6.《ネタバレ》 すごい映画だ。原作が良いのか映画化が上手いのか。原作は未読だが賞も獲っているし、両方いいのだろう。いろんな意味で登場人物が皆こんなに残酷でエゴイスティックな映画は初めてだ。好き嫌いが分かれる映画かも。ただ、傑作であることは間違いない。最初は登場人物の行動が理解できないが、告白が進むにつれその理由が怖いくらいにクリアになっていく。その演出がうまい。一見モノクロといってもいいくらいの彩度の低さだが、これを通常の彩度にすると血の色が鮮烈過ぎて、登場人物の告白に対する集中がかけてしまうに違いない。だからこの色合いは正解だと思う。また、深刻な内容に一見合わなそうなBGMの選択が恐ろしくいい。あと個人的には木村佳乃の演技が良かった。 【MASS】さん [映画館(邦画)] 9点(2010-06-12 17:58:38) |
5.《ネタバレ》 全く笑えない状況なのに、優雅なBGM、美麗な映像が異様。正直、この演出はグロい。 気持ち悪い。今までに「下妻物語」「嫌われ松子の一生」「パコと魔法の絵本」とゴテゴテとしたポップカラーで演出力の高いインパクトのある映画を撮ってきた中島哲也監督、本作では演出センスはそのままに、しかし、楽しげな演出を180度ひっくり返して、完璧なまでの不快感を存分に与えてくれる。 この気持ちよいくらいの不快感(矛盾)は、パク・チャヌク監督の「オールド・ボーイ」等の復讐三部作に近いものがある。 個人的には、この映画で描かれているリアリティだとか、社会性だとかはこの際どうでもいい。人間ひとりひとりは、割といそうな感じではあるが、(悠子先生除く)展開は容赦なく、ありえなく豪快。 悲劇性、不快感は高いけれども、やはりこれは、ひねくれた一流エンターテイメント作品のように僕には見えた。余りにもぶち切れた展開と、異様な演出は、この世のものとは思えず魔界の住人を描いたもののように見えてしまって、僕には特に考えさせられたとか、心を動かされたなんて部分は正直全くなかった。 しかし、それでも傑作だと言いたいだけの力がこの映画にはあった。 こんな褒め方をしたくなった映画は初めてかも。 【すべから】さん [映画館(邦画)] 9点(2010-06-12 00:24:41) (良:2票) |
4.凄い映画だ。 下妻からパコまで、どれも大変気に入っていたが、全てを「どっか~ん」とぶっ飛ばすほど、この作品はいい! いままでが予行練習だったかのような、色、動き、話、演技。1シーンに入ってる情報量が多くて、途中、時計を見て1時間経ってないのにびっくり、これはつまらなくて長く感じたのではなく、これだけの時間でこれだけ表現してるのかという事に驚愕した。 教室で蠢く悪魔のようなガキ共、バカ熱血教師、子供を制御できないアホ親、そして教師森口。当然私の立ち位置は森口講師側に居る訳だし現代の子供達の現実をメディアでしか知らない私は少なからずこのような生き物であろうと思ってもいる。 R-15などと言わずに子供達に見てほしい、こんな風に思われていることを。実際高校生風の2,3人が数組観ていたが、皆、押し黙って映画館を後にしていた。 100分ちょっとでこの満足感、すばらしい! 【カーヴ】さん [映画館(邦画)] 9点(2010-06-09 11:53:48) |
3.《ネタバレ》 本屋大賞を受賞した原作は未読。本作について“語る”のは非常に難しい作品である。「とりあえず観てみろ」という言葉しか出てこない作品だ。 観る者によって感想はマチマチだろう。「人間の命の重さを説いたヒューマンドラマ」と捉えることもできる、「ガキたちに復讐する爽快なエンターテイメント作品」と捉えることもできる。解釈度が“自由”であり、観る人それぞれの心に何かを刻み付けた中島哲也監督の自在な手腕が発揮された傑作といえる。 「人間の命は脆くて軽いが非常に重いもの」「人を殺す際には、その人を愛する誰かがいることを考えてみろ」ということを教えるための森口先生による授業だったのではないかと感じたが、『なんてね』という言葉一つで引っくり返している。 結局「ガキたちと同類ではないか」とも感じてしまう一言だ。 確かに大人だろうが、子どもだろうが、人間である以上、変わりはないのかもしれない。クラスメートでも恋人でも母親でも誰かに自分を認めて欲しいという衝動、暇つぶしに誰かを傷つけたくなる衝動、復讐なんてしたくないけど復讐せざるを得ないという衝動、そういう短絡的で自己中心的な感情に支配され、人間は愚かな行動を走ってしまうものかもしれない。人間はバカで単純で弱くて脆いもの、悲しいけどそれが人間ということをも感じさせてくれる。人間というものの本質を感じさせてくれる点を評価したい。しかし、松たか子が泣くシーンを描くことで、罪の意識を感じ、人の心の痛みを知らないガキとは根本的に違うということだけは分かるようになっている。それでも溢れる感情を止めることはできないのだろう。 「パコと~」の際には、各キャラクターに感情移入できない点が気に入らなかった。