4.「全員悪人」と謳われているとおり本当に全員がワルで、またそれぞれが個性的に描かれていて面白かった。出演者がたけし以外は全員、北野武監督の映画に出演するのは初めてというのも異色。登場人物が次々殺されていく映画をというところから企画が始まったらしく、とくに後半は殺人のオンパレードで、普通なら目を背けたくなるようなシーンの連続なのになぜか安心して見ていられるから不思議。ヤクザを演じる俳優陣は國村準、石橋蓮司といった強面はもちろん、あまりこういう役をやる印象のない加瀬亮や三浦友和といった面々まで好演している。とくに三浦友和がなかなかいい。逆に山王会会長を演じた北村総一朗は確かにうまいけれども「踊る大捜査線」でのとぼけた署長役の印象が強すぎて(ほとんどあの役しか見たことがないのもあるが。)どんなに凄んでも笑えてしまう。たけしの最近の監督作を見るのは「座頭市」以来だったが、全体的に「座頭市」と同じく娯楽に徹している感じで見やすくなっているが、つい最近「その男、凶暴につき」や「3-4X10月」を見たばかりなので、それらと比べるとセリフの量が増えて見せ場が派手になり、初期の映画にあったどこか冷徹な雰囲気もあまり感じられなくなっているのは少々残念。「座頭市」や本作のような娯楽に徹した作風も面白いし、嫌いではないが、個人的には初期の監督作品のような独特の静けさの中に狂気を感じさせる映画のほうが映画監督としてのたけしらしさを感じられて好きだな。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 7点(2011-06-23 13:33:20) (良:3票) |
3.北野武監督作品の中では、『座頭市』と並ぶ完成度の高い娯楽作品。
現在の日本人監督の中で、単純に楽しめる作品を撮らせたら、最近の北野武監督に勝る者はいないのではないか、というくらい良くできている。 ストーリーの顛末よし、音楽よし、映像よし。 特に、ヤクザものを撮らせたら、間違いなく現在においてはナンバー1の監督だろう。
北野武が、ただ撮りたいものを撮っていた初期の頃と比べて、“職人監督”と呼ぶべきに相応しい、監督しての巧さを感じさせる。
ただし、それが良いか悪いか。 個人的には、少し残念だと感ずる。 初期の頃に感じた、心に深く突き刺さるものが感じられない。 何か、角がとれて丸くなった印象。
監督としての総合的技量は、年数を経るにつれ、格段にアップしていると感じるが、逆に初期作品の頃に感じられた、鋭利なナイフのような切れ味がなくなっている気がする。
だが、それは北野武の計算なのかもしれない。 何故なら、比較的最近でも、『TAKESHIS’』の様な、自分の撮りたいものを好き勝手に撮っただけの作品も、撮ってはいるから。
商業的な作品と、自分の取りたい好き勝手作品とを、器用に撮り分ける北野武。 それはそれで凄い。
でもできれば、娯楽性が低く世間一般の評判は低くとも、初期の頃の様な作品や、最近で言えば『TAKESHIS’』の様な自分勝手な作品を、もっと撮って欲しい。 【にじばぶ】さん [DVD(邦画)] 7点(2011-01-26 01:00:36) (良:2票) |
2.ヤクザなんてダサいし、すぐ死ぬし、馬鹿らしいというのがよくわかる映画。 なんか色んな派手な死に方が見れて楽しいです。SAW(ソウ)シリーズを観ている感じに似てる。 ちょっとした油断ですぐ殺されるのでこっちの方が生き残るのが難しい気がする。 また、バイオレンスの合間にたけしらしいギャグが散りばめられていて面白い。 【ヴレア】さん [DVD(邦画)] 7点(2017-09-09 21:19:32) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 ヤクザ映画的に『かっこいい』シーンとか『かっこいい』男達なんか一人も出てこないです。前半は何か妙な間も多く、妙なテンポ、しかもちょっとコメディチック・・後半から事態が加速し殺しまくりの展開になりますが、過剰な熱さもなく淡々としている所が逆に怖くて救いがないように思えました。役者陣は本当に見事でみんな適材適所でバッチリでした。北村総一郎の大ボスが特に恐ろしく、人の良さそうな笑みがゾッとするほどで彼が部屋に入ってズカズカ歩くだけで『恐ろしいことが起こる』的な雰囲気もあり素晴らしかったです。登場人物は全員、感情移入なんか出来ないキャラクターなので殺されても『ああっ殺られたね』と余韻もなく通り過ぎますが、北野監督演ずる大友に関しては別でした。最初はその他のヤクザと同じで感情移入も難しいです(でも演じているのがビートたけしなので全く他のキャラと同一線上に見るのは困難なのですが・・)。しかし終盤で彼が追い詰められ後輩の刑事に恥ずかしそうに出頭する瞬間にこのキャラだけ『人間くさい』一面が見えて初めて感情移入が出来ました。ですからラストで彼がメッタ刺しに殺される瞬間は他のキャラとまるで違って『悲しい』感じがしました。今までの北野ヤクザ映画の主人公にはない味わいがあり新鮮でした。ただそんなキャラもこの映画の構図から見たら、ただの『虫けら』で生き残った連中が彼が殺されたと知っても『あっそう』と切り捨てられる虚しさ。生き残った一番の悪党が悠然とビーチにたたずみます勝利者気分を満喫していますが、こいつらだっていつ背後から頭を撃たれるか分かったものではない世界に相変わらずいる訳ですから、その末路も容易に浮かび取れます。どうしようもないクズ世界に生きる連中をかっこ悪く淡々したタッチで見せられてイヤ~な気分になり、スッキリもしないのでそこの所とか好みがバッチリ割れそうだと思います。あと気になったのは中盤の至ると大使館のカジノのくだりがあります。あれは確かに面白い所もありますが前半の物語の流れとは分離されているように見えて、何か違和感は拭えなかったです。あそこは前半の話に直接、繋がってないと・・あのエピソードは正直、冗長でテンポをが明らかに損なってます。確実に面白い所もあって好きな映画なのですが『何かが足りない』というような違和感は拭えません。周りの高評価にはどうしても賛同できずです。 【まりん】さん [映画館(邦画)] 7点(2010-06-13 14:06:33) (良:1票) |