親を殺してしまった負い目、息子を殺したくない想い、自分のような存在になって欲しくないという気持ちとともに、自分のような存在になって欲しいという複雑な感情などを入れ込むことが可能だったはずだ。息子を愛していたのか、憎んでいたのかすら、自分にはよく分からなかった。 『主人公とヒロインの関係』については、この二人の関係がある程度深みが増すような仕上がりが望ましい。ラスト付近の展開もいったい何をしたかったのか不明すぎる。助けたいのか、襲われたいのか、何がしたかったのだろうか。ジプシー女に呪いについて聞きにいったが、あまり意味はなかったような気がするので、呪いを解く方法でも彼女から聞きだして、ストーリーを膨らましてもよかったのではないか。呪いを解こうとする想いと襲われるかもしれないという恐怖が入り混じった複雑な感情を込めて欲しかった。獣の中に潜んでいるはずの人間性を信じたいが、信じきれずに撃ち殺すものの、人間の感情が残っていた狼男は彼女を襲うつもりはなかったというようなベタな“悲劇”のような仕上がりでもよかったのではないか。『人間と獣との境界』のようなセリフが多用されていたが、そのようなテーマに沿った仕上がりにはなっていないだろう。 【六本木ソルジャー】さん [映画館(字幕)] 4点(2010-05-03 12:29:14) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 19世紀のイギリスが舞台という事で、何か古き英国の妖しさと美しさの雰囲気に頼りっきた感じにして、肝心の狼男はあくまでも主要キャラを動かす単なる『きっかけ』で地味なホラー風味の人間ドラマかと、勝手に思ってました。ベニチオ・デル・トロの新作という事で観に行ったのですが・・・思ったよりもアクション寄り、しかも人体破壊描写も容赦なく内臓ドバー、腕足ブシャー、顔面グシャー・・はい、なかなか楽しんでしまいました。ただ・・主役のローレンスや家族の描写は触れてはいますが、そこはあっさりとした感じです。映画の中で重要な役割と言えるヒロインのグエンはローレンスの殺された兄の婚約者ですが、ドラマが進むにつれ次第にローレンスに惹かれ最大の理解者になるという大筋の流れ以外は何も描かれてないと言っていいいキャラになっていて不満はあります・・でも、そういう人間ドラマのあっさり風味がアンソニー・ホプキンスやデル・トロと存在感ある脇役がガッシリ固めているので、アクション以外のドラマも深みが、それなりには感じて見られはしますが・・・クライマックス以降は惨劇がピークになります。それまでのキャラ描写を上手く見せ切れてないので悲劇としていまいち伝わって来ず、どこか淡々としていたのも不満でした。色々、書きましたが雰囲気だけのつまらない重い人間ドラマという訳ではなく、ホラー・アクションとして風通しを良くし狼男を凄惨に描いたのは好感が持てます。ラストの狼男同士の対決はもはや笑ってしまいましたが・・。一見、重苦しい雰囲気で敷居は高そうですがポップコーン映画として普通に楽しめる作品になっていると思います。 【まりん】さん [映画館(字幕)] 7点(2010-04-24 15:54:01) (良:1票) |