本作も同様に感情移入することはできないが、感情移入できないことにより、本作には面白い効果を生んでいると思う。得たいの知れないという不気味な恐怖を感じるとともに、客観的な傍観者としてこの復讐劇をエンターテイメント感覚で楽しむことができる。中島監督が計算したかどうかは分からないが、非常に巧妙な仕掛けとなっている。 本作は問題作ではあるが、“人間の命の重さ”を真正面から捉えるよりも、本作のような切り口で語った方が反面教師的な役割を担えると思われる。R15指定作品だが、逆に子どもたちに見せてもよいのではないか。“何か”を感じ取ってくれることへの期待や希望はあるはずだ。 【六本木ソルジャー】さん [映画館(邦画)] 9点(2010-06-07 22:52:29) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 この原作を中島哲也氏が監督すると知った時は強い期待を抱いたけれど、「松子」や「パコ」で見せられた極彩色の世界がこの話にマッチするとは到底思えず不安も抱いた。観終わった後に思うことは、そんな不安は杞憂だったどころか、過去の記憶に無いほど小説の世界を損なわずに映像化されているということだ。色彩に関して云うと、すでにスクリーンに色があったことが思い出せない。心象はグレーの一色だけだ。森口先生(松たか子)の告白に語られる「少年Aと少年B」は、それに続く話の内容で特定の生徒を指していることが呆気なく明らかになる。この作品を象徴する非倫理的な違和感がざわめく教室を黙らせて行く。おだやか口調とは裏腹な内容を孕んだ森口の告白はエンディングに至るストーリーを完全に支配していて、作品を冷え切った印象でまとめ上げる。会話ではなく独白の連鎖で綴られる物語を絵的に飽きさせることもなく、至福の時間を提供してもらった。原作にも言えることだが、それぞれの登場人物が持つエピソードは、リアルかと云うとちょっと違う。例えば、アニメーションが人のピュアな感情を抽出するように、本作の中島監督の演出は人のネガティブな感情だけを選り分けて抽出し尖らせて見せる。それは肉体ではなく心を痛めつける残酷なショーを客席から傍観するエンターテイメントだ。これに見応えを感じることに罪悪と背徳的なカタルシスを覚える。剥き出しのエゴや悪意や復讐が人を引きつけて止まないエレメントであることも再認識させられる。観る側の心に危険な開放感を与える映画。問題作かもしれないが、傑作であることは疑う余地なし。 【アンドレ・タカシ】さん [映画館(邦画)] 9点(2010-06-07 22:43:57) (良:2票) |
1.《ネタバレ》 原作は未読ですので映画版のみの感想になります。まず冒頭からひたすら続く松たか子演ずる先生の人間味の感じられない語りの間に入る断片的回想エピソードの羅列にびっくり・・一歩間違えれば単調になりがちなのに絶妙な見せ方で興味を引かせたと思ったら行き成り、核心を突く事を言うので『うわっ何だこりゃ』と教室の生徒のように唖然とました。その後も各キャラクターの主観告白展開が続き静かに物語を盛り上がらせる所は上手いなぁと思いますし、中島監督お得意のCG取り入れた描写も上手く生かされ素直に感心しました。まぁ、描かれるキャラクターやエピソードがどうかと思うくらい極端に誇張されて描かれるので若干、『?』な部分も感じました(全く何も分かってない善意の押し付けウェルテル先生はもう完全に道化のコメディキャラで笑ってしまいましたが)。ただこの映画の世界観はリアルな今の現実と完全イコールという訳ではなく『独自に純化されたフィクション世界』が強調されているのであのキャラ描写やエピソードがその世界観に合って、さほど違和感なく見せられているのも上手いと思いました。単純に子供を殺された親の復讐物語という訳でも、現代社会の病理、少年法の甘さを訴えたような押し付けがましさもなく、そこでエモーショナルな展開に至るかと思えば簡単にバッサリ切捨て『はいっ後はそちら(観客)に任せます』という一面もあり結論が簡単に出せない所も好感持ちました。主役の松たか子の先生や他の主要キャラクターに感情移入が安易に出来ないので、どっか俯瞰した感じで淡々とこの出来事を見せられている感じもあり、『傍観者』気分にさせられてハッとする事もあります。気になった所は前半でエイズ患者の夫の血を生徒の牛乳に混ぜたとされますけど・・これって相手に傷害させる意図があったという事で普通、生徒が松たか子先生を通報して警察に事情聴取されるのでは?あとこれは、個人の好みなんですけど若干、何箇所か音楽の使い方がうるさいとは思いました、もう少し静寂感があった方が良かったような・・。言いたい部分もありますが大仰な問題提起の押し付けがましさなど感じず、重くならず、展開の巧みさに引き込まれ、絶望的に暗い話にも関わらず単純にエンターテイメントとして『面白い』作品に仕上がっているのは見事だと思いました。 【まりん】さん [映画館(邦画)] 9点(2010-06-06 22:41:50) (良:1票) |