7.《ネタバレ》 長編映画にもかかわらず、2時間半があっという間。これも劇中の理論同様、時間の伸縮現象のひとつです。私もまた現実と夢の狭間を行き来したと考えます。優れた映画は機材など無くとも、ヴァーチャル・リアリティが体験できるのですね。非現実世界の構築は見事ですし、多重層で繰り広げられる時間差アクションは圧巻。見どころを挙げ出したらキリがありませんが、私が最も言及したいのはエンディングです。全ての出来事が一点に集約される象徴的な場面。『早く倒れろ!』何度も心の中で叫び、エンドクレジット開始と共に唸りました。「正しい終わり方」だから深い余韻に浸れたのだと思います。アイデア、脚本、美術、アクション、配役、そして人生の意味を問いかけるメッセージ性、どれも完璧で、注文をつける箇所が見当たりません。鑑賞後は頭の中で情報を整理しながら、自身の感情を反芻し、幾度となく楽しめるお得な映画でもあります。悔やまれるのは、この傑作を茶の間のTVで観てしまったこと。迂闊でした。映画館で鑑賞していたら感動2割増しだったでしょう。教訓。ノーラン作品は万難排して劇場へ足を運ぶべし。さて、最新作『テネット』で私はこの教訓を活かせるでしょうか? 【目隠シスト】さん [インターネット(吹替)] 10点(2020-09-10 18:54:31) (良:2票) |
6.《ネタバレ》 パンパンの期待で観に行ったのですが、その期待を完全に超えていました。知的で、そして燃える映画。私は完璧に満足しました。難解な映画と言われていますが、物語の骨子は大して難しくありません。ただし映画の雰囲気作りのため、小難しいセリフ回しや情報を提示するタイミングの操作によって観客をわざと混乱させる仕組みになっています。なかなかイヤらしい作りではあるのですが、これはキューブリックやリンチも用いている立派なストーリーテリングの技術だし、積極的に物語を読み解くことを要求された観客は、映画を理解する喜びを得ることができます。これは単純明快な娯楽作では得られない感覚であり、アート作品ならともかくSFアクションでこの感覚を得られたことは貴重な体験でした。また、監督は遊び心も失っていません。哲学的な作品ではありますが、007の大ファンだという監督は本作を燃えるアクション大作として撮っています。産業スパイが困難なミッションに挑む、そしてミッションはどんどん悪い方へと進んでいく、このミッションは成功するのか?高級なスーツを着込んだディカプリオが様になった構えで銃を撃つ姿はまんまジェームズ・ボンドであり(子供の名前もご丁寧に「ジェームズ」)、アフリカからNY(と思われる都市)、そして雪山へという舞台のバリエーションも007を思わせます。この監督のアクション演出は冴えに冴えていて、銃撃戦やカーチェイスは本家007を超えるほどの迫力とかっこよさ。そんな見ごたえ十分のアクションにSF的設定が突如割り込み、空間がビニョーンと歪む中での見たこともない格闘には大興奮なのでした。夢と現実では時間の流れが異なるという設定を活かしてタイムリミットサスペンスにしたこともアクションのスパイスになっており、制限時間が迫る中での戦いには本当にハラハラさせられました。そして素晴らしいのがラスト。詳しくは書きませんが、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのかの判断を観客に委ねた素晴らしいラストには鳥肌が立ちました。本作にはその他にも解釈の分かれる点があり、そもそも現実として描かれているパートが現実である保証もないわけで、ビルから飛び降りた奥さんの判断が正しい可能性だってある。観客に多様な判断を楽しせる余裕まで与えた本作は、後々にまで語り継がれる映画になるはずです。 【ザ・チャンバラ】さん [映画館(字幕)] 10点(2010-07-23 17:21:34) (良:2票) |
《改行表示》 5.《ネタバレ》 これは大好き。何がいいって、驚愕にして緻密なアイディアと、それを美しく視覚化した映像の素晴らしさ。音楽も良いし、キャスティングが100%はまった、その心地よさ。こうまでハマった!と感激なのは”L.Aコンフィデンシャル”以来。主演クラスからM・ケインやP・ポスルスウェイトに至るまで良い。 「夢」を扱ったものはファンタジーテイストで独り浸りな感性のものが多いように感じて、あまり合わないなあと思っていた。けれど本作はそれこそ夢中になった。理屈についていくのが精一杯で、148分阿呆ヅラで観賞したけれど、もうわくわくでいっぱい。無重力映像の摩訶不思議なこと、予期せぬピンチがいい具合に訪れて話を締める脚本の良さ、役者の好演。 「三階層」「潜在意識の武装化」「キックまでの時間」と初めて触れる概念に圧倒されつつ、仕事に集中するJ・G・レヴィットの手際の良さに見惚れ、T・ハーディの軽い伊達男っぷりにくらくらし、いつになくしくじるディカプリオには突っ込みを入れ、「謙さんがんばって!」と手に汗握って、と大変忙しくそして楽しい。 悩める大富豪の御曹司役のC・マーフィも良かったな。”他者から植え付けられた”偽自意識ではあるけれど、彼の場合これで良かったのだと感じる。一生父親への確執を抱えてうじうじすることにならず、自分の足でちゃんと前に進めそうだもの。依頼者の希望は叶うし、ターゲットも結果良い方向へ向かいそうだし、コブも家に帰れたしで、商売で言うところの「三方ヨシ」みたいでストーリーもすごく好き。私はあのコマは当然倒れると信じて疑ってません。 【tottoko】さん [DVD(字幕)] 10点(2016-12-16 17:04:49) (良:1票) |
《改行表示》 4.こんな映画思いつくのが凄い 何度見ても興奮する 【pillows】さん [DVD(字幕)] 10点(2014-04-05 03:45:08) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 クリストファー・ノーランすごいです。メメントでもすごいなあって思ったけど改めて思ったよ。誰もが何となく頭に思い浮かぶアイディアなんだけど,ここまで上手くまとめられないから誰もできないし,誰もしていないのだと思う。ノーランがこの映画でまとめて見せてくれるので「ああ,こんなの夢オチじゃん」「だいだいこんな感じのストーリーだよな」なんて思うけど,文章でまとめて,話の辻褄を一応合わせて,映像化できるっていう,この才能がすごい。2番煎じのような,どこかで聞いたこと見たことあるような設定だけど,よくよく考えてみると誰もしていない。少なくとも,私にはこの映画を作るの(脚本を書いて,映像化)は無理だわ。きっと途中で勝手に盛り上がって,自分にしか分からない映画になりそうだもの。そして,無理やり「最初っから全部夢でした」てオチをつけてしまいそう。自分に才能がないのは分かっているがノーランの光る才能がほんとうに素晴らしいです。もしかすると,「メメント」でも似たようなコメントを付けてるかもしれない・・・ 【蝉丸】さん [DVD(字幕)] 10点(2010-12-27 02:42:36) (良:1票) |
《改行表示》 2.ここまで凝られた設定、ストーリーなのに、説明が少ない。これぞノーラン映画。 人は物事に対して発見や解析をし喜びを感じる生き物。ノーランはこの人間の習性を良く分かってるんだろう。1から100まで説明して見せるのではなく、1から60まで見せて残りの40を見てる側に見つけさせたり、解釈させたり、または想像させて楽しませてくれる。ボーっと表面的な面白さを見てるだけじゃダメだ。集中し考えながら内面的な面白さを見ないと映画の本質は分からない。エンドロール、興奮覚めあらぬ状態の我々に彼は言う、「さぁ起きろ。現実がはじまるぞ」。そこに響き渡る「目覚めの合図」 【関白宣言】さん [映画館(字幕)] 10点(2010-09-23 02:14:53) (良:1票) |
《改行表示》 1.《ネタバレ》 面白かった。「メメント」テイスト全開で作られていて、ミステリ系映画が好きな身としてはたまらない。間の無重力戦闘とかもなかなかきれいで見ていて面白かったし。 ■単純なエンタメ(アクション・サスペンス)として見た場合、「夢の中の夢」「夢の階層構造において時間の経ち方を大幅にずらす」「夢の中だからご都合主義や派手すぎるアクションも大目に見れる」といった要素が大きく、アイデア勝ちだと思う。 ■話の構造としては同監督「メメント」に近い。「メメント」と「インセプション」の違いは、まず前者が純粋にミステリーとして構成されていたのに対し、後者はアクション・サスペンスとして一般受けしやすい構成になっている点。あと、前者が大枠の謎解きをラストにしてくれたのに、後者は謎解きしなかった点かな。特に後者は本作を解読する上で大きい。それと、メメントはストーリー追うだけでも頭が死んだのに対し、本作は一応おおよそ話は全部追えるように作られているのは観客にとっては良心的。 ■【以下激しくネタバレ】ラストのあまりにご都合主義的にすぎる展開と「監督はこの作品の脚本に10年かけた」という記事を読んで、ラストはフェイクで「すべてを描かなかった」という理解に変えた。 ラストの解釈で、希望的なハッピーエンドととる人が多いようだが、必ずしもそうではないと思う。とりあえず冒頭で、トーテムについてサイトーは「見ている」し「見たことがある、と発言している」し、「倒れたら現実、と自身が解説しているシーンがある」のだからトーテムについては相当怪しいというか、これ自体偽の記憶の可能性が十分ある。 あと、ラスト近くの電話してから1時間そこいらで罪が全部もみ消せる(し、それがパスポート・コントロールまで情報が行きつく)のかよという問題や、なぜ父親が迎えに来ているのかという問題もある。 他にも、モルの自殺がコブのいるビルではなくその向かいのビルから飛んでいる点、コブとサイトーがどうやって戻ってきたのかという点など、不審な点は多い。 そう考えると、ラストは希望的な「現実」という答えより、「夢」の方が正しそうな気がする。 【θ】さん [映画館(字幕)] 10点(2010-09-15 01:27:10) (良:1票) |